番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」
原爆の日があり、終戦記念日がある8月は、日本にとって決して忘れてはならない特別な月ですよね。
今回は、第二次世界大戦、それも原爆に関する、全く違うタイプの作品を2本ご紹介しました。
まずは、“イギリス史上、最も意外なスパイ”の実話から生まれた衝撃作
『ジョーンの秘密』
世界がミレニアムに浮かれていた20年前の2000年イギリスでは驚愕のニュースが国内を駆け抜けました。
ソ連に核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”の正体が暴かれたのです。
しかもそのスパイは、隣に住んでいそうな80代のおばあちゃんだったのです。
この実話を元にしたジェニー・ルーニーのベストセラー小説が、ついに映画化されました。
夫に先立たれ、仕事も引退したジョーン・スタンリーは、イギリス郊外で、一人、穏やかに暮らしていました。
しかし、2000年5月、突然、秘密情報機関=MI5がジョーンの家にやってきて、彼女は逮捕されてしまいます。
50年以上も前に、“核開発・原爆の機密情報をソ連に流した”というスパイ容疑です。
先頃死亡した外務事務次官のミッチェル卿が遺した資料から、“彼とジョーンがソ連のスパイだった”という証拠がでてきたのです。
ジョーンは無罪を主張。
しかし、彼女の息子である弁護士の立会いの下捜査が進むと、次々と明かされるのは、ジョーンが半世紀以上も隠し通してきた驚くべき事実でした。
彼女は祖国を裏切ったのか、あるいは利用されただけなか、それとも…?
“ばあばスパイ”と呼ばれたジョーンの信念とは?
世界を揺るがすほどの秘密を何十年も隠し通していた一見普通の優しく温かなおばあちゃん、80代のジョーンを演じたのは、『恋に落ちたシェイクスピア』のエリザベス女王役でアカデミー賞・助演女優賞を受賞したジュディ・デンチ。
信念に裏付けされた芯の強さを秘めたジョーンがピッタリでした。
そして、ケンブリッジ大学で物理学を学び、核開発の機密任務についた若かりし頃のジョーンは、大ヒットシリーズ『キングスマン』で人気を博したソフィー・クックソンが演じました。
愛と倫理に揺れながらも自分の信念を確立していく様に、グイグイ引き込まれました。
自白を迫られる現在のジョーンと50年前の真実が交互に繰り返されるスリリングな謎解きに息をのみ、クライマックスのジョーンのスピーチには、今を生きる私たちにも深くつながっている物語なのだと気づかされます。
ジョーンが研究に加わっていた西側の核開発によって原爆が作られ、広島・長崎に投下されました。
その情報を彼女は東側のソ連に渡していたのです。
これは衝撃の事実ですが、その事実のうわべだけを見て批判することの恐ろしさ、愚かさをも感じます。
本当に正しいことはなんだったのか…答えはなかなか出ないかもしれませんが、それでも私たちはずっとずっと考え続けなければならないのです。
日本にとっても、大切な作品。
ジョーンが何を考え何をしたのか…この時期だからこそ、じっくりと考えてみませんか?
『ジョーンの秘密』
8月7日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式HP:red-joan.jp
配給:キノフィルムズ
© TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018
出演:ジュディ・デンチ、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ベン・マイルズ
監督:トレヴァー・ナン
原作:ジェニー・ルーニー著「Red Joan」
2018/英語/イギリス/101分/5.1ch/カラー/スコープ/原題:REDJOAN/PG12字幕翻訳:チオキ真理 配給: キノフィルムズ