• Facebook
  • Twitter
  • LINE

サンデー早起キネマ『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』

  • LINEで送る

番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」

人はなぜ生まれてきたのか…誰でも一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
では、今、その究極の問いを突き付けられたら、あなたは何と答えますか?
今回は、この夏、そんな大切なことを思い出させてくれる作品をご紹介しましょう。

『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』

原作は、ウィーン生まれの作家ローベルト・ゼーターラーのベストセラー小説「キオスク」(2012年発行)。

ヒトラー率いるナチ・ドイツがドイツ国内の権力を掌握した1930年代。
隣国のオーストリアにもその勢力は拡大していました。
主人公は、1937年、そんな激動のウィーンにやってきた17歳の青年フランツ。
彼は、自然豊かなアッター湖のほとりで、母と二人のびのびと暮らしていましたが、母の裕福な恋人が事故で亡くなり、ウィーンのタバコ店へ働きに出されたのです。

第一次大戦で片足を失った店主・気のいいオットーが営む店に住み込み、一生懸命働くフランツ。働くことの喜びや今まで田舎では味わったことのない感情に目覚めていきます。
そんな時、店にやってきたのが、精神科医として世界的に有名な“頭の医者”ジークムント・フロイト教授。彼は、自身の病気と世の中の情勢を憂いてふさぎ込んでいました。
ある日、フランツは街の遊園地で出会ったボヘミア出身の女性アネシュカに一目惚れします。

フランツはフロイト教授に恋の相談をし、教授は若いフランツと過ごすことで明るさを取り戻し、いつしか二人の間には友情が芽生えていました。
しかし、1938年、オーストリアがドイツに併合され、抗議の自殺や相次ぐ密告など、戦争に向かって周りが騒がしくなっていきます。
やがて、オットーも隣家の密告により、ナチスの親衛隊に逮捕されてしまいました。

タバコ店を一人で守りながら、行方をくらましたアネシュカを探すフランツ。
やっと見つけたものの彼女は……
時を同じくして、フロイト教授もイギリスへの亡命を決意。
教授を見送ったフランツは、一世一大のある決心をするのです!

この作品の登場人物のうち唯一実在するジークムント・フロイト教授を演じたのは、『ベルリン・天使の詩』や『ヒトラー~最期の12日間』の名優ブルーノ・ガンツ。
フランツの心の師として一言一言に深みを持たせた素晴らしい演技は、フロイトの書籍を読み研究を重ねたからこそ。
残念ながら、遺作となってしまいました。

純朴で夢見がち、好奇心に満ちた青年、主役のフランツを演じたのは、ジーモン・モルツェ。
田舎から都会に降り立ち、世の中のことも人間関係も恋も…今まで想像もしなかったことを体験しグングン吸収していくフランツ。だんだん変わっていく表情が素晴らしかったです。

本当に呆然とするやりきれない悲しい時代。
気づかないうちに、あれよあれよと戦争に突入する流れに飲み込まれていく市井の人々の様子が手に取るようにわかります。
それは、“日常の中に大きな悲しみにつながる危険な芽生えがある”ということを現代の私たちに教えてくれているのです。
繰り返してはならない歴史です。

大きな時代の流れの中で、一人の青年の友情と初恋と成長を描いたこの作品。シリアスながらもどこか軽やかな情緒が残ります。

『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』

7月24日(金・祝)Bunkamuraル・シネマほか全国公開

公式サイト:http://17wien.jp/

監督:ニコラウス・ライトナー 脚本:クラウス・リヒター、ニコラウス・ライトナー
原作:ローベルト・ゼーターラー(「キオスク」2017年東宣出版 酒寄進一訳)
出演:ジーモン・モルツェ、ブルーノ・ガンツ、ヨハネス・クリシュ、エマ・ドログノヴァ
オーストリア、ドイツ/2018/113分/R15+ 原題:Der Trafikant 日本語字幕:吉川美奈子
Ⓒ 2018 epo-film, Glory Film
提供・配給:キノフィルムズ 配給協力:REGENTS

ニッポン放送の番組一覧

他の番組を見る >