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サンデー早起キネマ『バルーン 奇蹟の脱出飛行』

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番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」

こちらも「事実は小説より奇なり」な作品。
ドイツの東西冷戦時代のお話です。

旧東ドイツでは、大勢の市民が、川を泳いで渡ったり地下トンネルを掘るなど、様々な方法で西側への逃亡を試みていました。しかし、国境を越えようとした人々は、国境警備隊に容赦無く射殺されました。

そんな中、ハリウッドのアドベンチャー映画さながらの驚くべき脱出劇があったのです。
なんと、自家製の熱気球で空を飛び、北風に揺られて西ドイツに到着!
当時のメディアは、“東ドイツからの最も華々しい亡命”と報じました。
その顛末を描いたのがこの作品、そのものズバリ!

『バルーン 奇蹟の脱出飛行』

舞台は1979年の夏、東ドイツ・テューリンゲン州ペスネック。
東西ドイツ国境近くの街です。
東ドイツでの抑圧された日常を逃れ、自由な未来を夢見ていた電気技師ペーターは、ある夜、家族と共に手作りの気球に乗って西ドイツを目指します。 
しかし、国境までわずか数百メートルの地点で不時着。
気球の残骸が発見され、秘密警察・国家保安省シュタージが捜査に乗り出します。
辛くも逃げ切りますが、ペーターは、準備に2年を費やした計画の失敗に落胆。
しかし、妻と2人の息子に背中を押され、親友ギュンターの家族をも巻き込み、新しい気球で脱出作戦に挑戦することになります。

ギュンターの兵役が間近に迫っているため、タイムリミットはわずか6週間。
2つの家族は一丸となって不眠不休の気球作りに没頭しますが、国家の威信をかけて捜査を指揮するシュタージのザイデル中佐の包囲網が、すぐそこまで迫っていたのです…。

とにかく恐ろしかったのが、執拗に追いかけてくるこのザイデル中佐。
演じたのは、国際的な名優トーマス・クレッチマン。
実は彼自身も東ドイツから亡命しているのです。
「自分の立場を利用して、他の人間を恥知らずにも虐げる人間と、私はいつも衝突してきた」と述べています。
それだけにリアリティが桁違い!

歴史的な出来事なので、結果はわかってはいるのですが、次々と襲ってくる危機に、思わず、「わっ!」「ひーっ!」っと小さい声がでてしまいます。
最初から最後の最後まで、ドキドキハラハラ。
自分もペーターやギュンターの家族の一員になったようで、見終わったあとはグッタリしました。

亡命に成功した熱気球の大きさは、高さ32m、使用した布は1,245平方メートル。
赤・青・黄色・緑・オレンジとカラフルな布を、命がけで一心不乱に縫い上げた気球。バーナーの炎でそれはそれは美しく夜空に浮かび、その姿が逆にとても切なかったです。
飛行時間は28分、飛行距離は18キロメートルでした。

東西ドイツが統一されて今年で30周年。
今も別の国で同じような思いをしている人たちがいます。
空に壁はつくれませんが、地上の壁も人々の心の壁も取り払われる日は、いつ来るのでしょうか?

『バルーン 奇蹟の脱出飛行』

7月10日、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開

配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH

出演:フリードリヒ・ミュッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デヴィッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、 トーマス・クレッチマン
監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
脚本:キット・ホプキンス、ティロ・レーシャイゼン、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
原題:BALLOON/2018 年/ドイツ/ドイツ語/125 分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:吉川美奈子

 

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