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サンデー早起キネマ『ワイルド・ローズ』

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番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」

どんな状況でも夢を諦めず、頑張っている人をみるとつい応援したくなりますよね。
明確な夢があることが羨ましく思えます。
今回ご紹介するのは、夢と現実の狭間でもがく女性の魂の物語
『ワイルド・ローズ』

スター発掘番組を見ていた脚本家のニコール・テイラーが一人の女性シンガーに心を奪われ、彼女をモデルに作られました。

舞台はスコットランドのグラスゴー。
主人公は23歳のローズ・リン・ハーラン。
心の奥に響く歌声と圧倒的なカリスマ性で、地元のクラブで大人気のカントリーミュージックのシンガーです。
彼女の夢は、アメリカのミュージックシティ・ナッシュビルでスター歌手になること。
しかし、彼女は10歳にもならない幼い娘と息子を抱えたシングルマザーで、さらには、軽犯罪で刑務所から出所したばかりです。
若さと才能のピークを迎え、ハンディキャップも抱えるローズは焦っています。
自分の夢を追い求めるあまり、つい自分勝手な行動に走り、母親のマリオンや幼い子供たちを傷つけてしまうのです。本当は愛しているのに…
子供たちのために夢を諦めるべきなのか?
子供たちとは別の人生を歩んででも、神が与えてくれた才能の花を咲かせるべきなのか?
ローズが出した答えとは?
彼女は自分の居場所を見つけることができるのでしょうか?

ローズを演じたのは、映画「ジュディ 虹の彼方に」の好演が光ったアイルランド生まれのジェシー・バックリー。
今回は、すべての曲を自分で歌いました。なんと素晴らしい歌声!
彼女もオーディション番組で頭角を現し、女優になる前からシンガーソングライターとして活躍していました。
最後のシーンはローズそのもので、鳥肌が立ち、涙が流れました。
この作品の一番の魅力は、魂がこもった歌。
物語をけん引する劇中歌が最高にかっこいいのです。

そして、ローズの変化も見どころです。
ローズは、自分の歌は特別だと思っているし、けんかっ早くて、すぐムキになる、お酒やたばこ、楽しいことが大好き…子供みたいなところがあります。
そして自分の夢が叶わないことを、周りのせいにする…表面では自信満々なのに、心の中には不安が広がっているからなんでしょうね。
そんな不器用な生き方しかできないローズが、家族と真剣に向き合うようになれてから、だんだんと変わっていくのです。
最初はローズの我儘さが気になりましたが、自分らしい方法で懸命に夢をかなえようとする姿をみているうちに、いつの間にか心の中で応援し、彼女が大好きになっていました。

ローズの気持ち、子供たちの気持ち、そしてローズのお母さんの気持ち…それぞれの気持ちがわかるだけに本当に切なくなります。
お互い大切で大好きなのにすれ違ってしまうのはなぜなのでしょうか?
それぞれが自分の気持ちばかりを押し付けてしまうからなのでしょうか?
それでもこの作品を観て、「人生ってこういうものなのだと、ふとわかる瞬間があるのかもしれない」と思いました。ちゃんと周りが見えて、自分の立ち位置がわかる時が…
女性や親であることと夢やアイデンティティ…現代社会に溢れるこの対立の答えを見つけるための旅や道筋は、きっとあなたをも導いてくれることでしょう。

『ワイルド・ローズ』

6
月26日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

◆公式サイト:https://cinerack.jp/wildrose/

監督:トム・ハーパー 
脚本:ニコール・テイラー
出演:ジェシー・バックリー、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー
2018/カラー/5.1ch/イギリス/スコープ/102分/原題:WILD ROSE/PG-12  字幕翻訳:中沢志乃
配給:ショウゲート
© Three Chords Production Ltd/The British Film Institute 2018

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