2月5日(日)の放送では、経済的困難を抱えた子供達に、学習支援や居場所の支援を行う
認定NPO法人Learning for All 代表、李炯植さんに子供の頃のお話を伺いました。
自見 李さんは兵庫県の尼崎のご出身。
李 両親は共働きで、妹と弟がいて、
そして障がいのある祖母。
私がご飯をちょこちょこ作ったりしていました。
10歳くらいまで市営住宅、いわゆる団地の4階で暮らしていました。
祖母は階段の登り降りが大変で、
私がお尻を押して階段を登っていました。
自見 団地はエレベーターがないですものね。
李 家の近所は貧困家庭が多く、ホームレスの方もたくさんいらっしゃいました。
放置自動車がむちゃくちゃ捨てられていました。
でも、近所のたこ焼き屋さんにみんなで集まったり、
公園で遊んだり、友達の家に遊びに行ったり、居場所はありました。
自見 通っていた小学校はどんな学校だったんですか?
李 クラスの半分ぐらいがひとり親の世帯でした。
生活困窮の世帯の子も多かったです。
結局、大学に進学したのは40人中、3人でした。
その一方で、閑静な一軒家の子も同じ学区に入っていました。
自見 李さんは小学6年生の時の担任の勧めで「私立中学」に進学されたそうですね。
李 6年生の10月ぐらいに「あなたは公立ではなく私立に行った方がいい」と
言われました。「あなたは東大に行けるIQがあるから勉強しなさい」と。
そして母親に電話してくれて、そこから家庭教師がつきました。
自見 高校1年生の時、その先生と再会されたそうですね。
李 ちょうど高校1年生の終わりごろに同窓会がありました。
妊娠している友達とか、高校を喧嘩して辞めてしまった友達もいました。
先生は「あなたはもっと勉強が出来る環境に行った方がいい」と、
3日後にある、厳しめな進学塾の入塾試験に勝手に申し込んだんです。
一言「申し込んどいたから」と。
それで堪忍して高校2年生から塾に行くことにしました。
自見 その先生とは今でも交流、あるんですか?
李 あります!
自見 この番組では、子供の頃、影響を受けた1冊の本について伺っています。
影響を受けた1冊、教えてください。
李 なかなか本に出合うタイミングがなかったのですが、
東京大学に進学して19歳の時に出会ったモンテーニュの『エセー』です。
フランスの哲学者の本なんですけど、何が正しいのか、
問いを重ねていく本です。
東京大学に入って様々な家庭環境の人を見て
どうやって生きていくことが正しいのか、
社会はどうなっていけばいいのか、
問いを重ねていた時期に、この本に出会いました。
様々な学問領域を知るきっかけになった一冊です。