8月1日(日)の放送では比較認知発達科学の明和政子教授に「前頭前野」について伺いました。
淵沢 前回、人の脳の発達について大人の脳になるまで25年かかるというお話でした。
その時に「前頭前野」が、一番進歩がゆっくりというお話でした。
「前頭前野」の成長は、幼少期に関係あるそうですね?
明和 動物実験でも、人を対象にした研究でも明らかになっているんですが、
幼少期に不適切な環境、例えば虐待などの環境で育つと、
脳の発達が異様に早くなるんです。
つまり思春期の訪れが早くなるんです。
自見 確かに、困難を抱えているお子さんと話すと、
よくしゃべりますし、お母さんのような対応をするお子さんって
いるんですよね。それと似ていますよね。
明和 そもそも人の脳は大人になるまでに25年かかります。
25年の間「前頭前野」の役割を果たすのは親を中心とする他者なんです。
つまり感情爆発が起こった時に、例えば抱きしめてもらうとか、
肩を抱いてもらう、ハグしてもらう。
こういったことで、他人のカラダを前頭前野の代わりとして使うことによって
感情を収めていくのが、私たちのカラダの仕組みなんです。
虐待などを受けているお子さんがどんな生存戦略をとるかというと、
自分の脳を過剰に早く発達させます。
つまり25年かけるのではなく、
早く成熟させることによって、自分のカラダを保とうとしていく。
そういったことが起きるのです。
自見 ハグや前頭前野のかわりをしているボディータッチの役割の意味など、
いまの日本社会では認識されていないですよね。
明和 特にコロナ禍ではオンラインでのコミュニケーションが主流になってきています。
この流れはコロナが収束しても変わらない、むしろ進んでいくと思います。
大人にとっては便利です。
でも子供は環境の影響を受けて脳を発達させていく存在だと考えたら
やはり幼少期にはカラダの接触を他者と繋いでいくということを
もっと大事にしないといけないと思います。