<もみじの家>
自見)「国立成育医療研究センターでは、
新しい事業をはじめられていますね。
どういった取り組みでしょうか?」
五十嵐「昨年の4月から子どもと家族に必要な
短期滞在ケア施設である“もみじの家”を開始しました。
これは在宅医療を受けている重い病気を
持つ患者さんを数日間お預かりし、御自宅で行っている医療的
ケアを行うだけでなく、患者さんに豊かな遊びや学びを提供し
子どもと御家族が安心して過ごせる「家」を目指して活動して
います。日中だけお預かりするという施設はありますが、
数日間となると非常に少なくて、東日本では、この「もみじの
家」だけです。大変好評で、夏などはお断りせざる得ない状況
なっております。なんとか拡大したいんですが、経済的な問題
がネックになっていまして思ったようにはいかないというの
が、現状です」
自見)「五十嵐先生が理念を掲げて下さっておりますけど、
こういった施設で、親子ともに健やかに育つと言う事が、
私たちの目指したいところですね」
<IRUD-P事業>
自見)「成育医療研究センターでは“難病克服のプロジェクト”も
五十嵐先生が主導されていると、伺いました。
どのようなプロジェクトなんですか?」
五十嵐「現在多くの先進諸国では国をあげて
遺伝性疾患の原因究明のための体制を整備しています。
我が国でも、日本医療研究開発機構が難治性疾患実用化研究
事業の一つとして、未診断疾患イニシアチブ事業(IRUD) を
開始しました。その子供版がIRUD-Pです。IRUD-P事業は、
国立成育医療研究センターと慶應義塾大学が拠点となって、
原因不明の遺伝子の異常によると推定される患者さんを対象
に、3年前から開始されました。
患者さんの詳しい病歴と患者さんと御家族の遺伝子を集め、
次世代シークエンサーを用いて原因遺伝子を解明しようと
する研究が行われ、成果が出始めています。」
自見)「これまでに、どんな疾患の遺伝を解明されたのでしょうか?」
五十嵐「これまでに原因不明の小児の遺伝性疾患の797家系を
解析しました。その結果、最近数年間に原因遺伝子が
明らかにされた遺伝子異常を中心に、
256家系に原因となる遺伝子検出しました。
臨床的には診断がつかなかった患者さんの32%が、
この研究で診断がついたことになります。
さらに、これまで知られていなかった新たな原因遺伝子を
12家系に同定しました。つまり、これまで原因が不明であった
12種類の病気の原因が明らかになりました」
自見)「これだけ短期間で、これだけの原因遺伝子が解るというのは
世界的にも例がないかと思います。また患者さんだけの遺伝子
の検査だけではなく、親御さんを含めた、
ご家族の遺伝子も同意を頂いて研究している
というところも、非常に意義が深いところだと思います」