• Facebook
  • Twitter
  • LINE

スペシャル対談 国立成育医療研究センター理事長 五十嵐隆先生②

  • LINEで送る

<バイオ サイコ ソーシャルとは?>
自見)「日本の小児科医は救急対応を含めて、
    世界トップクラスと言われていますが、
    その反面、いくつかの課題もあると言われています。
    そのひとつが“バイオ サイコ ソーシャル”。
    五十嵐先生は、最近、講演でも触れられていますが
    どういったものでしょうか?」

五十嵐「日本の小児科医は病気に対しては
    一生懸命に対応してきました。
    しかしながら、現実には現在の多くの子どもが心理(psyco)や
    社会的(social)な問題を抱えて困っています。
    最近、日本小児科学会が行ったアンケートによると、
    小児科医が思春期の子どもに医療的対応が必要だった
    心理社会的課題は不登校、肥満、発達障害、月経異常、虐待、
    性感染・避妊・中絶などの性関連課題の順に多いということが
    わかりました。
    また親子の間で話し合う思春期に関連する課題は、
    二次性徴、喫煙・飲酒・薬物などの依存、出産、育児、
    性関連課題の順に多かったことが報告されています。

    歴史的に見ても、
    わが国の小児科医はこれまで、子どもを心理・社会的に把握し
    支援することを十分にはしてきませんでした。
    日本では、乳幼児健診や学校検診がすべての地域で実施され、
    子どもの健康管理に大きな貢献をしてきました。
    しかし欧米に比べると乳幼児期の健診回数は少なく、
    学校検診では一人あたりに使われる時間が
    極めて短い状況です。
    心理面や社会性の観点から子どもを捉え、
    支援してゆく仕組みが、
    日本ではとても弱いことが大きな問題と考えます」

<なかなか減少しない10代の自殺>
自見)「小児科医は、子供をまるごと診る課なんですね。
    その子が成長していく、発達、発育の過程も診るという
    五十嵐先生ならではのご指摘だと思います。
    そういった心理面や社会面の観点から子供を
    とられていくということでは、
    10代の自殺がなかなか減少しないと言う事が
    課題としてあります。そこはいかがお考えですか?」

五十嵐「2001年~2014年にかけて、
    “第一次、健やか親子21国民運動計画”が実施されました。
    その結果、十代の自殺死亡率が
    悪化していることが明らかになりました。
    10代の子どもにとって、生活習慣、親子関係、学校生活など
    の問題を相談する仕組みができていないことが希薄です。
    家族、先生、スクールカウンセラーなどに、
    悩みを相談できないときに、
    簡単に相談できる仕組みがあると良いと思います。
    アメリカでは3歳から21歳までの子どもは、
    かかりつけ医のところで年1回の個別健康相談を受けることが
    義務になっています。受けないと、学校に通学できません。
    この様な場があると、子どもにとって、
    小さな頃からのかかりつけ医である小児科医に
    自分の悩みを相談する気になることも予想されます」

ニッポン放送の番組一覧

他の番組を見る >