「サンデー早起キネマ」でご紹介した作品をブログでも味わって頂きます。
今週ご紹介したのは、中国から届いた、映像と音楽が美しく、懐かしく切ない愛の物語
『チィファの手紙』
中国の作品ですが、原作・脚本・監督は、あの岩井俊二さんです。
松たか子さん、広瀬すずさん、福山雅治さんなどを迎えて、今年1月に公開された『ラストレター』の中国版。
日本版のセルフリメイクかと思いきや、実は中国版のこちらの方が先に作られたのです。
ベースは同じ話ですが、ローカライズ、その国に合わせて作った結果、これが功を奏して、全く味わいの違う素敵な作品が出来上がりました。
突然死んでしまった姉チィナン。
その死を伝えようと姉の代わりに中学の同窓会に出席した妹チィファでしたが、みんなに姉と間違えられてしまい、言えずじまい。
当時憧れていた先輩イン・チャンにも会えたチィファは、姉のふりをして彼に手紙を送ります。
実はイン・チャンは、中学生当時、美人で頭もいい姉に恋心を抱いていたのです。
イン・チャンと姉のふりをしたチィファの文通は、当時の初恋の思い出を浮かび上がらせ、亡くなった姉チィナンと妹チィファのそれぞれの娘たちをも巻き込んでいくのです。
中学時代の姉と妹、そして姉の同級生イン・チャン。
すっかり大人になった今と当時が行ったり来たり…。
さらには、あの頃の二人と同じ年ごろの娘たち(中学時代の二人が演じています。一人二役が二人^^)…と、2世代に渡っての物語は、壮大でロマンチック。
亡くなった姉を巡って、それぞれが中学時代からずっと心の奥にあった思いが溢れ出ます。
自分が中学生だった頃のことを思い出しました。
あの頃は、みんな平等で、無限の可能性を前にみんな輝いていました。
でも、いつの間にかあの頃の気持ちをどこかに置いてきてしまったんですよね。
とても悲しいことですが、チィナンの死を通して、過去と向き合うことができたチィファとイン・チャン。
若さ真っ只中、一生懸命生きている娘たちにも、前に進むための大きな一歩となりました。
中学時代を軸に展開される物語のノスタルジーが、中国という国にとても似合っていると思いました。
チィナンやチィファの中学時代1988年は、日本の1988年とは全く違います。
地方にはスーパーマーケットもありませんし、車もそんなに走っていませんでした。
過去と現在の状況が大きく違うので、映像にも時代の隔たりが現れ、それが情緒につながるんですよね。
岩井監督が徹底したローカライズで作り上げた中国映画。
中国で有名なトーク番組で司会者が岩井監督にこういったそうです。
「あなたが外国人で初めて“ちゃんと中国映画を撮ることに成功した映画監督”ですね」と。
嘘から始まる手紙が連れてきた懐かしく切ない愛の物語は、あなたを“あの頃”に連れ戻してくれることでしょう。
『チィファの⼿紙』
9/11(⾦) 新宿バルト9他全国ロードショー
公式サイト:https://last-letter-c.com/about.php
原作・脚本・監督 岩井俊⼆
プロデュース ピーター・チャン 岩井俊⼆ ⾳楽 岩井俊⼆ ikire
出演 ジョウ・シュン チン・ハオ
ドゥー・ジアン チャン・ツィフォン ダン・アンシー
タン・ジュオ フー・ゴー
2018年/中国/16:9/113分/原題︓「你好、之華」 配給︓クロックワークス
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