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サンデー早起キネマ『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

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番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂くサンデー早起キネマ。
今週から番組のコーナー名も「サンデー早起キネマ」になりました。
よろしくお願い致します。

8/15は終戦記念日でしたね。
戦後75年を迎え、全く戦争を知らない世代が増えて、絶対に忘れてはならない出来事を伝えなければならない大切さを改めて感じたのではないでしょうか?

今週1本目にご紹介する作品の舞台は、第二次世界大戦より少し前の1933年のソビエト連邦です。
スターリン政権下で起こった衝撃の実話

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

主人公は、若くして、元イギリス首相ロイド・ジョージの外交顧問になり、アドルフ・ヒトラーに直接取材をしたこともあるガレス・ジョーンズ。
彼には是が非でも解き明かしたい疑問がありました。
世界恐慌の嵐が吹き荒れる中、なぜソ連だけが経済的に繁栄しているのか?
莫大な国家予算の資金源はどこにあるのか?
予算削減のため外交顧問をクビになったジョーンズは、その謎を解くため、フリーランスの記者としてモスクワに行きます。
彼が頼ったのは、ニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長ウォルター・デュランティ。

しかし、外国人記者の取材活動はソ連当局に厳しく制限・監視され、思うようにいきません。
しかも頼みの綱のウォルターは、“スターリンの政策を称える記事”で、ピューリッツァー賞まで受賞していました。
さらには、なにか特ダネを掴んだらしい友人の記者が不可解な死を遂げ、疑念を募らせたジョーンズは、全ての謎の答えがウクライナにあることを知り、当局の監視をすり抜けて汽車に飛び乗ります。
やがて凍てつくウクライナの地に降り立ったジョーンズが目の当たりにしたのは、これ以上はない極度の飢えに苦しむ民衆の姿だったのです…。
ジョーンズは、“誰も報道しない、報道できない、この事実”と、どう向き合っていくのでしょうか?

1932~33年の大飢饉で亡くなったウクライナ人は300万人ともいわれ、ウクライナ語で「飢餓による殺害」という意味の“ホロドモール”と呼ばれています。
ソ連はその事実をひた隠しにし、ガレス・ジョーンズが取材したことで世の中に知れ渡ったのです。
雪に閉ざされた大地で起きていることは直視できない、はっきり言って衝撃的な映像です。
子供たちがガレス・ジョーンズを取り囲んで歌う印象的な曲があるのですが、その歌が凄惨な状況のすべてを物語っています。

この大飢饉は、のちの調査で人為的に引き起こされたことがわかっています。
その事実を隠し通そうとしていたことも。
そして、真実を語るためにはどれだけの勇気が必要か…私たちは目の当たりにします。

監督は、『月と太陽に背いて』『敬愛なるベートヴェン』『ソハの地下水道』など、ポーランドを代表するアグニェシュカ・ホランド。
「この作品では、マスコミの腐敗、政府への権力の集中、人々の無関心さを描いている。この3つが合わさったら非常に恐ろしい。今まさに私たちはそういう状況に陥っていることを知らしめたかった」と述べています。

過去に学ぶことを忘れて同じ過ちを繰り返しがちな私たち…記念日や本、そしてこのような映画などで、事あるごとに学びなおさなければならないと改めて肝に銘じました。

若きイギリス人記者が命懸けで告発しようとした謎めく大国ソ連の“偽りの繁栄”の驚くべき真実とは?
あなたの目で確かめてみて下さい。

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

8/14(金)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開!

公式サイト:http://akaiyami.com/

Photo by Robert Palka © 2019 Film Produkcja All rights reserved

監督:アグニェシュカ・ホランド 脚本:アンドレア・チャルーパ 出演:ジェームズ・ノートン ヴァネッサ・カービー AND ピーター・サースガード
2019/ポーランド・ウクライナ・イギリス/英語・ウクライナ語・ウエールズ語/118分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:安本煕生/字幕監修:沼野充義
配給:ハピネット 配給協力:ギグリーボックス パブリシティ:J・Grip マーケティング

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