自見:きょうは改めて松平会長が考える「子育て支援の精神」について、
お聞きしたいと思います。
松平:日本小児科医会では、高齢者には1982年に老人保健法が制定され、
老人の生活全般にわたる広範な保健・医療・福祉サービスが
展開されております。しかし、そのような仕組みが子供にはないわけで。
子供にも老人保健法を参考にして子供自身が
健全に成長できる環境作りと、子育てを社会全体で支えていく
システムを早急に作る必要があると考えております。
25年前、我々小児科医の先輩が、子育て支援は小児医療の充実や
保育所整備などのハードな面だけでなく、子供の権利を保障して、
子供たちが今何をしたいか、何を望んでいるかを大人が把握して、
その時にできることを全て実行し、後に後悔が残らないようにすることが
大切と力説されました。25年経った今、とても心に残っており、
今こそこの精神が求められていると思います。
淵澤:日本における、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数
「合計特殊出生率」が現在1.44。
少子化の一番の原因は、何だとお考えですか?
松平:少子化の原因については、多くの分析がなされております。
この結果を見ますと、少子化の原因は、夫婦の子供の数の減少を招いた
「晩婚・晩産化」と「未婚化の進行」の2つに集約することができます。
この2つの内、既婚夫婦による出生数「2人」の割合は
過去40年間大きな変化はありません。
しかし、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)
の推移を見ますと、1980年時点では男性2.60%、女性4.45%
と、ほとんどの人が結婚できておりました。
ところが90年代以降、生涯未婚率は急上昇を続け、
2010年には男性20.14%、女性10.61%、
最新の統計では男性の4人に1人、女性の7人に1人が一度も
結婚しない現状があります。
今までの国の少子化対策はワークライフバランスや
保育園の待機児童解消など働く女性への政策が中心でありましたが、
今後は若い人の生活環境の改善や子供ファーストの政策が必要と思います
また、わが国の少子化対策が十分な効果を挙げていない原因には、
子育てへの国の財政支援が少ないことも大きいと思います。
対GDP比で比較しますと、わが国の子育て支援への財政支援は
フランスの半分以下です。
財政赤字が続くわが国ですが、子供保険でも創設して
社会全体で子育てを支援する体制作りが必要だと思います。
子供への投資は、わが国の未来への投資でもあります。