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4月11日(12日)放送回のゲストは、メンタルトレーニング上級指導士の田中ウルヴェ京さんでした。
オリンピック・メダリストであり、車いすバスケットボール男子日本代表のメンタルコーチを務めるなどパラスポーツとのつながりも深い田中さん。Going Upには、2年半ぶりのご出演です。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大により日常生活に様々な影響が出ています。
気持ちが落ち込んだり、不安を抱える方も少なくありません。
そんな中、Going Upリスナーからこのようなメールが届きました。
「いつもアスリートのスポーツに対する真摯な姿に感動し、私も頑張らなければとパワーをもらっています。新型コロナウイルスの影響でオリンピック・パラリンピックが延期になりましたが、選手たちはどうやってモチベーションを維持しているのでしょうか? 選手のみなさんの熱い思いを維持する方法を聞いて自分の生活に活かしたいと思います」
メールにもあったように、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の1年延期をはじめ、大会やイベントの中止、さらには、ふだんの練習すらできていないなど、スポーツ界にも大きな影響が及んでいます。
アスリートの個別メンタルトレーニングも行っている田中さんに、東京2020大会の延期を選手たちはどう捉えているのか、そして、選手たちにはどのようなことを伝えているのか、伺いました。
「(延期に対する捉え方は)選手によります。延期になったことでラッキーと思う選手もいれば、落ち込んだり、いらついたり、不安になる選手もいます。いろいろな選手と話しますが、その時に聞くことは大きく2つ。『今のあなたが本当に感じている感覚は何ですか?』『あなたにとって競技は何のためでしたか?』 要は、競技に対しての思いと、自分の今の本当の気持ちです。例えば、コーチには言いにくいこととか、メディアに対しては言いにくいことってあるけれど、本当の自分の気持ちと、競技への本当の気持ちを改めて思い返す時期だね、と言っています」
ここで大切なのは、前向きに考えるというよりは、”事実”に向き合うこと。
「”前向き”って、実はすごくストレスだったりする」と話す、田中さん。
頑張らなきゃ!というのは、実は、自分の本当の気持ちに嘘をついて頑張る、ということにもなるといいます。
前回のご出演時にも「自分でコントロールできないことは考えない」という話がありましたが、例えば、オリンピックやパラリンピックを目指していて、年齢や怪我などのコンディションにより、この年にかけていた、という選手の場合。
大会が延期されたことで落ち込む選手もいますが、どう落ち込んでいるのか、何に対して落ち込んでいるのか…じっくり聞いていくそうです。
そうして突き詰めていくうちに、”新型コロナウイルス”という”自分にコントロールできないこと”を思っていてもしょうがない、という考えに自ら至ると、「まぁ、よく考えたら何も変わらないですね」「先が見えないのは前から一緒でしたね」といった言葉が選手本人から出てきて、「じゃあ、明日から走り込みだけはします」というように、行動につながっていくそうです。
「頭ではわかっているんですよね、私たち。でも、どうしても、不安な時って、コントロールできないことをやたら意識してしまいます。意識している自分をちゃんと認めないと、『意識するのをやめる』はできないんです。ただ、これは誰のせいでもなく、選手たち全員、モチベーションとしては初めての経験です。”目標がない”ことへのメンタルトレーニングってないんです。もちろん、今はそんな状況ではないというのも、みんなわかっています。なので、”目標がない”今は、『今日の目標は作れるね』とか『1週間の目標だけ作ろう』と話したりしています」
人間の心には「感じる心(感情)」と「考える心」があり、人間にしかできないのは、考える心、考える力だと語る田中さん。
これをきっかけに、「今やっている競技は自分にとってこんなに大切なものだったんだ」「フリースローの練習はこんなにやりたかったことだったんだ」と、自分のスポーツ、あるいは、仕事をどれだけ大事だと思っていたのか、根本的に気づくということに集中することができるので、今はそこに考えを持っていくことが大切だと、教えていただきました。
田中さんの話の中には、アスリートだけではなく、私たちの生活にも置き換えることができるヒントがたくさんありましたね。
次回の放送では、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続く現在の生活の中で、実際に起きている問題を挙げながら、田中ウルヴェ京さんにアドバイスをいただきます!
田中ウルヴェ京さんのリクエスト曲:ハピネス / 「10分間メディテーション~毎日できるミュージック・ケア」から
田中さんが心理監修をしたCD「10分間メディテーション」。この曲は、幸福感を高めたい時にオススメの曲。瞑想をしたり、仕事をする時にも良いそうです。
4月4日(5日)の放送では、前回に引き続き、トレーナーの仲田健さんをゲストにお迎えしてお送りしました。
数々のトップアスリートを指導する仲田さんは、現在、パラアスリートのトレーニングも行なっています。
昨年Going Upにご出演いただいた、陸上の井谷俊介選手もその一人。
井谷選手は、事故で右脚の膝から下を切断し義足で走るスプリンターですが、陸上を始めてわずか9ヶ月でアジア新記録をマークし、一気に存在感を示しました。
井谷選手の走りを初めて見た時は「上下運動や横ぶれも激しくて、ロスのある走り方をしていた」と語る仲田さん。
陸上を始めた当初は(100m)13秒くらいだったそうですが、少しアドバイスをしただけで、どんどん記録を更新し11秒台を出すようになったといい、井谷選手が持つ運動能力や適応能力、対応能力の高さがそれを可能にしていると話します。
また、パラスポーツにおいて大きなポイントとなる”あること”も、短期間でアジアチャンピオンという結果を生んだ要因だったといいます。
「井谷選手は義足を使いこなすのが他の選手よりもすごく上手で早かったと思います。義足を扱うのに一年も二年もかかる人がほとんどという中で、彼はもっと早い段階でうまく使いこなせたというのは、大きい要因のひとつだと思います」
東京2020パラリンピック出場に向けトレーニングは続きますが、現在、課題として取り組んでいるのは、義足側と健足側、左右の筋力差をなくすこと。
そのためには、競技用義足のS字型の部分をたわませ、地面を踏みつけて、その反力をもらいスピードに生かすため、押さえつける義足側の筋力をアップさせることが必要だと話しました。
パラアスリートを指導するにあたり、動作的な制限があったり気をつけなければいけないことはありますが、オリンピック競技など障害のない選手を指導する時と「全く変わらず、基本的には一緒」だという仲田さん。
「いろいろな障害のレベルやカテゴリーがあって、その中で一生懸命がんばっている選手たちを見るのはすごく感動します」とパラアスリートのパフォーマンスに刺激を受けることも多いそうです。
そんな仲田さんが、指導を行ううえで心がけているのは「誠実に、真面目に、一生懸命に」。
熱意を持って真剣に取り組むことで、選手との信頼関係が築きあげられていくということです。
最後に、上をめざして進もうとする方に伝えたい“Going Upな一言”を伺いました。
『 諦めずに謙虚に努力!!』
ある本に書いてあった「お金があるから成功するとは限らない、頭が良いから成功するとは限らない、ではどうすれば成功するのか。強く目標を思い続けて努力し続けることが成功へとつながる」という言葉が好きだという仲田さん。
きつくてしんどい練習をいくらやっても、結果が出なかったり、調子が上がらない時がある。そんな時、これだけ頑張っているのに…このままやっていても意味があるのか…と、卑屈な気持ちになりがちだけど、それでも、大丈夫、大丈夫と思いながら、謙虚にひたむきに努力をすることがすごく大事だといいます。諦めずに、腐らずに、ずっと努力をし続けた後には必ず結果が出るから頑張れ!と選手たちに話しているそうです。
仲田健さんのリクエスト曲:俺たちの明日 / エレファントカシマシ
昔から応援ソングとしてよく聞いていて、元気になれる一曲だそうです。
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、家で過ごす時間が多くなっていますが、この時間を活用して、「パラスポーツについてもっと知ろう!」ということで、4月4日(5日)の放送では、パラスポーツ関連本をご紹介しました。
◎「日本のパラアスリート」について書かれた本
★「義足のアスリート山本篤」(鈴木祐子・箸 東洋館出版社)
日本を代表するトップアスリートの一人、山本篤選手(陸上・スノーボード)の幼少時代からアスリートとして活躍するまでのストーリーが鮮明に描かれています。
★新日本出版社「パラリンピックのアスリートたち」シリーズ(全4巻)
・「勇気ある一歩で世界が変わる! ~車いすバスケ・香西宏昭~」(光丘真理 箸)
・「もっともっと、速くなれる ~パラ水泳・山田拓朗~」(沢田俊子 箸)
・「可能性は無限大 ~視覚障がい者マラソン・道下美里~」(高橋うらら 箸)
・「乗りこえた壁の先に ~車いすテニス・三木拓也」 (金治直美 箸)
小学生でもすらすらと読みやすいシリーズです。とても内容が深く、大人が読んでも読み応えが十分です!
◎「海外のパラアスリート」について書かれた本
★「義足でダンス~両足切断から始まった人生の旅~」(エイミー・パーディー箸 辰巳出版)
平昌2018パラリンピック・女子スノーボードクロス(LL1)銀メダリスト。リオ2016パラリンピック開会式ではロボットとのダンスを披露した、アメリカのアスリート・エイミー選手の自伝です。
★「車いすで世界一周 リック・ハンセンのお話」(エインズリー・マンソン箸 汐文社)
4大陸34か国、距離にして4万キロ以上の車いすによる世界一周旅行「マン・イン・モーション」を成し遂げた、カナダのリック・ハンセンさん。パラリンピックで6つのメダルを獲得した、陸上の車いすアスリート・リックさんについて書かれています。
◎本をじっくり読む時間がない、活字が苦手…という方に
★漫画「ましろ日」(原作・香川まさひと 作画・若狭星)小学館
小学館の「ビッグコミック」に連載されていた作品(全7巻)。 不幸な事故により両目の視力を失った中年男性が、視覚障がい者マラソンに出会い、多くの伴走者の助けを借りながら、人生で初めてマラソンのゴールを目指す・・・絶望を希望に変えていこうと奮闘するストーリーです。
この他にも、パラスポーツ関連の本がたくさん出版されています。
みなさんが読んだことがある、ぜひオススメしたい、という本がありましたら、番組までメールをお寄せください。みなさんからの情報、お待ちしております!