3月 8日
■ボルダリング〜プロクライマー尾川智子さん■
山本 「ボルダリング」というスポーツをご存知ですか?
   フリークライミングのひとつで、シューズとチョークパウダー以外は
   何も使わず自分の力で、高さ数mの岩を登るものです。
   そのボルダラーであり、フリークライマーとしては、
   日本で数少ないプロとして活動している女性、
   尾川智子さんにお話をうかがいます。

【電話インタビュー】

山本 もしもし、はじめまして。

尾川 はじめまして尾川です。

山本 登る岩をボルダーと呼ぶんだそうですが、東京近郊だとどこにあるんですか?

尾川 実は今、練習していまして、東京都の秋川渓谷にいます。

山本 フリークライミングって握力が必要だと思うんですけど、
   聞くところによると、尾川さんは30何キロだとか?

尾川 37キロくらいですね。そんなにないんです。

山本 フリークライミングでは体重の8割くらいの握力が必要とか
   聞きましたが?

尾川 ロープだと握力が必要ですが、ロッククライミングは握るというより、
   岩に手をひっかけて昇るんです。テナガザルのように。
   ですからそれほどの握力がなくてもできるんです。

山本 そうなんですね。尾川さんがボルダリングを始めたきっかけは?

尾川 大学で登山部というか、ワンダーフォーゲル部に入ってて、
   国体でフリークライミングの競技があるんですが、
   それに出るためにメンバーが足りないので、と先輩に誘われたのが
   きっかけです。

山本 やってみたら面白くてはまってしまったと。
   フリークライミングですからロープはないんですよね?

尾川 はい、ロープは使いません。

山本 落ちたらどうしよう?とか思いませんか?

尾川 もちろん怖さもありますが、上に行くぞという気持ち7割と
   落ちたら怖い気持ちが3割で、落ちるとしても「正しい落ち方」
   をするように心がけます。

山本 落ちるときもドスンと落ちるんじゃなくて、着地するような落ち方が
   あるんですね。

尾川 そうですね。実際、ボルダリングで死んだ方はいないんです。

山本 尾川さんは子供の頃、宇宙飛行士になりたかったんですって?

尾川 はい、宇宙飛行士になりたくて子供の頃は勉強ばかりしている子でした。

山本 それで、東大まで受験したそうですね?

尾川 はい、私が読んでいた宇宙の本を書かれたのが東大の先生で、
   「この先生に教わりたい」と。単純ですね。

山本 尾川さんは子供の頃から冒険家体質だったんですね。

尾川 そうですね。フリークライミングを始める前も、バックパッカーもしていて、
   世界の40カ国くらいを回りました。

山本 その頃、あっちの岩とかこっちの岩とか、登りたいところがあったのでは?

尾川 あの頃はボルダリングを始めていなかったので気にしなかったんですが、
   今はどこへ行っても「あの岩登れるかな」という目で見てしまいます。

山本 尾川さんはボルダリングの競技を始めて、3年でアジアチャンピオンになった
   そうですが、競技はどのように競うんですか?

尾川 競技も2種類あるんですが、アジアの大会では7mの壁を登るんです。
   一番上まで行ったら優勝なんですが、なかなか行けません。
   下で落ちると順位が低いし、人よりも上に行ければ優勝です。

山本 命綱はないんですよね?下にマットとかは?

尾川 50〜60センチのウレタンのマットが敷いてあります。

山本 安心しました。去年、尾川さんは日本の女性で始めて「V12」の難度を達成
   したそうですが、この難度っていうのは?

尾川 V12はアメリカのグレードで、日本で言うと4段です。
   (最高難度はV16=6段)

山本 きょうは寒い中、それも練習中にありがとうございました。

尾川 ありがとうございました。

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【尾川智子】
1978年4月14日生 血液型0型 愛知県出身
身長160cm 靴⇒23.5cm 握力⇒右39kg 左37kg

略歴
宇宙飛行士を目指して進学した早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。
在学時の2000年、国体山岳競技に誘われたことがきっかけで、クライマーの道に。
2003年には「Asian X−games」で優勝。
競技歴3年にしてアジアチャンピオンになった。
その後数々の世界の大会に参戦し、現在は高難度の岩に挑戦中。
2008年4月には日本人女性初となる難度V12を達成。世界のトップと肩を並べる。

●主な競技歴
2000年 富山国体 総合2位
2001年 JFAユース選手権 3位
2002年 UIAA World Cup イタリア 12位
      UIAA International Event 19位
2003年 Asian X-games 優勝
      世界選手権 18位
2004年 UIAA World Cup イタリア 11位
      UIAA International Event 13位
      UIAA World Cup 中国 10位
2005年 Send Fest(全米大会) 優勝
2006年 Asian X−games 優勝





 
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