7月 7日
■棒高跳び〜澤野大地選手〜■


山本  今週は「棒高跳び」に注目します。
    5m83の日本記録保持者で、
    アテネに続いて、北京の代表に決定。
    二大会連続でオリンピックに挑む
    澤野大地選手にお電話でお話をうかがいます。

山本  澤野選手、こんばんは。

澤野  こんばんは。よろしくお願いします。

山本  澤野選手は、中学1年生のときから棒高跳びをやって
    いらっしゃるそうですが、きっかけは何だったんですか?

澤野  はじめは長距離をやっていたんですが、
    陸上の顧問の先生のアドバイスで棒高跳びを始めました。

山本  中学校で棒高跳びをやっているところって珍しいですね。
    道具はあったんですか?

澤野  道具は中学校にありました。その先生が棒高跳びに力を
    入れていた方だったんです。

山本  そういう出会いがあるんですね。

澤野  はい、その先生がいなければ棒高跳びをやっていなかった
    と思います。

山本  中学のときはどのくらい跳んだんですか?

澤野  中3のとき、4m30でした。

山本  そして高校2年のとき、5m25の高校新を記録していますね。
    私、知らなかったんですが、ポール(棒)はみんな違うんですね。

澤野  はい、素材も長さも硬さも細かく分かれています。

山本  ポールについての規定はないんですか?

澤野  モーターとか動力さえ入っていなければ、
    物干し竿でも竹の棒でもなんでもいいんです。

二宮  昔は竹で飛んでいましたからね。

澤野  はい、そうですね。

山本  澤野さんはポールを何本も持っているんですか?

澤野  一試合で7本くらい持っていきます。

山本  ポールを継ぎ足すわけじゃなくて、一本長いまま運ぶんですか? 

澤野  はい、そうです。

山本  素材はなんですか?

澤野  グラスファイバーです。

山本  時々、試合中に折れちゃうことありますよね?
    あれは何が原因なんですか?

澤野  原因は二つ考えられます。一つは完全に傷が入っていた場合。
    もう一つは選手の技術にそのポールが耐えられない場合です。
    スピードが出て、いいつっこみが出来たとき、ポールが荷重に
    耐えられずに折れてしまいます。

二宮  澤野さんはアテネのとき決勝進出しましたね。
    メダルには届きませんでしたが、日本人として20年ぶりの
    決勝進出でした。自信になりましたか?

澤野  自信にはなりましたが、同時に「同じ土俵の上で戦えていない」
    と感じました。決勝に残った15人の中でも最初の高さが
    僕ともう一人だけで、あとのメダルを狙う選手はもっと上の
    高さを狙っていました。カヤの外で試合をしている感覚でした。
    それで「同じ土俵で戦いたい」と思って、アテネのあと、
    一人でポールを担いで海外を転戦するようになったんです。

二宮  メダルを取るために、何が足りなかったと思いましたか?

澤野  自分の気持ちのコントロールだと思います。
    決勝まで行けば、力はそれほど変わらないので、過去の成績では
    なく、その場で一番高く跳んだものが勝つんです。
    周りに流されずに、自分の跳躍をすることが大事だと思います。

山本  跳躍は何回できるんですか?

澤野  ひとつの高さにつき3回できます。3回連続で失敗すると終わりです。

山本  バーは1センチずつ上げるんですか?

澤野  大体10センチか5センチずつ上げていきます。

山本  ブブカの世界記録 6m14は14年間も破れられていない記録です。
    どうして誰も破れないのでしょう?

澤野  ブブカ選手は特別身体能力が高くて、100mも走り幅跳びもすべて
    世界トップレベルの選手だったんです。

二宮  ブブカは体操の選手でもあったんです。飛形もきれいでしたね。

澤野  そうですね、だからこそあのすごい記録が出せたと思います。

山本  6m近く跳んでいる瞬間って、どんな感覚ですか?
    無重力状態みたいな感じでしょうか?

澤野  無重力とは感じないですね。
    ボールを高く放り投げて上で一瞬止まったような感じ。

二宮  調子のいいときは何か感覚が違いますか?

澤野  もう朝起きた瞬間に違いますね。調子がいいと、
    はじめの一歩の歩き始めから違います。

二宮  以前インタビューで、「ひざのバネは練習しないとダメだし、
    練習しすぎてもバネがなくなる。いいバネをためるのが大事」
    という話をうかがいました。その状態ですか?

澤野  そうですね。何もしなくても、体がすーっと進んでいく感じです。

山本  北京ではぜひそういう感覚で挑みたいですね。
    8月20日に予選、22日に決勝ということですが、
    予選突破のラインはどのくらいだと思いますか?

澤野  他の大会と同様、5m70だと思っています。

山本  選手が跳ぶ前に、観客に手拍子を要求していますよね。
    あれはどうなんですか?私はへんなタイミングで手拍子を打つと
    合わないじゃないかと心配するんですが(笑)

澤野  リズムというよりもお客さんと一体化して飛ぶ感覚です。
    何か力になるんです。

二宮  観客にエネルギーをもらっているという?

澤野  そうです。手拍子で風が吹くことはないんですが、
    でもそれが追い風になっているようなエネルギーをもらえるんです。

二宮  ブブカもそうでしたね。コンダクターみたいに会場を操っている
    感じがありましたね。

山本  北京では、ぜひ、4年間の成果を見せてください。

澤野  4年間というか、ずっと北京五輪を目指してきましたし、
    ヨーロッパを転戦したものこの大会のためだったので、
    ここでベストを尽くしたいと思います。

山本  ベストコンディションで素晴らしい結果を期待しています。
    ありがとうございました。

澤野  ありがとうございました。

山本  きょうの北京へのチャレンジは、棒高跳びの澤野大地選手でした。





 
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