1242 ニッポン放送
本屋は最高!
塚越孝
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9月23日
「アメリカよ、美しく年をとれ」(猿谷要著/岩波新書)
本当に素晴らしい本です。
猿谷要先生。
日本におけるアメリカ研究の第一人者です。
今や80歳を超え、圧迫骨折のために、
背中にセメント入れたりとたいへんなご苦労をされています。
後書きでは、ご夫婦そろって、老老介護ならぬ、
“病病介護だ”とまで書いていらして、そんな中、
好きなアメリカについて書き上げた迫力と愛情が伝わってきます。

実は私、20年前「朝からたいへん!つかちゃんです」を始めた時に、
番組を聴いて下さっていた、この猿谷要先生ご夫妻と知り合いました。
いろんなことで影響を受けました。
その猿谷先生が、岩波新書から
「アメリカよ、美しく年をとれ」という本を出しました。
猿谷先生は「これは遺書のようなものだ」とおっしゃっていますが、
まだまだ、頑張ってほしいものです。

「アメリカはまだ歴史が浅いから、未熟なところがある」と。
“ブッシュ大統領はブラジルにもアフリカ系の住民がいるのかという
幼稚な質問をしたし、アトランタのある小学校では、
先生が私の目の前で、世界地図のなかのフィリピンを指して、
日本はここですと生徒に説明したのだ。”といった事例を挙げながら、
“他国に介入して怪獣ゴジラのように肥大化した軍事中心の国になるよりも、
自分だけで警察官をつとめることの無益を悟って、
自国内にまだニ〇%近くもいる貧困層の救済に努めた方が、
結果として世界からの賞賛と好意を得る道につながる…”

つまり「アメリカよ、もっと世界のみんなから好かれる国になってくれ!」と
猿谷先生は、呼びかけているんですね。
アメリカ研究の日本における第一人者が渾身の力をこめて書き上げた新刊、
今後、我々、一個人とアメリカの関係を考える上で
まことに貴重な本になることでしょう。
長く、手元に置いておきたい一冊です。

<著者について>
猿谷要(さるや・かなめ)
1923年、東京生まれ。
1948年、東京大学文学部卒業、その後、東京大学大学院修了。
日本大学、東京女子大学、駒沢女子大学教授、
およびハーヴァード大学、ハワイ大学、コロンビア大学、
エモリー大学、コロラド大学などの客員研究員を歴任。
現在、東京女子大学名誉教授。専攻はアメリカ史。
著書に「アメリカ南部の旅」「西部開拓史」「物語 アメリカの歴史」
「遥かなアメリカ」「ハワイ王朝最後の女王」
「検証アメリカ500年の物語」「アメリカよ」などがある。



 
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