1242 ニッポン放送
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塚越孝
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9月16日
「産経抄 それから三年 2001〜2003」(石井英夫著/文春文庫)
産経抄の石井英夫さんが書いた
「産経抄 それから三年」が文庫になりました。
「あとがき、といえるかどうか」には、
“私がモットーとしていたのは「花は愛惜に散る」という語句だった。
道元禅師「正法眼蔵」の中の言葉だが、
ナニあの難解な禅書数十巻をひもといたわけではない。
人も花も、惜しまれているうちに散るべきだという考えであり、
戒めなのだった。
ところが気づけば三十数年も居坐っていたのだから、
ウカツとも何ともいいようがない。”とあるんですが、
当番組も今月いっぱい。
私も「花は愛惜に散る」と言えますかどうか…。

先月、岸田秀さんの対談本を紹介しましたが、
その中にも、岸田さんは「日本は多神教」と。
石井英夫さんも言ってます。
石井さんは今、全国各地の「川」を巡って、
紀行文を書いていますが、その初回は、千曲川でした。
そこで。 “長野市といえば善光寺の門前町だが、
その善光寺は天台宗の大勧進と浄土宗の大本願という
二つの寺によって運営されている。
ところが善光寺にはもともと宗派はない。
つまりあらゆる宗派を受け入れている。
そもそも日本には宗教の戦争はなかった。
戦国時代でいえば、甲州の武田信玄と越後の上杉謙信の
「川中島」にしても宗教の対立ではなかった。
それどころか善光寺の仏さんは武将の間を渡り歩いた。
武田、上杉双方が善光寺の仏像を自国に持ち帰り、
それぞれ地元に善光寺を建てた。
貞享五(1688)年夏、四十五歳の芭蕉は
木曽路から信州を通って江戸へ帰ったが、
その折、善光寺に参詣して
「月影や四門四宗もただ一つ」と詠んでいる(「更科紀行」)。
日本人は一神教の示す強烈な排他性や異教敵視感を持ち合わせない。”

やはり、日本人は「和」の心なんですね。
英米と中東の人々は、理解できるでしょうか。

<著者について>
石井英夫(いしい・ひでお)
昭和8年、神奈川県横須賀市生まれ。
昭和30年、早稲田大学政経学部新聞学科卒業後、産経新聞社入社。
44年から論説委員兼コラム「産経抄」担当となり、
平成16年12月28日まで書き続ける。
同欄執筆で昭和63年度日本記者クラブ賞、
平成4年第40回菊池寛賞を受賞。
著書に「蛙の遠めがね」「新編・ぶらり中国」
「新聞記者 司馬遼太郎」などがある。



 
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