1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
9月16日

東京、大阪が済んで、取りあえず、今日から3日間の名古屋で終わり。
これを読んで間に合った人は運がいい。
中日劇場、当日券も少し有り、連休、取り立てて用のない方は、
今からでも名古屋へ小旅行をお奨めしたい。

私は、先週、東京で観て、ぶったまげて笑い転げた。
今週、大阪もバカ受けだったというので、
名古屋もドッカン、ドッカン来るのが目に見える。
丁度、10年前に初演され、その後、名古屋でのみ上演され、
大評判をとった作品が蘇って、尾張でお開きとなる。

三谷幸喜作品「アパッチ砦の攻防」より「戸惑いの日曜日」。
もともと劇団東京ヴォードヴィルショーのために書き下ろされ、
このたび、芸達者にスターを配した抜群のキャスティングで大成功。
おそらく、日を措かず再演され、平成の名狂言となるだろう。

舞台は、日曜の午後、高級マンションの一室。
ちょい派手目のベストを着た父親(佐藤B作)がしみじみしている。
娘が結婚の報告に来たが、なんか様子が変。
実は破産して4日前、人手に渡っている。
娘の手前、自宅のふりをするが、
そこに持ち主(西郷輝彦)や娘の婚約者、先の女房、
電気屋にフィリピン人妻などが次々現れ、ハチャメチャに。

この芝居、番組にゲストで出てもらった西郷さんに奨められ、
観たのだが、大スターが舞台上、戸惑う姿が涙が出るほど可笑しい。
日曜の昼下がり、越してきたばかりの部屋で
繰り広げられるドタバタに、真剣に向き合う主人公は、
既にもう、はまり役だ。

実は、私が生まれて初めて買ったレコードは、
西郷輝彦のデビュー曲「君だけを」。
生放送でいかにファンだったかを伝えるため、
「星のフラメンコ」以外の名曲を上げた。
西郷さんも喜んでスター歌手時代の思い出を語る。

調子に乗って「メキシコ娘」「星娘」「恋人を探そう」を口ずさんだ。
これは、ゲストに鼻歌交じりに生歌を歌わそうという
私のインタビュー手法だが、どうも西郷さん、乗ってこない。
ならば、さらに奥深いとこを。
「逢わずにゃいられない」って曲が好きなんですよー。
アァ。
西郷さん、アァって、ご自身の曲ですよ。
アルバムの中に入ってたのかなぁ。
何を言ってんですか、B面の名曲でしょうに。
ほらっ、♪あの娘と毎日、逢わずにゃって
私が痺れを切らして歌うと。
あぁ、ありましたねぇ。

このとぼけた味が喜劇に向かわせたかと思ったら、真面なんだと。
美空さんなんかも「その曲、知らないわー」ってのがいっぱいあって、
大スター歌手というのは、レコーディングしただけってのも
珍しかぁないと。
こっちは、針が擦り減るくらい聴いてるってのに。

西郷さんは、歌手を丁度、10年やって、
「どてらい男」で役者に転向。
これをテレビで欠かさず観ていた三谷幸喜少年の念願叶って、
今回の傑作が生まれた。



 
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