飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
12月 9日
それはかつて見た光景そのものでした。
昨日行われた香港国際レースの枠順抽選会。
当欄でも何度も指摘している通り、
コースでどうしても内枠有利となってしまう沙田競馬場。
今回もドロー(抽選)の女神はあるものに微笑み、あるものに怒りの表情を見せました。
香港勢で期待された馬たちでは、もっとも逆鱗に触れたのはエイブルフレンド(香港マイル・14番枠)で、逆にもっとも微笑まれたのはペニアフォビア(香港スプリント・1番枠)ということになりましょう。

ジョン・ムーア厩舎のスターにして香港の競馬ファンが総大将と便りにする馬、エイブルフレンド。
思い返せば2年前、2014年の香港マイルでもこの馬は10頭立ての大外枠を引き当ててしまいました。
そのときも大いに心配された訳ですが、蓋を開けてみれば流石はスーパースター。
大外からライバルたちを撫で切りの4馬身4分の1差での圧勝。
香港の競馬ファンを狂喜乱舞させました。
今回もその再現かと期待されますが、管理するジョン・ムーア調教師は2年前ほどは甘くないと気を引き締めています。
「7番枠ぐらいの中程が理想だと思っていたんだけどねぇ。そこなら、上手いこと道中馬ごみが壁になってくれるんだけど…」
と、大外14番枠には不満げ。
「大外となると、最悪道中は最後方まで下げないといけないかもしれないね。ただ、これで本番で乗り越えなければならないタスクが定まったから、あとはそれに向けてどう準備するかだね。なんといっても、直線でどれだけ切れる脚を見せられるか。ん〜、ただ、正直体調は万全とまでは言えないから、そこが心配でもあるね」

ムーア厩舎からはこのエイブルフレンド以外にも、若武者ヘレンパラゴンとジョイフルトリニティも出走。
ヘレンパラゴンの枠順はまずまずの5番枠、ジョイフルトリニティは11番枠でした。
「ヘレンパラゴンはいい枠を引いたね。前走の再現を狙えるよ。この枠なら騎乗するヒュー(・ボウマン騎手)が存分に腕を振るえるだろうし、直線までごちゃつくこともないだろうからね。この馬だって侮れないよ」
と、いつものムーア節が戻っていました。

さて、地元馬で外枠を引いてしまったのは、エイブルフレンドだけではありません。
この国際レースの重要なステップとなるジョッキークラブマイルをかったビューティオンリーは13番枠。
去年のJCマイルの勝ち馬ビューティフレイムが12番枠と、ドローの女神は香港に厳しかったようです。
しかし、両馬を管理するトニー・クルーズ調教師はさほど逆風にはならないと言います。
「気にしないよ。ビューティオンリーは疲れもないし、ビューティフレイムは前に行く馬だからね。(馬群を引っ張るであろう)ロマンティックタッチが4番枠を引いたから、ウチのはそれを見ながら競馬ができるはずだよ」

同じクルーズ厩舎の香港スプリント馬といえばペニアフォビア。
去年のこのレースを勝っていますが、それは外枠を乗り越えてのものでした。
今年は外枠を引き当てるという悪夢からは免れたものの、調教師の目には他にも乗り越えなければならない壁が見えているようです。
「いい枠がほしい、いい枠がほしいと念じていたんだけど、ホントにいい枠が来たね!」
と、興奮ぎみに話すクルーズ師。
「1番枠だなんて、完璧だよ!小回りコースの1200m戦で1番枠と14番枠じゃ天と地ほどの差があるからね。去年みたく、ここで燃え尽きるほどにギリギリまで仕上げなくてもいいのは大きいよ。大きなアドバンテージをもらったし、もっとも勝利に近い馬であることは間違いないよ。願わくば、先手を取って押しきってほしいね」

香港スプリントは香港マイルと違って、ドローの女神が香港馬にかなり微笑みかけました。
実に7頭の香港馬の内6頭までが内枠に入ったのです。
逆に言えば、わざわざ遠征してきた海外勢にとっては災難そのもの。
特に、今年モーリスドギース賞(G1・1300m)を勝ったサインズオブブレッシングを出走させるフランスのフランソワ・ロー調教師にとっては、恐怖の一瞬でした。
「壊滅的だよ…。香港馬が軒並み内枠にいるじゃないか!」
日本代表の一頭、今年の高松宮記念馬ビッグアーサーにとっても他人事ではありません。
管理する藤岡調教師は、13番枠を引き当てた瞬間に事の重大さを悟ったようです。
「中程の枠がほしかったんだけどなぁ…。でも、外枠からでも良績はあるからね。ゲートをポンと出てくれれば、十分勝負になると思うよ」
と、最後は前を向きました。
香港勢ではブレット・プレブル騎手とフランシス・ルイ調教師のコンビが怪気炎です。
このコンビはラッキーバブルズで今年のG2プレミアボウル(1200m)を勝ちましたが、5番枠に入りました。
「大方が思うように、この馬は人気になると思うね。そして、素晴らしいゲートを引き当てた。ここなら、いろんな作戦を立てられる。この馬は素直な馬だから、馬の気に任せてどこでも控えられるというのはいいね。十分チャンスはあると思うし、この馬自身も調子は良好だよ」
と、プレブル騎手は話しました。

また、ステップレースのG2ジョッキークラブスプリントを勝ったノットリスニントーンはラッキーバブルズの1つ内枠の4番枠。
管理するジョン・ムーア師は、
「いいゲートに入ったね。去年よりも今年の方がレースに適応できると思うよ。この馬よりも内枠には前に行ってレースを引っ張る馬が揃っているからね。彼らの後ろで息を入れつつ、理想の競馬ができるんじゃないかな」
と前向きなコメントでした。

続いては香港カップ。こちらは香港スプリントとは違って、ドローの女神はビジター側に微笑みました。
特にその恩恵を受けたのは日本馬。それぞれ、自分の枠に満足だったようです。
去年の勝ち馬エイシンヒカリは先手を奪うのに絶好の最内1番枠。同じ日本からのライバル、モーリスの8番枠とは対称的な結果となりました。
管理する坂口調教師は、
「素晴らしい枠だね。4番枠か5番枠ぐらいがいいなぁと思っていたんだけど、この枠からなら先手を取ってずっとリードを保ってほしいね。願わくば、ゴールまで」
カップは日本馬目白押し。
他に目立ったのは、ステファノスの7番枠。陣営は問題ないようで、藤原助手は、
「中程の枠が良かったから、まさに中程で非常に満足。ここなら、十分に仕事できるはずだよ」
と自信を見せました。

2014年の香港カップ馬デザインズオンロームは6番枠。
ムーア師は、あとはホアオ・モレイラ騎手に任せたと言っています。
「いいゲートに入ったよ。この馬は発馬後控えるタイプだから、あとはホアオ(・モレイラ騎手)がどこまで前半で前と距離を取るかだね」
名伯楽ムーア師といえど、馬を作れるのはレース前まで。レース中の判断は、名手モレイラに任せるようです。

戦術的に面白い枠順となったのが、香港ヴァーズ。
4コーナー奥の引き込み線からの発走で1コーナーまでが長い。
そして、コーナーを4つ曲がるのでスピードが出にくい。
従ってスローペースの末脚勝負になりがちなのが、例年の香港ヴァーズでした。
ところが、今年の枠順はそうした流れに一石を投じそうです。
まず、ディフェンディングチャンピオンのハイランドリールが10番枠に入りました。
外枠とはいえ、去年も1つ内側の9番枠だったことを考えると、去年と同じくスローペースを前々で競馬し押しきるというレースが想像できます。

ところが、これに待ったをかけるのが伏兵ビッグオレンジ。
管理するマイケル・ベル調教師は、グッドウッドカップ(G2・芝3200m)を2度制している愛馬の作戦を披露してくれました。
まずは7番枠については、
「ラッキーセブン!素晴らしいね」
と洒落て見せたあと、
「ビッグオレンジは2400m以上の長距離レースでは先手を取りたい馬なんだよね。今回も、もちろん取りに行くつもりだよ。ライアン・ムーア騎手(ハイランドリール騎乗)は手強いと思っているけど、ウチの馬に絡んできて共倒れになるような選択はしないでしょう。もちろん、競馬に絶対はないから絡まずに行って思わぬ伏兵に足を掬われることがないとは言えないけど、普通に考えたらウチが先手で控えるんじゃないかなぁ」
すでに神経戦に入っているかのよう。
さらに、日本から出走するスマートレイヤーも前にいきたい馬。
その上、外の13番枠を引き当てちゃったからさあ大変。
管理する大久保調教師は前に行く以外に方法がないと打ち明けます。
「この馬はいいステイヤーだから、枠はさほど関係ないんだ。ゲートをポンと出てくれれば、チャンスはあるんじゃないかな」
と、淡々と話しました。
枠順も確定し、いよいよ本番に向けボルテージが高まってきます。


 
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