飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
12月12日
直線残り100m、沙田競馬場の大スタンドは悲鳴とも歓声とも判断がつかない轟音に包まれました。
圧倒的な一番人気を背負ったハイランドリールが終始レースの先手を奪い、リードしたこのレース。
2300mを走ってきて残り100で戴冠というところで、日本の刺客、サトノクラウンが一完歩づつ急速に、そして確実に迫ってきたのです。
ハイランドリールが逃げきるか、サトノクラウンが差しきるか!?
2頭の馬券を持っていなくても興奮する展開。
特に、ハイランドリールの馬券を持っていた人は奈落の底に突き落とされるような気持ちだったのではないでしょうか?
結果、最後の最後でサトノクラウンが差しきり優勝。
スタンドのそこここにいた日本から遠征したファンは狂喜乱舞していました。

レースは、予想通りハイランドリールが先手を奪う展開。
10番枠からの発馬ながら、スタート直後の長い直線を活かして徐々に先頭に立ちます。
そのまま向正面まではペースも落ちて順調に進んでいたレースが一変したのは、向正面の中程でした。
レース前から場合によっては絡んでいくと先行を宣言していたビッグオレンジが早仕掛け。
ハイランドリールに並びかけます。
これを嫌ったハイランドリールは振り切るようにスピードを上げ、レース全体が動き出しました。
スタンドで見ていたファンは、それでもハイランドリールは実力で押しきるだろう。
そう思っていました。
実際、第4コーナーを回ってくるときの手応えは抜群で、直線に入ると他馬を寄せ付けず一気に突き放します。
勝負あったかに見えたレースで諦めずに差を詰めてきた2頭が、道中は後方に控えていたサトノクラウンとワンフットインヘブン。
ワンフットインヘブンは香港とは浅からぬ因縁があって、お母さんのプライドがこの香港ヴァーズを勝っているのです。
その事がDNAに記憶されていたのか、道中は死んだように控えていたのが、直線手前でスルスルと順位を上げていき、前へ。
最後の勝負どころでサトノクラウンに立ち後れたのが響き、3着に終わりましたが才能の輝きを見せつけました。
サトノクラウンの末脚、そしてそれを見つめるスタンドの熱狂は冒頭で触れた通りです。
勝ったモレイラ騎手は、これで4つある国際レース全てのタイトルを手中に収めました。
この、いわばフルハウスは、ジェラール・モッセ騎手以来、史上2人目。
それも、去年のスプリント制覇、一昨年のカップとマイルのダブルに続いて今年達成と、たった3年で上り詰めてしまいました。
「フルハウスなんて、夢のようだよ!」
と、興奮気味のモレイラ騎手。
「この馬はチャンスが十分にあるとレース前から思っていたんだ。調教で乗った時の手応えが抜群だったからね。何頭も乗って来たけど、抜群だった」
と、馬のデキの良さを強調しました。
何しろ相手は先月のブリーダーズカップを勝った世界的名馬。
その上乗っているのは、2016年のワールドベストジョッキーに選出されたばかりのライアン・ムーア騎手。
管理するのはアイルランドの誇る名伯楽、エイデン・オブライエン調教師。
まさに非の打ち所のないピカピカの経歴。
モレイラ騎手が燃えないわけがありません。
「いつでも捕まえられるって、自信があったよ」
直線残り300m、先頭を走るハイランドリールからはたっぷり3馬身はありました。
しかも、前を走るチャンピオンは残り800mから400mまでの2ハロンをメンバー中最速の23秒42で走り、
後続を突き放しています。
しかし、モレイラはそこで相手のタンクが空になったことを見抜いていました。
あれよあれよと差を詰め、最後は半馬身リードしてゴール。
勝ち時計は、国際G1としてリニューアルしたここ16年で最速の2分26秒22でした。
「直線に入るところで前にいたシルバーウェーブが寄ってきたんで一瞬待たなきゃいけなかった。でも、外に出して前が開いたらもう全開!あっという間に駆け抜けたよ」
と、レースを振り返ったモレイラ騎手。続けて、
「今日の勝ちっぷりを見れば、この馬がどれだけ才能を秘めているかがわかるよね。何しろ彼が負かしたのは、世界的名馬ハイランドリールだよ。もちろん、騎手の腕だって誉めてほしいけど」
最後はおどける余裕がありました。

この勝利は日本馬にとっては、15年前のステイゴールド以来2度目の香港ヴァーズ制覇となりました。
管理する堀調教師にとっては、去年のモーリスでのマイル制覇に続く勝利です。
「ずっと香港遠征を考えていたんだけど、前走(天皇賞秋)の後、こっちを第一候補にしたんだ。今日のレースでこの馬も一皮むけた感じがして嬉しいよ。
ベストのレースをしてくれたね。この馬は2歳馬の時からすでに才能を見せていたんだ。重賞も勝っているしね。この先については、周辺とよく相談して、どのレースがこの馬にとって一番かを考えるよ」

一方、敗れたハイランドリール陣営。
オブライエン調教師は、馬の走りに満足していました。
何しろ、この12ヶ月で6つの国と地域、10度のレースを走りきったのです。
「いいレースだった。長い長いシーズンだったと思うけど、最後のレースも素晴らしいものだったね。精一杯の走りを見せてくれた。印象に残るシーズンだったね」
と、馬を称えました。
一方、騎乗したライアン・ムーア騎手は悔しさをにじませました。
「馬は精一杯いい走りを見せてくれたけど、ペースが落ち着かなくてプレッシャーを受けたね。負けたのは正直悔しい。ずっと一人旅で、展開が向かなかったから。もちろん、勝ち馬は素晴らしい馬だけどね」

前の2頭が後続を大きく引き離したこのレース。
2頭から6馬身と4分の3差の3着が、凱旋門賞6着、エレイン・デ・ロイヤルデュプレ調教師が管理するワンフットインヘブンでした。
騎乗したスミヨン騎手は、
「ゲートを出てから、どうも荒っぽいレースだったね。ペースも落ち着かずに、出たり入ったりの激しいレースだった。外へ出そうとしたんだけど、みんなそこへ入ろうとしていたからだいぶごちゃついていたね。この馬なりに精一杯走ってくれたけど、前の2頭はもう次元がちがうよ」
と振り返りました。


 
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