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飯田コージ |
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。 |
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香港競馬通信 |
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12月13日 |
4つある香港国際レースのうち、最も香港馬が得意としているのが香港スプリントです。
今までも、サイレントウィットネスやセイクレッドキングダム、ラッキーナインなどなど、数々の年度代表馬や最優秀短距離馬を輩出。
他の中・長距離レースでは海外馬に譲っても、ここは牙城といった意識がありました。
2012年、2013年と、日本代表のロードカナロアに連覇を許したことなど、香港の競馬ファンにとってはかなり忸怩たるものがあったんですね。
そんな逆風の日々を乗り越えて、香港スプリント界は再び栄光の時を迎えようとしているようです。
今年の香港スプリントは、地元香港馬の独壇場。
掲示板独占の圧倒的強さを見せつけました。
勝ったのは、苦難の時代から優勝旗を取り戻した、2014年のこのレースの覇者、エアロヴェロシティ。
直線入り口で先頭に立ち、あとは他馬を寄せ付けず最後は粘りきりました。
御年8歳という大ベテランが、若武者ラッキーバブルズの追撃を振り切り、香港のスプリント王の貫禄を見せつけたのです。
実は、香港スプリントの歴史上、6歳を超えた勝ち馬は1999年以来おらず、管理するポール・オサリバン調教師はそれを知っていて、直線ラッキーバブルズに追い詰められたときにそれがよぎったと言います。
去年の勝ち馬ペニアフォビアが逃げ粘って3着、末脚を伸ばしたアメイジングキッズが4着と、去年に引き続き香港馬が4着までを独占しました。
エアロヴェロシティにとっては、国際レースデーはこれで3度出走し、3勝。
そのうち1勝は、国際レースの日のクラス3の1200m戦。これが2013年。
そして1年後には香港スプリントを勝ちました。
沙田競馬場のスタンドを埋め尽くした香港の競馬ファンは、ピンク色の旗を降ってその勝利を称えました。
コンビを組んだパートン騎手は、この馬の24戦のキャリアの中でも格別の勝利だろうと語ってくれました。
「この馬の全ての勝ち鞍の中でも最も満足の行く勝利だと思うよ。だって、この馬は困難を乗り越えてここにこぎ着けたわけだもの。様々な不安要素があった。まずは年齢の面からも厳しいだろうと思われていた。だから、ポール(・オサリバン調教師)は自分ができるあらゆることをこの馬に施した。目一杯のデキに持ってきた。だから、ボクはこの馬に乗れてとてもラッキーだったよ」
「このところ負け続けていて、それでも本当のこの馬はこんなもんじゃないって思いながらやってきたから、とてもいい気分さ。言ってみればこの馬はファイターで、レース前もレース中も常に全力を出してしまうから、燃え尽きちゃうこともあった。結果、今日のようなベストのレースをできなかったりね。それに、この馬は馬格があるから仕上げるのが大変なんだよ」
「ポール(・オサリバン調教師)はいい具合に仕上げてくれて、少し体重も落としてくれた。ベストの仕上げをしてくれたから、レースでも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたよね」
レースは、今年1月のHKG1センテナリースプリントカップの再現のようでした。
逃げるペニアフォビアをピタリとマークするエアロヴェロシティ。
そして、
エアロヴェロシティが動いてペニアフォビアを捉えにかかるところでペニアフォビアが進路を塞ぎにかかります。
しかし、パートン騎手とエアロヴェロシティはそれに動じませんでした。
「昔は馬がカッとなったりしたけど、今日は特に問題なかったよ。それだけ、馬が変わったってことさ。まっすぐ前を捉えて伸びるだけ。むしろ、後ろからのプレッシャーのが怖かったよ。残り100では勝てるって自信があったんだけど、残り50になったらラッキーバブルズの気配を感じて、もう早くゴールが来てくれって祈ったよ。」
と、ゴール前の心境を語ってくれました。
「今日は本当に素晴らしいレースをしてくれた。でも、あれが精一杯。最後までキツいレースだったよ。この馬の気力が勝たせてくれたね」
オサリバン師はレース前、自信があるというよりは勝てるかもしれないというぐらいの気持ちだったようで、どんなに理想的な仕上げをしてもすこし不安が残っていたようです。
「もちろん、十分勝負になるなとは思っていたよ。当然目一杯の仕上げでベストなコンディションを作り上げたつもりだった。でも、年齢がちょっと問題でね。ひょっとしたら年を取りすぎたんじゃないかと思って。だから、勝てないまでも賞金を稼いでくれたら御の字だと思っていたんだ。それだけに、勝てて天にも昇る気持ちさ」
そして、年齢のみならず様々な心配点があったことを明かしてくれました。
「加齢以外にも何しろ問題だらけで、心房細動も心配だったんだ。鼻出血もひどいしね。それに、昨シーズン日本遠征をしたら腸捻転を起こしたし。でも、今日のレース前にオーナーには今日は過去最高の仕上がりです。これ以上は私には出来ませんって言ったんだ。いろんな問題があったけど、今日は乗り越えてくれると思ったんだ」
エアロヴェロシティはレース前にある儀式をすることが知られています。
オサリバン師も今日のレース前にそれが見られて、今日はやってくれるかもしれないと確信したようです。
「鞍を乗せたときに、厩務員の腕を噛もうとするかどうかで調子がわかるんだ。今回は、もちろん大いに噛もうとしていたよ。馬場入りしてからも独特で、うるさいところを見せるよね。でも、それは気が小さいからじゃなくて、ボクが管理した馬の中では一番勇気のある馬だと思う。今日はまさに怪物だったよね」
オサリバン師は今後について、来年3月の日本遠征を挙げました。
そして、来年の香港スプリントで史上初めて3度制覇の偉業を目指します。
「まだまだ走り続けるよ!次走はセンテナリースプリントカップ、そして出来れば日本に遠征して高松宮記念にチャレンジしたい。ドバイには行かないかな。日本馬は手強いけど、短距離戦線は手薄なんじゃないかな」
今日の日本馬の走りも見ながら、どうやら日本馬与し易しと感じたようです。
フランシス・ルイ厩舎のラッキーバブルズは、5月のチェアマンずスプリントプライズに引き続き国際レース2着に涙を呑みました。
5月はオーストラリアのシャトーカに屈し2着でした。
騎乗したブレット・プレブル騎手は直線不利を受けながらのこの走りに最大級の賛辞を送りました。
1着馬との着差はたったの短頭差でした。
「荒れたレースに翻弄されて、思い通りの走りがちっとも出来なかったよ。外にも馬がわんさかいて、全く外に出すことが出来なかった。もっと早く外に出られていたら、おそらく勝っていたと思うね。このレースでもっともデキが良かったのはこの馬さ。現時点で、ラッキーバブルズに勝るスプリンターはいないと思うよ!」
ペニアフォビアは、ここ3年で2着、1着、そして今年は3着。騎乗したシルベストル・デ・スーザ騎手は、
「いいレースをしてくれたよ。いいわけは出来ないけど、勝負どころで思ったよりも早く外からプレッシャーを受けたのが災いしたかな。でも、結果には満足だよ」
エアロヴェロシティ、ペニアフォビアの古豪2頭に割って入ったラッキーバブルズ。
香港スプリント界の層の暑さを目の当たりにしました。
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