飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
5月 1日
春の国際G1シリーズの初戦となるクイーンエリザベス2世杯は、日本代表のネオリアリズムが見事に勝利しました。
日本馬のこのレース勝利は4勝目。
手綱をとったホアオ・モレイラ騎手は意外にもこのQEⅡ初制覇でした。
「こういった大レースを制するってのは格別だね。今まで勝ててなかったレースだから、さらに気分がいいよ。何はなくとも、1番ってのはいいよね」
と、モレイラ騎手は興奮気味に語りました。
最後は叩き合いの中、香港ダービー2着のパキスタンスターとはクビ差、去年の覇者ウェルテルとはそこから短頭差で辛くも勝利をもぎ取ったというところです。
勝ち時計は2分4秒59でした。

レース前はおそらく先行してペースを握るだろうと見られていたネオリアリズム。
しかし、スタートに失敗してしまいます。
モレイラ騎手は後方からの競馬を選択せざるを得ませんでした。
大方の予想を裏切る展開で押し出されるようにペースを握ったのはオーストラリア代表のザユナイテッドステイツ(ブレット・プレブル騎手)。
おっかなびっくりレースを引っ張りますから当然ペースは上がらず、400mごとのラップは、28秒03—26秒77という超スローペース。
後ろに控えていたモレイラ騎手とネオリアリズムはたまらず、残り1000m付近で仕掛けます。
「思ったよりもゲートの出が悪かったんだ」
と、モレイラ騎手は振り返ります。
「僕らだって、先行してペースを握るだろうと思っていたんだけどね。スタートで出遅れちゃったんで、前に馬をおきながら折り合っていこうと思ったんだ。でも、ペースがあまりにも遅くて、行きたがってね。外から早めに仕掛けたんだけど、このとき使った脚はまだトップスピードじゃなかったんだ。だから、直線に向いても粘れるんじゃないかって自信を持っていたよ。その通り、最後までしっかりとした脚だったよね。やっぱりレース序盤にきちんと折り合えて消耗しなかったから、後半の粘りに繋がったのかな」
このときの判断の差が明暗を分けました。
道中の位置取りはほぼ同じ、一頭分内ラチ沿いにいたパキスタンスターは仕掛けで一瞬立ち後れ、残り700mの地点ではまだ4馬身半差の5番手。
この差が最後の最後でクビ差響いた結果となりました。

先頭に立って、ライバルたちの位置取りと脚の残り具合を計りながら追い始めるモレイラ騎手。
その叱咤激励に一完歩ずつしっかりと応えるネオリアリズム。
追いすがるブレイジングスピードとウェルテル、さらにゴール前に飛んできたパキスタンスターの猛追も測ったように抑えてゴールへと飛び込みました
「直線ヨーイドンの競馬になったら厳しいのは分かっていた。だから、早めに動いたんだ。勝利の鍵となったとすれば、そこかな」
と、モレイラ騎手は付け加えました。さらに、
「今日の騎乗のように、堀調教師はレース中何か起こった時の対応に関しては全幅の信頼を置いてくれていたからね。ちょっと早仕掛けだったかなとも思ったんだけど、今回はパーフェクトにはまったね。いやぁ、日本の馬はどこへ行っても強いね」
と饒舌に話しました。

ネオリアリズム自身は前回12月の香港マイル以来の来港。
その時は実力をほとんど発揮できず、9着に敗れてしまいましたが、今回は鮮やかに勝利。
日本馬のQEⅡでの成績としては、2002年と03年を連覇したエイシンプレストン、2012年のルーラーシップに続く4勝目。
堀調教師にとっては、香港には11回出走させて5勝目となりました。
過去17ヶ月でいずれもG1レースで5勝を挙げていて、これは香港競馬史上、海外調教師のG1制覇数第1位となっています。
「12月は相手関係もタフだったからね。それに、この馬は調子を合わせるのがとても難しいんだ」
と、堀師。
「でも、馬自身がその時色々学んだようで、今回の香港入りについては順調に進んだ。馬自身が成長したってことかな」
「モレイラ騎手とはレース前に考えられる展開を複数シミュレーションしながら作戦を練ったんだけど、ホアオ(・モレイラ騎手)はベストの騎乗をしてくれたね。朝の調教に乗って、この馬の特性を把握してくれたようで、それが今回の柔軟な騎乗に繋がったんじゃないかな」

重賞レベルではモーリスを下した札幌記念(G2)で頭角を表したネオリアリズム。
その後、G2中山記念も制し、今回の勝利に繋げたわけですが、今後について堀調教師はすべての選択肢がテーブルの上にあると話します。
「いくつかのオプションがあるよね。国内のみならず、海外もね。まずは日本に帰って馬の様子を確認し、それからどこへ進むかを検討しようと思うよ」
と語りました。

続いては、2着に入ったパキスタンスター。
騎乗したシルベストリ・デ・ソウサ騎手はレース直後、明らかに落胆した表情を見せました。
トニー・クルーズ厩舎で昨今もっとも輝いていたこの上がり馬。
鮮烈なデビュー戦勝利以来、ここ10ヶ月あまりでグンとレーティングを上げてきた、今もっとも勢いのある馬。
しかしながら、今回は最後に鬼脚を繰り出すもあと一歩及ばずの2着。
上がりの400mは21秒95を記録しました。
2016年3月の香港国際セール出身のこの馬。単勝2.8倍の2番人気に推されたこと自体も、地元ファンの期待の大きさを物語るものでした。
レースではいつになくいいスタートで、第1コーナーを回るときにはこのまま先頭集団に行くと思わせるほど勢いがありましたが、デソウサ騎手は馬群の後方に控える方を選びました。
「馬は精一杯の競馬をしてくれたよ。序盤のペースが余りにも遅かった。そして、ペースが上がったときにこの馬は少し立ち後れてしまったんだけど、最後までしっかりと伸びてくれたよ」

3着のウェルテル、騎乗したのはオーストラリアのヒュー・ボウマン騎手でした。
12か月前、大差を付けて快勝したこのコンビ、今回は3着に終わっています。
「ウェルテルには何の落ち度もないよ。レース中盤まで極度のスローペースで、展開がこの馬に向かなかった。直線ヨーイドンの末脚勝負の方が向いていたけど、勝った日本馬が上手だった。そうした展開を封じられたね」
とコメントしました。
スローペースの中、どう展開を読んで仕掛けるか。
各々の騎手の力量が試された一戦でもあったようです。

また、モレイラ騎手はこの日の沙田競馬で1日5勝という固め撃ちを演じました。その勝ち鞍の中には、この日のもう一つの重賞、G3クイーンマザーメモリアルカップ(2400m)をジョン・ムーア厩舎のイーグルウェイで勝ったものも含まれます。
このレースについては明日詳しくご紹介しますね。
33208人の観衆が見守った今回の国際レース。
売り上げは14億3400万香港ドルで、去年よりも6%増となったそうです。


 
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