飯田コージの外はおまかせ！

飯田コージ

1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。

香港競馬通信

11月21日

香港国際レースに向けての最終ステップ、ジョッキークラブレース。
今日は、スプリントです。
短距離戦線は確たる大エースがいるというわけではなく、群雄割拠の様相を見せていましたが、今回ミスタースタニングが勝ったことで本命視されそうです。
このジョッキークラブスプリント（Ｇ２・１２００ｍ）は、馬よりも管理する調教師が注目されました。
普段重賞で注目というとジョン・ムーア調教師ですが、今回は同じジョンでもジョン・サイズ調教師。
去年も含め何度もリーディングトレーナーのタイトルを取っているサイズ師。
イメージとしては下級条件のレースで勝ち鞍を積み上げてリーディングを取るといういぶし銀の調教師なのですが、今回のジョッキークラブスプリントでは珍しく４頭出し。
短距離戦線で豊富な持ち駒を誇示しました。
さらに、結果においても持ち駒のクオリティを誇示し、１着、２着、３着、そして５着と上位を独占。
勝ったミスタースタニングが抜け出したあとは、アメイジングキッズ（２着）とＤＢピンの２着争いの叩き合い、さらに最後方から猛烈に末脚を繰り出したザウィザードオブオズが５着に入りました。

「それぞれみんな素晴らしいレースを見せてくれたね」
と、サイズ師は上機嫌に報道陣に語りました。
「ミスタースタニングは今回人気になったんだけど、それは３週前のレース（プレミアボウル）と同じような展開になったらというものだった。実際は、まったく違うテンポで、それが勝ち馬以外が別の結果になったということだよ。本番まではさらに３週間あるんだけど、もしそこでさらに順調に行ければ、本番でも同じように走ってくれるかもしれないね。この中間はパーフェクトだった。すべてこちらの期待通りに運んでくれたんだ。本当に調教しやすい馬で、何より前向きなんだ。それはジョッキーに対しても同じだね」

華やかなウィナーズサークルの一方で、このレースでは大きな不利が発生し、検量室はピリピリした雰囲気に包まれていました。
レースを引っ張ったペニアフォビア（マシュー・チャドウィック騎手）が直線の入り口残り６００ｍで失速。
単勝２．４倍の一番人気に推されたラッキーバブルズが最内で後退してきたペニアフォビアに前を塞がれ最後方近くまで取り置かれてしまいました。
ラッキーバブルズは直線の間ほとんど前が開くことなく、脚を余しに余してゴール。
先頭のミスタースタニングから５馬身差、１０頭立ての９着と大敗しました。
ここから香港スプリントに向けて巻き返ししなくてはいけませんが、直近の例としてはジョッキークラブスプリントで最下位に終わりながら本番の香港スプリントで勝った２０１４年のエアロヴェロシティがいます。
下馬したザック・パートン騎手は、
「大災害だったよ」
と言葉少なに語りました。

この馬群のもつれを運良く逃れられたのが、勝ったミスタースタニングだったわけです。
騎乗したナッシュ・ラウィラー騎手はこの馬が流れが劇的に変わったときに上手く対応したことが大きかったと指摘しました。
「この馬はまさにスターの実力だよ。今日はスタートが良く、ゲートを先頭で出たんだけど、僕がちょっと抑えて控えさせたんだ。乗っていてその反応の素晴らしさを感じたよ。ペースが劇的に落ちた時、この時に馬群のもつれが不利を生んだんだろうけど、この馬はそれを軽やかに対応してくれたんだ。それで、不利なく走路が開いて脚を伸ばすことができた。残り３００ｍで勝てるなと思ったね。非常に気持ちよく走ってくれたことが、今回の一番の勝因かな」

サイズ師は２００８年のエンズーズド以来のジョッキークラブスプリント制覇となりました。
９度最優秀調教師のタイトルを獲得している名伯楽、サイズ師ですが、香港国際レースは３７度の挑戦で実は１勝しか出来ていません。
２０１３年に香港マイルを勝ったグロリアスデイズただ１頭だけです。
しかしながら、ラウィラー騎手は本番の香港スプリントでも勝てると断言しています。
「サイズ師はどんなタイプの馬でも完璧に扱うことができるし、どんな馬でも彼の手にかかれば良くなっている。ミスタースタニングがそれを示しているよね。少なくとも、この馬は最有力の一頭になると思うよ」

２着には、同厩同士の叩き合いの末、アメイジングキッズが入りました。
騎乗したプレブル騎手は２着に入れたとは運が良かったと語っています。
「素晴らしい走りだったよ。いい末脚を見せてくれた。まぁ、勝ち馬は良すぎたね。２着には入れたのは幸運だった。３着馬は勢いでは勝っていたからね。」

その３着馬は、昨シーズン最もレーティングを引き上げた「最優秀上り馬 (Most Improved Horse)」ＤＢピンでした。
おそらく本番の香港スプリントにも出走するであろう、立志伝中の馬は、今回自身のキャリアで最高の国際Ｇ２で３着でした。
「この馬に乗って、勝てるぞ！と思ったのは今回が初めてだね」
と、騎乗したオリビエ・ダリューズ騎手は語りました。
「この馬のパフォーマンスには満足しているよ。今回と同じようなレースを見せられれば、本番の香港スプリントでもいい勝負ができるんじゃないかな」

いろいろな曰くも付いた今回のレース。
ちなみに勝ち時計は１分９秒３３。このレースが１２００ｍに距離が伸びてから最も遅いタイムでした。