飯田コージの外はおまかせ！

飯田コージ

1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。

香港競馬通信

12月 8日

ＩＪＣが終わった翌日、すでに香港国際レースモードに入っています。
朝の調教が終わったあと、沙田競馬場では枠順抽選会（バリアドロー）が行われました。
当欄でも何度も指摘している通り、小回りの香港競馬は枠順で結果が変わると言っても過言ではありません。
したがって、毎年このバリアドローで各陣営の一喜一憂が大きく報道されます。
今回は、総じて地元香港勢にとって安堵のバリアドローとなりました。
各Ｇ１の前哨戦を制した、ミスタースタニング、シーズンズブルーム、ウェルテルはそれぞれ妥当な枠に収まったようです。
一方、厳しい結果が待っていたのは、世界的な名伯楽、エイデン・オブライエン師やサー・マイケル・スタウト師、それに地元でもトニー・クルーズ師は冴えない表情を見せていました。

オブライエン師は今回５頭を引き連れて遠征してきましたが、７番枠以内に入ったのはたったの１頭。
期待の若駒、マイルに挑戦する３歳馬２頭、ランカスターボンバーとローリーポーリーはそれぞれ１１番枠と１４番枠になりました。
この結果について、オブライエン師の遠征隊長を勤めるパット・キーティングは「失望した」と吐き捨てました。

一方、スタウト厩舎の２頭、スマートコールとポエッツワードは両頭ともに２桁番枠に落ち着きました。
クルーズ師もバリアドローセレモニーを不機嫌な表情で足早に立ち去りました。
彼の管理するゴールドマウント、ビューティオンリーはともに１２番枠に入ったからです。
水曜夜のＩＪＣで優勝したザック・パートん騎手の幸運に期待してくじ引きを託したのですが、そんな験担ぎも霊験あらたかとはいかなかったようです。

対照的に香港をベースとしているジョッキーでもナッシュ・ラウィラー騎手の表情は違っていました。
ミスタースタニングに騎乗予定のラウィラー騎手。
今回は４番枠を引き当て、
「４番か５番が理想的だって思っていたから、４番枠はまさにパーフェクトだよ！」

ジョン・ムーア調教師も同じように満足した表情を見せました。
厩舎の総大将、香港カップに参戦予定のウェルテルが３番枠を引き当てたのです。
「ウェルテルは我が厩舎の、そして香港のフラッグシップだからね。３、４、５番枠がいいって思っていたんだけど、オーナーが３番枠を引き当てたときには信じられなかったよ。本当に素晴らしいくじ運を持ってたね。それに、ネオリアリズムが内にいて、タイムワープが５番枠だから、それらを見ながら競馬ができるのは大きいよ。ウチの馬はペースに左右されるところがあるからね。好位に控えられるのはありがたい。この馬もゲートの出はまずまずだし、道中追走に苦労するようなところはないからね。その点、この枠はパーフェクトだよ」
と、ムーア師は機嫌よく話しました。

香港マイルの地元香港勢の中心にいるシーズンズブルームは５番枠。
騎乗するホアオ・モレイラ騎手にとっても理想的な枠に収まったようです。
管理するダニー・シャン調教師は、
「素晴らしい枠に収まったね。ホアオ（・モレイラ騎手）は馬もコースも、全て知り尽くしているからね。彼は馬をどこに位置取らせればリラックスさせられるかを熟知している。日曜が楽しみだよ！」
と手放しの喜びようでした。
モレイラ騎手と言えば、カップで騎乗する予定のネオリアリズムも好枠を引き当てて満足だったようです。
今年のクイーンエリザベス２世杯を制した日本馬は今回香港カップの１番枠を引きました。

冒頭でも触れたポエッツワードは大外１２番枠。
同じくイギリスからの遠征馬では、ロビンオブネイヴァンが４番枠、ブロンドミーが１０番枠でした。
ロビンオブネイヴァンのハリー・ダンロップ調教師は、
「いい枠を引けたのは幸運だったね。人気するだろう実力馬のすぐ隣だから」
と話し、ブロンドミーのアンドリュー・ボールディング調教師は
「この枠はこの馬には向くんじゃないかな。内枠を引くよりもよかったと思うよ」
と前向きに話しました。

さて、内枠有利というのをここまで強調してきましたが、内枠でもあまり歓迎されないケースもあるようです。
香港スプリント出走のラッキーバブルス（フランシス・ルイ厩舎）は最内１番枠。
いいように見えて、この枠は香港スプリントが１２００m戦になってから１頭も勝ち馬を輩出していないのです。
「また１番枠だよ！前走に続いて。最悪だよ！」
と、ルイ師は率直な思いを叫びました。
たしかに、ラッキーバブルスは前哨戦のジョッキークラブスプリントで同じ１番枠を引き、前が詰まる不利などもあって９着に大敗しています。
「ただ、去年、Ｇ１で同じように内枠を引き当てたけど２着に善戦したことがあったからね。（チェアマンズスプリントプライズでシャトーカの２着）だから、あまり深刻には受け止めていないよ。そもそも、枠を引くときにすでにいい枠は全部埋まってたからね。１番枠じゃなければ、残るは１１、１２、１３。だから、残り物の中では一番マシなのを引いたかな。もちろん、この枠から善戦するには多少の運が必要になるね。ただ、どんなレースであっても勝つには運が必要だからね」
と、複雑な胸の内を明かしてくれました。

同じ香港スプリントに出走するフランスのスプリンター、サインズオブブレッシングは去年の同じレースで１３番枠を引き５着。
今回は５番枠を引き当てました。
「とても、とてもハッピーだよ。去年よりもずっといい。おそらく一番人気に推されるミスタースタニングの隣だから、それをマークしながらの競馬ができる。前々で競馬できるのもプラスだね」

タリスマティックもフランスからの遠征馬の中で有力と分類される一頭。
今回香港ヴァーズに出走しますが、前走アメリカ・デルマー競馬場でブリーダーズカップターフで優勝したときと同じく１番枠を引きました。
これがこの馬の売り出しレースとなったわけです。
オーナーであるゴドルフィンの代理人、リサ・ジェーン・グラファードは
「この枠はアドバンテージがあるだろうし、どんなレースにも順応できる柔軟な馬だから心配してないわ。前に行くにしろ控えるにしろ作戦の選択肢が広がる枠だろうし。アンドレ・ファーブル調教師は明日香港に到着する予定で、到着し次第馬を見てもらって、騎乗するマキシム・ギュイヨンと一緒に作戦を練るつもりよ」

その前走デルマーでのブリーダーズカップターフで３着だったのがハイランドリールです。
２０１５年の香港ヴァーズの勝ち馬は、今回８番枠。
勝ったときより１つ内枠に入りました。
「４〜６枠がいいと思っていたから、まぁ８番枠は許容範囲かな。あと、香港カップについてはドーヴィルとウォーディクリーの枠はまずまずだね」
と、キーティング氏はコメントを出しました。
枠が決まれば、あとは本番を待つのみ。
ボルテージは上がる一方です。