飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
あなたとハッピー
ニッポン放送ケータイ
飯田コージの外はおまかせ!
 
香港競馬通信
12月12日
昨日に続いて香港国際レースの4つのG1レースの結果をご紹介します。
今日は、香港スプリント。
スプリント戦線は、往年の名馬サイレントウィットネスや最近でもペニアフォビア、エアロヴェロシティなどを思い出すまでもなく、香港の得意ジャンル。
ぺニア、エアロが徐々に高齢化し、今年は世代交代がスムーズにいくかどうかも問われて一戦でした。
一番人気、単勝1.9倍に推されたのは、トライアルを連勝して臨んだ5歳馬ミスタースタニング。
この馬が期待に応えてくれれば世代交代になると香港の競馬ファンも見ていました。
ジョン・サイズ厩舎のスピードスターにして、今回の香港スプリントでは地元勢の大将格と見られていた若武者は、見事にファンの期待に応えて国際G1初制覇。
二着には同じサイズ厩舎のDBピンが入りました。

今回のサイズ厩舎は、同じジョンでもジョン・ムーア厩舎と見紛うほどの多頭出しでした。
香港スプリントでは史上トップタイの4頭出し。
そんな力の入った陣営が歓喜したゴール前、ガッツポーズはミスタースタニングを導いたナッシュ・ラウィラー騎手でした。
そして2着には、サイズ勢の中でも単勝21倍のダークホース、DBピン。
鞍上オリビエ・ダリューズ騎手は嬉しいような、悔しいような、複雑な表情を見せました。
というのも、直線に入り伸びていく2頭、その差は半馬身。
しかし、詰まりそうで詰まらないこの半馬身の差をそのまま保って、ミスタースタニングはゴール板を駆け抜けたのです。
最後に少し差を詰めたと言ってもクビ差まででした。
管理するジョン・サイズ師はこれが香港スプリント初制覇。
香港国際レース全体でも2勝目となりました。

10月のスプリンターズステークス(中山)以来の実戦だったブリザード(リッキー・イウ厩舎)が3着、4着には去年の2着馬ラッキーバブルズが入りました。

「この馬は本当のプロフェッショナルで、今回自らの手で、自身が香港No.1スプリンターだと証明して見せたね」
と、下馬したラウィラー騎手は興奮気味に話しました。
レースを引っ張ったのは、古豪ペニアフォビアとワンスインアムーン。
ラウィラー騎手は愛馬ミスタースタニングをそれら2頭を見ながら進める3番手に付けました。
少し離れた3番手でしたが、ラチ沿いぴったりではなく、内には少し余裕がありました。
それは、陣営が事前に考えていた戦略なのでした。
「ラチ沿いぴったりを進むつもりは全くなかったよ。レースの流れはあっという間に変わってしまうし、どこでどう馬群の中に呑まれてしまうかわからないからね。その時に内に余裕があれば対応する余地ができる。内に閉じ込められて脚を余すのは最悪だからね。道中の手応えが良いレースほど、そういった落とし穴にハマりがちなのさ」
「だから、そうだな、1頭分ほど内側に余裕を持たせておいたのさ。外には馬がいて併せる形になったから、展開としては理想的だった。いいリズムで走ってくれていたよ。今回のレースに関しては、先日も競馬の神様がボクらに微笑んでくれていたけど、今回も確かに競馬の神様がボクらを導いてくれたね」
と話しました。
これは何も、ラウィラー騎手が非常に信心深いという意味ではありません。
ラウィラー騎手が言わんとしたのは、木曜に行われた枠順抽選会のこと。
その時ミスタースタニングのクジを引いたのは、ラウィラー騎手でした。
すでにあらかたの陣営が引き終わった後で、箱の中に残っていたのは4番枠と12番枠のみ。
内の4なら理想的、外の12だとそれだけで不利がわかるという究極の二者択一。
そこでラウィラー騎手は見事に4番枠を引き当てました。
では、そのあとに抽選の順番が来て、残念ながら12番枠に入ったのは一体誰だったのか…?
それが、DBピンだったのです。

「もしボクが12番枠を引いていたら、DBピンが4番枠に入っていたわけで、そうなったら1着2着が入れ替わっていてもおかしくない。これを一体誰が差配したっていうんだい?」
と、ラウィラー騎手は神の見えざる手を意識して言いました。
「この馬はいい馬ではあるけれど、決して傑出した馬ではないだけに、本当に好枠を引けたのはラッキーだったよ。だから勝てた!残り50mでDBピンに迫られて、ああ負けるかもと思ったけど、そこから粘ってゴールを駆け抜けられたわけだからね」
「もし神様と話す機会があれば、もう一つ感謝したいのはジョン・サイズ調教師とのコンビで乗るチャンスをもらったことだね。彼は、調教の神様みたいな人だから」
と、各方面への感謝を交えながらまくしたてました。

ミスタースタニングは、香港スプリントへのステップレース、G2プレミアボウルとG2ジョッキークラブスプリントという2つの沙田1200m戦を連勝し、今回人気を集めました。
その2戦で香港スプリント戦線をほぼ平定していましたが、今回の勝利で文字通り頂点に立ちました。
サイズ師は、
「今日はいい感じでレースに入ることができたね。ここ3戦は非常に良かった。調教も調教試験も良かったけど、今日も同じく非常に良かった。そして、この間すべてのレースでいい枠を引けたのも大きかったよね。そして、レース運びも完璧だった。ナッシュ(・ラウィラー騎手)は素晴らしいポジションに馬を導いてくれたよ。あそこに位置取れれば、この馬はそう負けないよ」
そして、2着に善戦したDBピンについては、
「あの枠からだと、かなり脚を使わないと優勝争いには絡めない。それを考えると、この馬も本当によく走ってくれたと思うよ。2頭とも、最大級の賛辞を贈りたいね」
と慰めました。

ラウィラー騎手にとって、今回の勝利は2014年、豪州ランドウィック競馬場のオールエイジドSを日本のハナズゴールで勝って以来のG1勝ちとなりました。
「これまでマカオダービーを勝ったことはあったけど、国際G1の勝利はなかったからね。今回の勝利は格別さ。興奮しているよ!」
と、喜びを爆発させました。そして、
「何と言っても家族に感謝したい。家族はボクのすべてだし、ボクの最大のサポーターなんだ」
と語りました。

一方の2着DBピン。
直線半ばでは一瞬先頭に立とうかという勢いを見せましたが、その後伸び悩みました。
これがG1初挑戦だったDBピンですが、そのデビューは複雑な味がしました。
「ガッカリなような、ハッピーなような…。勝てる手応えだったんだよ」
と、ダリューズ騎手は口を開きました。
「前走はこの馬の実力をすべて発揮することはできなかったんだけど、今回は強力な勝ち馬を相手にいいレースをしてくれた。すべてを出し切ってくれたよ」
と、最後は吹っ切れたように話してくれました。

サイズ師はミスタースタニングの今後について、基本的には香港国内のレースを使っていく方針を明らかにしました。
すなわち、1月のセンテナリースプリントカップ(1200m)、そして4月のチェアマンズスプリントプライズ(1200m)が当面の目標となるようです。
「まだ、長距離輸送に耐えられるかどうかの自信がないんだよね。そこまでタフなのかどうか…。地元香港にいればきめ細かく世話ができるし、引き続きいいレースができるんじゃないかな」

サイズ勢の残り2頭、アメイジングキッズは5着、ザウィザードオブオズは7着にそれぞれ入りました。
勝ち時計は1分8秒4。このタイムは2013年に日本のロードカナロアが2連覇した時と同じタイムで、香港スプリント史上歴代首位タイの好タイムでした。


 
前のページ 最新のページ 次のページ
 
 
  ニッポン放送トップページ夜の番組ページ
Copyright © 2012 Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.