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飯田コージ |
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。 |
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香港競馬通信 |
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1月30日 |
ここ15年ほど、香港競馬の中心で世界へと羽ばたいてきたのはスプリンターが中心でした。
古くはサイレントウィットネス、セイクレッドキングダム、最近では日本にも遠征してきたエアロヴェロシティなどが挙げられます。
スターが入れ替わるだけでなく、その脇を固める馬たちも含めて層の厚い香港スプリント戦線。
このところは、ジョン・サイズ厩舎が俄然注目を集めています。
個人的にはサイズ厩舎というと、条件戦でコツコツと勝ち鞍を集めてリーディングを獲るという印象で、G1戦線で目立つ印象があまりなかったんですが、このところは名伯楽の復権が進んでいるようです。
先週末の年明け初G1ウィーク、昨日紹介したスチュワーズカップと並んで行われたセンテナリースプリントカップ(1200m)でもサイズ勢の存在感が他を圧倒していました。
何とワン・ツー・スリーを独占。
勝ったのは、今シーズン期待されながらあと一歩重賞に手が届かなかったDBピンが、オリビエ・ダリューズ騎手のガイドで念願のG1初制覇となりました。
DBピンは、前走香港スプリント(1200m)で同じジョン・サイズ厩舎のミスタースタニングのクビ差の2着でしたが、今回は1着2着が逆転。
同じくクビ差で2着にミスタースタニング。
そして、2着同着でこちらもサイズ厩舎のビートザクロックが入りました。
勝ち時計は1分9秒64です。
「この馬は非常に堅実に走るうまでね」
と、サイズ師はDBピンを紹介してくれました。
「とても素直な馬で、勤勉でもある。何よりも走るのが好きなんだ。レースを経る毎に状態が良くなっていくからね。今シーズンは特にそう。もともとテンのスピードは速い馬だったんだけど、今シーズンは折り合って進むことを覚えたんだ。ダリューズが教え込んでくれてね。そこからリズム良く走れるようになったし、何よりエネルギーを上がりの400mに集中させることができるようになった。勝ちパターンを確立することが出来たってわけさ」
今年45歳のベテラン、ダリューズ騎手にとっても、今回の勝利は待ちに待ったものでした。
G1勝利は2014年の10月、サンタアニタスプリントチャンピオンシップ(1200m)をリッチタペストリーで制して以来3年4か月ぶり。
ここ香港での大レース制覇は、2013年にイーグルレジメントで当時は直線1000mだった同じセンテナリースプリントカップを制して以来となります。
「ボクにとって非常に大きな勝利だよ。クラス5の馬ばかりに乗っていて今年G1獲れるぜって言っても説得力がないよね。香港はとても厳しい競争環境で、ボクはもう古株に属するから、みんな新顔を試すのが好きでボクなんか見向きもされない。もちろん、そういう環境なだけで悪気があるわけじゃないのは分かってる。ボクはマイペースでやるしかないし、事実それを楽しんでいるよ。今回みたいにチャンスが巡ってきたら、全力でやるのみさ」
「DBピンにボクが乗るようになってから、ジョン(・サイズ師)は状態を良い方に持っていってくれていたんだ。12月の香港スプリントはとてもいい競馬だったし、今日に関しても乗せて欲しいって熱望していたんだ。この馬は、非常にいい方向に進んでいると思うよ」
DBピンは8番枠からいいスタートを切りましたが、そこからダリューズ騎手は馬を中団後ろから3頭目に付けました。
古豪ペニアフォビアが引っ張る淀みないペースの中、折り合いに専念する形になったわけです。
「レース前ちょっと枠順は厳しいなって思ったけど、ジョン(・サイズ師)はこの馬のことを知り尽くしているからボクにも完璧な作戦を授けてくれたんだ。スタート直後はピタリと折り合えて、前を見ながらいい位置で控えることができた。直線に入って、2着3着は拾えるなとは思ったけど、勝てるとまでは確信できなかった。残り200mでようやく前を捉えることが出来たからね」
と、直線最後まで半信半疑だった胸の内を明かしてくれました。
DBピンはこれで、3月31日に中東ドバイで行われるG1ドバイゴールデンシャヒーン(1200m)への挑戦権を獲得しました。
サイズ師は中東遠征についても、今後の目標の一つと前向きにとらえています。
「どうしたら遠征できるのかを考えているんだ。今回の勝利でレーティングが上昇して遠征できるまでになった。もはやこの馬は高レーティングのスプリンターだからね。レースでも十分に勝負になると思うよ」
と、サイズ師は手応えを語りました。続けて、
「あのレース(ドバイゴールデンシャヒーン)はダート(ポリトラック)だよね。この馬は香港のダートでも勝ったことがあるから、遠征を現実的に考えているんだ」
と鼻息も荒くプランを語りました。
主戦のダリューズ騎手はリッチタペストリーとのコンビで世界中のダートコースを転戦した経験の持ち主。
そんな彼も、DBピンのダート適性には太鼓判を押します。
「この馬のいいところは堅実なところだと思うんだ。ボクは調教師じゃないから断言は出来ないけど、この馬はドバイに遠征してくれると思っているし、遠征するならダートだと思ってる。何度もいいダート馬に乗ってきた経験からすると、この馬は非常にそれに近い感触を持っているよ。ボクの乗ってきた馬と同じかそれ以上なんじゃないかな」
一方、サイズ師は同じくらいの賛辞を単勝1.8倍の一番人気に推された僚馬ミスタースタニングと若武者ビートザクロックにも送りました。
ビートザクロックは上がりの400mが21秒53を記録。
このタイムは今シーズン2番目に速い記録で、1位は同じ日にG1スチュワーズカップを勝ったシーズンズブルームが9月に記録したものでした。
「ミスタースタニングを誰が批判できるって言うんだい?ここまで香港と世界のトップスプリンターを向こうに回して3連勝。それだけでも素晴らしい快挙さ。今日、彼は勇敢な敗者だった。誠実で、常に全力を出しきる気高い馬。だから、ボクはこの馬に称賛を惜しまないよ。いつもね」
と、まずは厩舎のエースを持ち上げ、
「ビートザクロックはまだ4歳で、周りの馬と比べても少し若いんだけど、素晴らしい才能の持ち主さ。あとは、この先の12ヶ月でどれだけ成長できるかだね」
と、次世代のホープにも期待を寄せました。
ミスタースタニングに騎乗したナッシュ・ラウィラー騎手は、今回の結果についてレースの流れ上やむを得なかったと釈明しました。
「馬自身は素晴らしい競馬をしてくれたよ。前を行ったブリザードが思いの外粘っていたので、おそらく理想よりは一瞬早くゴーサインを出しちゃったんだね。自分でもちょっと早いかなと思ったんだけど、その分最後の50mで伸びが止まっちゃったね。ただ、馬は全力を尽くしてくれた。素晴らしいレースだったよ」
と称えました。
香港のスプリント戦線は、しばらくジョン・サイズ厩舎を中心に回っていきそうです。
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