飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
3月19日
今年の香港ダービーは鮮やかな末脚が印象に残るレースでした。
ライアン・ムーア騎手の𠮟咤激励に応えるように脚を延ばしたピンハイスターが最後方から一気の追い込みで見事栄冠を掴みました。
ライアン・ムーア騎手は香港ダービー初制覇です。
「この馬は素晴らしい才能の馬で、今日はボクも乗っていて楽しかったよ」
とムーア騎手。
ゴールでは2着のシンガポールスリングに1馬身4分の3差をつけて堂々たる走りでした。
勝ち時計は2分1秒18。このタイムは、香港ダービーが2000m戦になって19年で最速のタイム。
14頭立ての最後方、逃げたザゴールエンエイジから離れること11馬身ありましたが、残り800mから始動。見事に前を捉え切りました。
最後から2番目の2ハロン、つまり残り800mから400mの間の2ハロンではメンバー中唯一23秒を切り(22秒91)、上りの2ハロンは21秒99で纏めました。
計算すると、上り4ハロン(800m)は44秒9という鬼脚!
上り400mでメンバー中2番目に速かったエクサルタントよりも0.27秒も速いタイムでした。
「あんなに離れた最後方だなんて、事前の作戦通りじゃ全くないよ!」
と、ムーア騎手は明かしました。
「でも、乗っていて手応えは抜群で自信はあった。レース前から、このメンバーなら負けないって思っていたし、それを証明できたかな。この馬は本当に素晴らしい末脚を持った馬で、体格もいいし、切れ味抜群の強い馬。1月にこの馬についてある人が、2000mも何の心配もないって背中を押してくれたんだ」

管理するジョン・サイズ調教師にとっては、2012年フェイフェイ、15年リューガーに続く3度目の香港ダービー制覇となりました。
「こんなに鮮やかなダービー制覇はそうないよ。もともと素質はG1級だと思っていたんだけど、今日はそれを証明できたよ」
と、サイズ師は語りました。
ピンハイスターは今年の4歳クラシック戦線最後の最後の香港ダービーを制したわけですが、これまでは目立たない存在でした。
ライバルたちがクラシック戦線でしのぎを削っている間、管理するサイズ師は虎視眈々とこのクラシックのフィナーレに照準を合わせつつ、1400mのハンデ戦で勝ち鞍を積み重ねていました。
それまでのセオリーで言えば、マイルやそれ以上の距離を勝っていないとダービー馬にはなれないといわれていましたが、あえてそれに逆らったのです。
ただ、実際にはサイズ師も1月の時点ではこの馬はマイル戦線を歩ませる気でいて、ダービーに向かうというのは最優先事項ではなかったようです。
その方針が急転換したのは、ダービー2週前の鮮やかな勝利でした。
「前走の勝利を見た時に、この馬ダービー行けるんじゃないかって思ったんだ。この時も最後方からの直線一気。道中もしっかりと折り合って、最後までしっかりと伸びてくれたからね。気がかりな点は、経験のない2000mへの距離延長で、果たしてこの馬のスタミナが持つのかという点だけだったね」
と、決断の背景を語ってくれました。続けて、
「ただ、ハッピーバレーでのバリアトライアル(実戦形式の発馬調教試験)で心配ないという結論に達したんだ。動きも何もすべて満足だったからね。あとは、本番のレースの流れが向いてくれればと思っていたんだけど、これもこの馬に向いてくれたね」

陣営の望んだレース展開で、末脚を伸ばすピンハイスターを前にして、香港クラシックカップのワンツー、シンガポールスリングもエクサルタントも色を失いました。
香港クラシックマイル馬のナッシンギライクモアに至っては、11着と馬群に沈んでしまいます。
さて、ピンハイスターの今後についてサイズ師は、
「今後については、これから考え始めるという感じだね。この馬の身体にどんな反応があるのか、そしてどんなステージがこの馬に向いているのか、すべてはこれからだよ」
と話しました。

一方、差し切られた形になった2着のシンガポールスリング。
騎乗したチャド・スコフィールド騎手は直線の入り口では勝利を確信していたようです。
「道中は目論見通りのいいレースをしてくれて、ゴーサインを出した段階では勝てると思ったんだ。でも、ピンハイスターの末脚は正直想定外だった。今日は完敗だね」
管理するトニー・ミラード調教師も、ピンハイスターの末脚には脱帽といった表情でした。
それだけに、負けはしましたが愛馬の戦いぶりには満足だったようです。
「シンガポールスリングは素晴らしいレースをしてくれたよ。ボクは満足だ。この馬は他のすべてのライバルたちを負かしていた。勝利はすぐそこにあった。そうしたら、目の覚めるような末脚の馬が突然現れたんだ。思いつくすべてのライバルを下したけれど、ピンハイスターだけは想定外。まったく、信じられない末脚だよ」
と、半ば呆れるように話しました。

3着に入ったエクサルタントは、道中ピンハイスターの1頭前に控えていました。
ということは、勝ったピンハイスターと同等の末脚を繰り出したわけですが、及ばず。
手綱を取ったザック・パートン騎手は「いい競馬だった」と短く言い残して検量室を後にしました。

4着には、2馬身半差でジョン・ムーア厩舎のルースベン。
こちらは単勝22倍の人気薄でした。手綱を取ったダミアン・オリバー騎手は、
「残り200mではチャンスがあるぞって思ったんだけど、それは一瞬だった。前の3頭はやっぱり実力が違うね」
と素直に負けを認めていました。

最後に、単勝4.1倍に推された香港クラシックマイル馬、ナッシンギライクモアにも触れておきましょう。
レーティング評価はメンバー中1位だったのですが、距離延長がこの馬にはマイナスに働きました。
「道中はチャンスがあるかなって思ってたんだけど、距離の壁を越えられなかったね」
と、騎乗したホアオ・モレイラ騎手。
「残り600mで手応えが無くなってこれ以上は伸びないと悟ったよ。あとは宥めてもスカしてもダメだった。結局、競馬にならなかったね」
と力なく話しました。
この日の沙田競馬場は67205人の観衆を集めました。1日の売り上げは新記録の16億2600万香港ドルでした。


 
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