飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
10月23日
昨日のことは変えられないし、明日のことはわからない。ただ、今日を生きるのみ。
サム・クリッパートン騎手はそうして日々を悪戦苦闘してきましたが、週末のG2プレミアボウル(1200m)ではようやく光明が差しました。
香港専属ジョッキーになった初年度は40勝を挙げて彗星の如く登場したくりっパートン騎手でしたが、昨シーズンはわずか18勝と期待を裏切りました。
そして迎えた今シーズンはさらに闇の中に入り込み、昨日の開催前の時点でわずか1勝…。
スランプの中迎えたのが、プレミアボウルだったのです。
ジョン・サイズ調教師からチャンスをもらった24歳の若武者は見違えるような騎乗を見せ、ホットキングプローンを鮮やかな逃げ切り勝ちに導きました。

人気を集めたのは香港短距離界のエースと目されたアイビクトリー(133ポンド)でした。
ザック・パートン騎手を背にスタート直後からホットキングプローンをマークするように外の2番手に付け、盤石の体制を作ったかに見えました。
対して先頭に立ったホットキングプローンは内の経済コースをスイスイと進み、最後までしっかりと末脚を伸ばしての逃げ切り勝ち。
香港デビュー以来8戦して7勝としました。

残り300mで失速したアイビクトリーに代わりホットキングプローンを猛追したのは同じ133ポンドを背負ったミスタースタニングでした。
ただ、ハンデ差もあり、またクリッパートン騎手の必死のステッキさばきに応えるホットキングプローンがさらに伸びるのでなかなか差が詰まらない。
そのうち、最終盤で128ポンドを背負ったフィフティフィフティが飛んできて、勝ち馬から1馬身4分の1差2着に入りました。
ミスタースタニングは最後まで伸びましたがゴール前で力尽き、フィフティフィフティから1馬身4分の1差を付けられましたが踏みとどまり3着。
4着には伏兵ボーンインチャイナが入っています。
人気を背負った馬たちでは、ピンウースパークがブービーの9着、一番人気のアイビクトリーは何とも不可解な最後方、10着に大敗しています。

ゴールの瞬間、何度もガッツポーズを繰り返したクリッパートン騎手。
満面の笑みで検量室に戻ってくると、香港での勝ち鞍としては自身最高のG2勝利だっただけに記者団の取材に饒舌に答えてくれました。
「故郷オーストラリアでは最高の瞬間というのがいくつかあったけれど、今回は香港に移って以来最大の勝利で、とても満足だよ。ジョン・サイズ師のように我慢強く使ってくれた関係者には感謝の言葉しかないね。何と言っても片手に収まるくらいしか勝っていないボクを乗せ続けてくれたんだから。サイズ師との仕事では、3度G1レースで2着、日本遠征にも連れて行ってくれた。いつか恩返しをしたいと思っていたので、今回勝利をプレゼント出来て本当に良かったよ!」
と、サイズ師への感謝を繰り返していました。

たしかにホットキングプローンは2着フィフティフィフティよりも6ポンド、3着ミスタースタニングとは11ポンドハンデが恵まれていました。
しかしながらクリッパートン騎手は、ホットキングプローンはまだまだ良くなる余地があり、別定戦の次走G2ジョッキークラブスプリントや定量戦のG1香港スプリントでも十分勝負になると強調しています。
さらに付け加えて、
「レース前、外枠に入ったんでどれだけテンの速い馬が内にいるのか、どうしたら外から先手を奪ってスムーズな競馬が出来るか心配だったんだ。でも、ホットキングプローンは加速もゲートから出てすぐにトップスピードに至れるぐらいスムーズだし、まぁ杞憂だったね。素晴らしいスプリンターだよ」
と愛馬を手放しでほめました。そして、少し冷静になって詳細にレースを振り返り、
「ゲートを出て100m足らずで7番枠から最内まで切れ込んでいって、そこからは本当に順調そのもの。むしろ少しブレーキをかけて息を入れようとしたほどだった。この手応えなら、後続はおいそれと追いつけないぞと思いながら乗っていたね」
と語りました。

次に、3着に入ったミスタースタニングについて、騎乗したカリス・ティータン騎手は、
「シーズン初戦としては十分すぎるレースだったよ」
と評価しました。ここで叩いて12月を迎えればピークに達すると手ごたえを感じたようです。
これとは対照的に、一番人気アイビクトリーに騎乗したザック・パートン騎手は
「ガッカリだよ…」
と呆然としながら声を絞り出しました。
「道中は勝ち馬を外でマークしながら、本当に順調だったんだ。それなのに、直線でゴーサインを出したら手応えが全くなくなっていたんだよ」
と、まるでお化けにでもあったかのような表情で語りました。
このアイビクトリーもホットキングプローンと同じサイズ厩舎。このところサイズ厩舎のスプリンターは豊作で、この2頭に加えてDBピンとビートザクロックも来月のジョッキークラブスプリントに進む予定です。
ただし、次走のホットキングプローンの鞍上にクリッパートン騎手が起用されるか、サイズ師は明言を避けました。
新しい厩舎専属ジョッキーがサイズ厩舎に加わるかどうかも含めて、すべてまだ白紙の状態とのことで、クリッパートン騎手の身の振り方もまだ宙ぶらりんとなっています。
「ホットキングプローンで勝つことができた。それがすべてさ。今後については関係者が決めることだし、ボクが出来るのは一生懸命仕事をして、ジョン(・サイズ師)の信頼に応えることだけだよ」
と、クリッパートン騎手。続けて、
「ボクには他の騎手を気にするような余裕はないんだ。たしかに、ホアオ・モレイラとジョン・サイズの間にはたくさんの成功事例があって、それはボクとジョンの間とは比べ物にならない。だけど、ボクが出来るのは一戦一戦のチャンスに全力で当たることだけさ。前へ前へだね」
とキッパリと語りました。

実は、クリッパートン騎手の騎乗免許は半年間有効。それゆえ、次にビッグレースで勝利すれば免許の更新に非常に有利になります。
「もちろん、できることなら(免許の期限が来る)2月以降も香港に居たいよ。でも、今は半年間の契約であることがすべてだから、この期限まで全力を尽くす以外にないよね。今日は本当にボクにとって大きな一日だった。G1で勝負するのに足りないものが何かもわかったような気がする。今はこの喜びに浸っていたいね。忘れられない一日になったよ」
さて、24歳豪州の若武者は今後どうなっていくのか?今日のレースで腕が立つことは証明できましたが、それだけでは騎乗馬が増えないのがここ香港の難しいところです。


 
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