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サンデー早起キネマ『ラブレス』

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『ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町』では、毎週、とっておきの映画のご紹介とチケットなどのプレゼントをしていますが、番組ではご紹介しきれない面白い映画も沢山あります。

そこで、番組のこのブログサンデー早起キネマ?』で少しずつご紹介しています。

今回はとても切ないロシアの映画『ラブレス』
切ないというよりも心にぽっかり穴が空いたような虚無感さえ感じます。

 

主人公は、一流企業で働くボリスと美容サロンを経営するジェーニャ夫妻。
2人は離婚協議中で、既にそれぞれ別のパートナーがいます。早く幸せな新しい生活に入りたいのですが、問題は12歳の息子アレクセイ。どちらが引き取るかで言い争い、罵り合っています。その両親の口論を、隣の部屋で耳を塞ぎ泣きながら聞いていたアレクセイは、ある朝、学校に行ったまま行方不明になってしまいます。
今度はそれをネタに罵り合う2人。しかし探さなければなりません。自分たちの未来のために!2人はボランティアの人々の手も借り、必死で息子を探します。アレクセイは無事に戻ってくるのでしょうか…

監督はロシアの鬼才アンドレイ・ズビャギンツェフ。

全体的にとても綺麗なロシアの自然の映像が印象的です。
でも、枯れ木と雪…全体的にグレーがかって色がありません。

対照的に、家の中や生活はとても現代的でおしゃれに描かれています。
身勝手な親と哀れな子供を対照的に描いているかのようです。

この映画で初めて知ったのはロシアの捜索救助ボランティア団体の存在でした。
映画の中ではもちろん架空の部隊ですが、ロシアに実在する「リーザ・アラート」という団体をもとにしています。行方不明者や危険に陥った人々を捜索するボランティア団体で、特に子供の捜索に献身的に携わっているそうです。
「多くの子供たちが劣悪な家庭環境から逃げたり誘拐されたりして行方不明になっている反面、警察や役所はおざなりな対応しかしてくれないので助けにならないという現実から生まれた現象」とロシア文学者の沼野充義さんは『ラブレス』の資料に書いています。

グレーの林の中で「アレクセイ〜!」と大声で規則的に呼ぶ声と一生懸命捜索する隊員の鮮やかなオレンジのベストが、この映画の唯一の光となっています。
『ラブレス』…単に愛のないと言ってしまうには、奥深すぎる味わいのある映画です。

愛されない息子アレクセイの悲しい瞳と、幸せを求めるあまり愛を失なってしまった身勝手な両親の横顔…観た後は、心の何処かにずっと何かが引っ掛かっているような気分になります。

 

失踪した「愛せない息子」。その行方を追う身勝手な両親が見つけるのは、本当のあいか、空虚な幸せか…

『ラブレス』は4/7から全国ロードショー。

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