放送局・放送日時
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今回のゲストは、馬術の高嶋活士(たかしま・かつじ)選手です。
馬術は、肢体不自由と視覚障害の方が対象で、パラリンピック競技としては唯一、動物と一緒に行う競技です。
障がいのレベルによるクラス分けは、障がいの重いグレードⅠから、障がいの軽いグレードⅤまで5段階に分かれています。
高嶋選手のクラスは、障がいが軽い方から二番目のグレードⅣ。
試合では、常歩(なみあし)・速歩(はやあし)・駈歩(かけあし)といった全部の課題を行います。
パラリンピック競技の馬術は「馬場馬術」という種目のみで、イメージとしては「フィギュアスケートのような、馬をダンスをするようなきれいな技をする競技」だといいます。
インディビジュアルテストと呼ばれる個人種目で上位になった選手のみが進めるフリースタイルテストでは、音楽を用いて競技が行われます。
自分のやる演技に合った音楽をそれぞれの選手が用意するのですが、高嶋選手は昨年頃まで自分で好きな曲を選んで繋げて(試合の演技で行う)動きに合わせた音楽になるように編集していたそうです。
ただ、音楽も芸術点として評価されるため、最近では専門の方にお願いしている…とのことです。
主には、馬の動きとよく合うクラシックを選ぶ選手が多いといいますが、声が入っている曲も可能になったことで、今ではJ-POPなどすべての曲が使えることになりました。
ちなみに、高嶋さんは現在、映画「アイアンマン」の力強い楽曲を使用しているそうです。
採点競技である馬術。試合では、基本的に3箇所に審判が立っていて、各審判の得点の平均値がポイントとなります。
高得点を出すためには、「決められた動きをきれいに正確にやっているか、馬が元気に動いているのか…」といったチェック項目がいくつもあり、その一つ一つできっちり得点を挙げていくことが重要です。
「馬がストレスを感じながらやっていないか」という項目では、馬の耳の動きまで見られたりするそうで、ふだんからのコミュニケーションがとても大切となります。
高嶋選手のパートナーである愛馬の名前は“ケネディ”。
アメリカ生まれかと思いきや、ドイツ出身の馬ということでした。
甘いものが大好きで、高嶋選手はケネディによく氷砂糖をあげているそうです。
高嶋選手は、2011年に日本中央競馬会所属の騎手としてデビューして活躍していましたが、レース中の落馬により重症を負い、右半身にまひが残りました。復帰に向けてリハビリに励みましたが、その思いは叶わず、2015年に引退。
その後、パラリンピック競技である馬術を始め、現在は、東京2020大会出場を目指しています。
「騎手だった頃は競馬の乗り方をしていましたが、(事故により)一気に自分の体も変わって、それまでとは全く別の乗馬に切り替えたので、いろいろな戸惑いがありました」
馬術を始めた頃の状況をこう振り返る高嶋選手。
その中でも一番苦労したのは姿勢だといいます。
競馬では体を前に倒す前傾姿勢でしたが、乗馬はぴしっと背筋を伸ばした格好が求められます。
スピードが上がってくると、どうしても姿勢がちょっと前に倒れてしまうことがあったそうです。
そして、競馬では、馬をまっすぐ・速く・きれいに走らせるのが基本ですが、乗馬の場合は横方向(斜め前)に動かしたり、後ろ足を軸に回転させたりするため、そこをどうクリアしていくかが課題でした。
障がいがある中で、馬をいかにきれいに格好よく動かすかを、それぞれの選手が工夫しています。
高嶋選手はそれが馬術の魅力だといい、馬のきれいな動きにも注目してほしいと話しました。
6月7日(金)~9日(日)には、静岡県・御殿場市馬術スポーツセンターで『CPEDI3★Gotemba Summer 兼 JRAD国内競技会 PartⅡ』という国際基準の大会が開催されます。
2020年につながる大切なこの大会に向けて「気合いは、だいぶ入っています!」と意気込みを語った高嶋選手。
人馬一体となった演技が魅力の馬術。ぜひ一度、観戦に訪れてみてはいかがでしょうか。
高嶋活士選手のリクエスト曲:スロウレイン / ACIDMAN
競技の前に心を落ち着かせるために聴いている曲だそうです。
次回も高嶋選手をゲストにお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに!
今回も、日本パラ陸上競技連盟会長の増田明美さんをお迎えしてお送りしました。
増田さんは現役引退後、スポーツジャーナリストとして活躍されています。
そのきっかけとなったのは、自身最後のレース、引退しようと決めて臨んだ大阪でのラストランでした。
レース中に疲労骨折を起こしてしまい、ゴールまで辿り着けなかった増田さん。
翌日、病院に行くと足に7箇所の疲労骨折があったことがわかりました。
日本記録を出していた10代に生理がとまり、それを放っておいたため成長を妨げることになり、現役生活後半にその影響が出てしまったのです。
当時、増田さん以外にもそのような問題を抱えた選手がたくさんいたため、ご自身の失敗や良かったことを、スポーツライターとして書いて伝えていきたいと思われたそうです。
昨年6月、増田さんは日本パラ陸上競技連盟の会長に就任しました。
「一番の応援団長でありたい」と抱負を述べた増田さん。
オリンピック競技と比べて、パラスポーツはまだまだ良いとはいえない環境にあり、例えば、海外に遠征して経験を積みたくても資金面の問題で限界があったり、2012年のロンドンパラリンピックで大成功を収めたイギリスでは、パラスポーツ(陸上)の大会で3万人の観衆がスタジアムを埋め尽くしましたが、日本では300人くらいしか競技会場に観客がいないという現状もあります。
そのような状況を現役アスリートから聞いて知っていたため、自分にできることがあれば、選手のために頑張りたいと思い、引き受けることを決心されたといいます。
「選手たちと一緒にいると楽しいですね。パラスポーツの選手たちは本当に明るくて面白いです」と楽しそうに話す増田さん。
選手に寄り添う中で「障害や壁を乗り越えた強さや、突き抜けた明るさをみんな持っている」と感じていらっしゃるそうです。
日本陸上競技連盟の会長と増田さんが旧知の仲ということもあり、最近では、静岡国際陸上など、男子100mの桐生選手といったオリンピックを目指す選手が出場する大会にパラ陸上の種目も組み込まれるようになりました。
これも、増田さんが会長に就任されたことによる大きな功績です。
会長として、今後の目標について「2020年に向けて観客も増えるように、もっといろいろな大会を盛んに行ってもらえるように頑張りたい」と語りました。
6月1日(土)と2日(日)には、大阪の長居陸上競技場で「第30回 日本パラ陸上競技選手権大会」が開催されます。
「2020年が近づいているので、みんな躍動感がある」と話す増田会長。
男子100m(下腿切断などのクラス)の井谷俊介選手と佐藤圭太選手のライバル対決や、世界レベルの走り幅跳び・山本篤選手、400mの重本沙絵選手、そして、車いすの選手もベテラン勢に加え若い選手も育つなど、見所満載だといいます。
最近では、会場に体験コーナーがあり、陸上競技用の車いす、レーサーに実際に乗ることもできます。
「体験してから見るとより面白く競技を見ることができます。ぜひ足を運んでくれたら嬉しいです」とメッセージをいただきました。
最後に、上をめざして進もうとする方に伝えたい“Going Up”な一言を伺いました。
『知好楽(ちこうらく)』
「ある一つのことに一生懸命取り組んだ時に、そのことをよく知っていることは素晴らしいけれども、好きでやっている人の方が優っている、好きでやっている人よりも楽しんでやっている人が、一番良い結果に繋がる」という意味が込められているそうです。
「ご自身が出場した84年のオリンピックは、マラソンを良く知っているということだけで終わってしまったので、途中棄権してしまったと思う。今の選手たちはすごく楽しんではいるけれど、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは母国開催のプレッシャーに負けることなく頑張ってほしい」とエールを送りました。
増田明美さんのリクエスト曲: Don’t Stop Me Now / QUEEN
次回のゲストは、馬術の高嶋活博士選手です。どうぞ、お楽しみに!
今回のゲストは、パラ陸上競技連盟会長・増田明美さんです。
増田明美さんといえば、女子マラソン界を語る上で欠かせない存在です。
成田高校在学中に長距離種目で次々と日本記録を樹立し、高校3年生の時に出場した初マラソンで当時の日本最高新記録をマーク。1984年にはロサンゼルス五輪に、日本代表として出場しました。
1992年に引退するまでの13年間で、日本最高記録12回、世界最高記録を2回更新されました。
子どもの頃から心肺機能が人一倍強く、小学生の時、運動会で短距離走では真ん中くらいだったものの、小学4年生のときに入った駅伝チームでは6年生より速かったといいます。
現役時代、調子がいい時は走れば日本記録。ずっと走っていられると思うくらい疲れも感じなかったそうです。
あれこれ考えず、1km 何分などと時計とにらめっこしている間にいつのまにかゴールに着いてしまったというときには記録がよく、日本記録が生まれていたそうです。
体感時間としても、あっという間で、2時間走ったという感覚ではないと話します。
ただし、調子が悪い時は最悪で、やめたいくらい苦しかったと振り返ります。
そういう時には景色ばかり見ていて、あんみつ屋さんがあった、ゴールしたら絶対ここに食べにこよう、等と楽しいことばっかりを考えてしまっていたそうです。
現役を引退してからは、スポーツジャーナリストとしてマラソン解説でも活躍されています。
増田さんといえば、選手たちの小ネタやプライベートなエピソードを入れる解説で有名ですが、それでも、予め準備していた小ネタの5分の1くらいしか披露していないのだそうです。
その小ネタをたくさん用意できるのは、増田さんが足繁く現場に足を運んでいるから。
以前、永六輔さんに「たくさん現場に行って五感で感じなさい」とアドバイスをもらい、それからずっと心がけているということです。
ただ、解説中に小ネタが多すぎて、たまにアナウンサーにスルーされることもあるそうで、実況の裏で、静かなバトルが繰り広げられていることもあるそうです。
リスナーのみなさん、ぜひ今度はそのあたりも気にしながら、増田さんの解説を聞いてみてください。
そんな増田さんが解説を担当した本が出版されています。
「復刻新装版 ランニング」金栗四三・箸(時事通信社)
これは、現在、放送されている大河ドラマ「いだてん」の前半部分の主人公、日本マラソン界の父と称される金栗四三さんが、未来の後輩(長距離やマラソン選手)たちのために実体験をもとに書いたもの。
今から100年も前に、金栗さんが現役時代(25、26歳の頃)に感じていたこと、例えば、「畳の上ばかりで生活していると足が短くなってしまうので椅子を使いましょう」などといった事が書かれており、当時の陸上界のことや金栗さんを知るうえで面白い本だということです。
鈴木亮平さんも「歯を大事にしなければいけないとか、胃腸を大事にしようとか、(金栗さんが)ここまで考えていたということに驚いたし、それを、現代の陸上界を知る増田さんが解説しているのが面白くて興味深かった」と感想を口にしていました。
ぜひ、リスナーのみなさんも手にとってみてくださいね。
次回も、増田明美さんをゲストにお迎えしてお送りします。
どうぞお楽しみに!
増田明美さんのリクエスト曲: 夢をあきらめないで / 岡村孝子