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2020年11月13日
義肢装具士・沖野敦郎さん (1)

11月7日(8日)の放送では、義肢装具士の沖野敦郎(おきの・あつお)さんをゲストにお迎えしてお送りしました。

 

義肢装具士は、義足や義手といった「義肢」、そして腰を痛めた時などに巻くコルセットや足の裏が痛い時に靴の中に入れる中敷きといった「装具」を作る方たちの総称で国家資格です。

Going Upでは、義足アスリートなどによって語られることの多い義肢装具士というお仕事ですが、実は9割くらいの義肢装具士さんは義足や義手ではなく装具を作っていらっしゃるのだそうです。

 

沖野さんの会社では、型をもとに義肢や装具を工場で作り、ユーザーさんに装着してもらい納品するという作業を全部行っていて、義足でいうと1年間に50本程を新しく作っているといいます。

そのほか、足に当たるから少し削って欲しい…等といった調整や部品の交換も行っています。

50本の義足のうちスポーツ用は5、6本ぐらい。それでも多い方だと話し、通常の義肢装具製作所では100本作ってスポーツ用が1本あるかないかくらいだということです。

製作マニュアルがある日常用の義肢装具とは違い、「スポーツ用に関しては一切教科書がない」と語り、義肢装具士のアイデアが重要で、他の方が作った義足や義手に衝撃を受けることもあるそうです。

 

大学では、機械システム工学科に通っていた沖野さん。

ドラえもんのように自分で動いて考えるAIロボットを作り、一緒に何かをしたいという目標があったと語ります。

転機が訪れたのは2000年。

シドニーパラリンピックのダイジェストを偶然テレビで見たことが、その後の進路を変えることになりました。

「陸上競技場が映って、上半身は人間の生身の体なのですが下半身に何か機械のようなものがついているのを見て衝撃的を受けました。単純に機械(道具)と人間の融合がかっこよかったんです。かわいそうとか大変とかという感情は全くなくて、鍛え抜かれた肉体が機械を操っていることにかっこよさを覚えました。後で調べるとそれが義足だと。当時は義足という言葉さえも知りませんでした。それを見て義肢装具士になろうと思い専門学校に入って就職しました」

そうして、これまで15年にわたってキャリアを築き、現在、陸上の山本篤(やまもと・あつし)選手や佐藤圭太(さとう・けいた)選手(義足)、多川知希(たがわ・ともき)選手(義手)など、トップアスリートのサポートも行っていらっしゃいます。

 

最後に、義肢装具士として沖野さんが「喜びを感じる瞬間」について伺いました。

「私は自分のモットーとか目標というものはあまりなくて、ユーザーさんに言われたことを叶えてあげたいという思いがあります。例えば、金メダルを獲りたい!と言っている選手が金メダルを獲れたら嬉しいですし、自己新記録を出したい!という選手が予選落ちしたとしても自己ベストを出したら嬉しいです。そして、例えばお父さんが義足になって、子どもと一緒にサッカーやかけっこしたいというオーダーがあれば、それが叶えられた時はすごく嬉しく感じます」

 

次回も引き続き、沖野さんにお話を伺います。

どうぞ、お楽しみに!

 

沖野敦郎さんのリクエスト曲;Get Wild / TM NETWORK

ラジオに出演したら、自分のリクエスト曲を紹介するのが夢だったという沖野さん。この曲は、中学生時代からずっと好きだった曲。シンセサイザーや電子音が入っていて、こんな音楽は今まで聞いたことがない、誰が作っているんだろうと興味を持ったそうです。この曲を知った頃には TM NETWORKはすでに活動を休止していたため、過去の曲を調べて聴くとさらに衝撃を受けたと語りました。

実は鈴木亮平さんもこの曲には思い入れがあり、ラジオで流すのが夢だったということで、ふたりで一緒に曲紹介をしていただきました。

2020年11月6日
車いすラグビー・池透暢選手 (2)

10月31日(11月1日)の放送では、前回に引き続き、車いすラグビーの池透暢(いけ・ゆきのぶ)選手にリモートでご出演いただきました。

 

7月に40歳を迎えた池選手。

釣りが趣味ということで、今年の夏、「何か小っちゃなチャレンジがしたい」と思い立ったのが、船の免許の取得。

学科や船の操縦のほか人命救助の実技もあり、足にも障がいがあるため溺れたらどうしよう…と不安があったといいますが、見事その不安を乗り越えての免許取得となりました。

車いすユーザーとしては、四国で初めてのことだということです!

 

さて、今から1年前。

日本でラグビーワールドカップが開催され、日本中がラグビーに熱狂しました。

車いすラグビーにおいても、世界トップクラスのチームが集結した国際大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が東京で開催されました。

大会期間中には5日間でのべ3万5000人以上が会場を訪れ、試合はもちろん、DJによる実況や「パプリカ」の大合唱など人々の熱気に包まれました。

ほぼ満員の会場で大きな声援を受け、池選手は「パラリンピック競技がここまで応援されるようになったのか」と感じたと話します。

会場で観戦した鈴木さんも、観客が盛り上がっている雰囲気がとても楽しかったといい、日本チームだけではなく他の国のチームも応援する姿を見て「日本だけではなくみんなで盛り上がっていこう、みんな車いすラグビーが好きだということが伝わってきた」と語りました。

 

この大会で日本は銅メダルを獲得しました。

1年後にパラリンピック本番を控える中での大会(当時)で、車いすラグビー日本代表、そして池選手が得たものとは?

「初めてあれだけの観客数の中で生の応援を受け止め、熱くなりすぎてもいけないし冷静でもいけないし、ちょうどいい自分のパフォーマンスを出すことだったり、応援を自分たちの力に変える“調整力”というものが、パラリンピック本番に向けての良いトレーニングになりました。そして、これだけの会場のみなさんに応援されている、そこで最高のものを見せなければいけない、だから自分はこれからどうするのか、という覚悟を感じました」

 

パラリンピックで日本が金メダルを獲得するためには「チーム力が大事」だと話す池選手。

この“チーム力”という言葉が意味するものについて伺いました。

「戦いに向かう、そして勝つための空気づくり、選手同士・スタッフ同士すべての信頼関係、情熱の出し方、劣勢になる場合に備えた危険予知などの能力…それらを選手、スタッフともに共有してそれに適した強さやタイミングで発揮する。それができるのが“チーム力”だと思います」

 

東京2020パラリンピックで過去最高の自分に到達するため、2018−2019年シーズンにはアメリカに渡り武者修行も経験し、ここまで積み上げてきたことがすべて結果として見え始めた今年。

東京2020大会の1年延期が決まりました。

「選手というのは、海に潜るために一回深呼吸して潜水しているような状態で、本当に息ができない状況で泳いでいる時があるんです。この1年延期によって、一度水面に上がって一回呼吸をしないとこのまま泳ぎきれないなという思いが自分の中に出てきて、一回深呼吸をしてもう一年進みはじめようと準備しているのが今です。そうでないと酸欠で体力が持たなくなるし、冷静さも欠いてしまいます。ある意味で、自分を見直す一年にすることができたというのはプラスでもありますし、今年最高であった自分をもう一度超えるということを目標に定めたことが、今の自分のモチベーションにつながり楽しみでもあります。大会が開催される、されないではなく、動かないものに目標を定めることによって揺るがないものを見つけたという気持ちはありますね」

 

最後に、東京2020パラリンピックに寄せる思いをこう語りました。

「コロナ禍を抜けての開催となると、やるべきだ、やるべきではないという、いろいろな人の思いがこもった大会になると思います。それを乗り越えて開催されるこの大会には非常に大きな意味や発信力があり、東京2020大会がどうだったかということを後から振り返ったときに、ものすごくいろいろな思いが詰まった大会になると思っています。なので、間違いなくその場所で金メダルを獲ることができれば最高です。でも、金メダルを獲るではなく、選手一人ひとりにフォーカスしても、金メダルを獲るにふさわしい選手たちだと言われるようなチーム作りをこれからも続けて、最高の結果を追い求めていきます!」

 

池透暢選手のリクエスト曲: Goal / JILLE(「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」日本代表応援ソング)

ゴールへの思いを強くしてくれる、そんな一曲だということです。

2020年10月31日
車いすラグビー・池透暢選手 (1)

ニッポン放送ではプロ野球中継延長のため、10月24日の放送は休止となりましたが、

現在、期間限定で当日の放送を公開しております。

こちらのブログ記事の下↓をご覧いただき、ぜひ番組をお楽しみください!

 

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10月24日(25日)の放送では、車いすラグビーの池透暢(いけ・ゆきのぶ)選手にリモートでご出演いただきました。

前回のGoing Upご出演は、昨年8月。

あれから一年、パラリンピックをめぐる状況は大きく変わりました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、今年3月、東京2020オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定。当時の心境をこう語りました。

「パラリンピック、オリンピックは中止になるのでは…とも囁かれていた中で、自分自身ももしかしたら開催されないのかなというところまで考えが及び、まだ決まってはいない段階でけっこう気持ちが落ちかけていました。『延期』という、開催される方向に向かったので、本当に救われた気持ちでいっぱいでしたね。パラリンピックが開催されないとなると、これまでずっとやってきたことや選手としての存在価値もなくなってしまうように思えましたし、お世話になった人への恩返しもできぬまま、悔しい思いをどこにぶつけたらいいのかという思いもあったので、『開催』、『延期』というのはポジティブに捉えることができました」

 

外出自粛期間中は、心を整えるため家の周りの掃除をしたり、息子さんたちと過ごしたり、「いろいろなものを整えるタイミングになった」と語る池選手。

これまで競技一本でずっとやってきて、息子さんの運動会には一度しか行ったことがないほど、子どもたちと過ごす時間も割いてトレーニングをする生活だったといいます。

「ある意味、“大人の休み”というか、ゆっくり自分自身にも、家族とも向き合う時間がとれて本当にリフレッシュになりました」

 

車いすラグビー日本代表は、今年2月の合宿を最後にしばらくチームの活動は休止となり、7月に代表合宿が再開しました。

最初は、関東近郊の選手のみによる参加だったため、高知を拠点にする池選手はリモートでの参加となりました。

映像で選手たちの姿を見ながら、合宿に参加できていない自分に対しみんなが進み出したことで焦りを感じたこともあったといいます。

一方で、ずっと中止だった合宿が開催されたことや、みんなが一生懸命やっている姿がモチベーションアップにもつながったと話します。

その後に行われた代表合宿には、池選手も合流。

久しぶりに日本代表候補の仲間たちとコンタクトをして、ラグビーを始めたころのような疲労感を感じたそうです。

ケビン・オアーHC(ヘッドコーチ)は、アメリカからリモートで指導。

池選手は、コロナ禍の中このような環境を整えてくれたスタッフ、14時間の時差がありながら指導してくれるケビンHCに感謝するとともに、「やっと再開した。スタートだ」という思いがあったと心境を明かしました。

 

今、競技生活を送るうえでモチベーションとなっているのは、息子さんたちの存在。

二人の息子さんたちもスポーツをやっていて、長男は県外でひとり寮生活をしながらスポーツに励んでいるそうです。

「息子たちもがんばっているから、パラリンピックの開催がどうなるかわからない難しい状況ではあるけれども、そんな中でお父さんもがんばる姿を見せたいです」

そして、もうひとつ。

東京パラリンピックで“過去最高の自分”を出すと決め、「その自信もあった」という今年。

予期せぬ事態により心が折れそうになりながらも、開催の延期が決まり一度リセットできたことで、「その自分をさらに超えてやるぞという決意、目標を再度見つけたことがモチベーションにつながっている」と語ります。

 

車いすラグビー日本代表が目指すのは、東京2020パラリンピックでの金メダル。

過去最高の池選手の活躍に期待が高まります。

 

次回も引き続き、池選手にお話を伺います。

どうぞ、お楽しみに!

 

池透暢選手のリクエスト曲:Summertime / Steph Pockets

つらい時、苦しい時、この曲を聴くとさらっと明るい気持ちになれる、そんな一曲だということです。