トランプ政権から為替条項を要求されると厳しい中国と日本

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月19日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカが中国や日本と締結を望んでいる為替条項について解説した。

日銀 APEC アメリカ トランプ 中国 貿易戦争 米中 首脳宣言 断念 習近平

APEC首脳会議に出席した各国・地域の首脳ら(パプアニューギニア・ポートモレスビー)=2018年11月18日 写真提供:時事通信

APEC~首脳宣言出さずに閉幕

日本やアメリカ、中国など21カ国と地域が参加してパプアニューギニアで開かれていた、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、昨日、米中が通商政策をめぐり対立して、首脳宣言の採択を断念する異例の事態で閉幕した。首脳宣言が採択されなかったのは、第1回首脳会議が開かれた1993年以降初めてである。

飯田)首脳宣言が断念された代わりに、加盟国地域の連携を訴える議長声明に格下げしたようです。中国が「保護主義に反対」と求めた文言にアメリカが反対しました。一方で、知的財産権などの、中国に対しての鞘当てみたいな部分に関しては中国が反対しました。文言としては、「貿易でぶつかった」という話になっていますね。

須田)中国側の一定の牽制もあったのでしょうけれど、その後に中国政府は、アメリカに対して米中貿易摩擦に関する142項目の対応策を提示しました。これについてトランプ大統領も「一定程度の評価をする」というやり取りがありましたから、ずっとギリギリのところで対決している状況ではないと思います。

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15日、東アジアサミットで言葉を交わすペンス米副大統領(左)と中国の李克強首相=2018年11月15日 シンガポール(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ政権は日本や中国の意図的な為替変動を止めようとしている

須田)あまり日本では報道されていないのですが、過去のトランプ政権の外国との貿易交渉は、例えばNAFTA(現在は米国・メキシコ・カナダ協定)が締結された。あるいはEUとの交渉も、一定の妥結をして来た。そうした過去の経緯をずっと見て行くと、現在のトランプ政権がいちばん重視してこだわっている点について、日本のメディアは見落としていることが多いのです。
それは為替条項についてです。もっと踏み込んで言うと、「意図的に為替変動させることは止める」と一文が入っているのです。だから、おそらく米中間でもアメリカ側はそこを盛り込むように要求して来るのだろうと思います。ただ、例の142項目にはそれが見受けられない。だから、最終的にそこが1つ大きなポイントになって来ると思います。

飯田)為替ということを考えると、意図的に変動させる部分もありますが、中国の人民元に関しては「意図的に変動させないようにしている」という話もありますね。

須田)「本来あるべき水準に行っていない」ということは、意図的に変動させているということで、「市場の原理にまかせろ」ということになる。管理相場については一切認めない方向へ行くと思います。
ただ、ここはある意味、貿易立国の中国にとってはライフラインですから。そこは非常に厳しい状況になって来ると思います。

飯田)輸出に頼っていると考えると、元が安い方が輸出しやすい。だから「いままでは元安誘導して来たのではないか?」と言われていますね。

須田)これも中国側から見ると、人民元が実力通りになって暴落してしまうと、これもまた困ったことになると思います。だから「程良いところで、自分たちの貿易や経済にとっていちばん居心地のいい水準に、意図的に操作している」というのがアメリカ側の認識なのです。それに対して一定程度の楔を打ち込むという点で、為替条項の盛り込みが1つのポイントになります。

飯田)いまは中国が外貨準備を取り崩して、人民元市場が改竄されているのではないかと言われていますよね。

須田)貿易が低調になるとドルが入らず、外貨準備高も増えず、むしろ減って行く状況になりますから、中国にとってはその板挟みですね。いまの状況が続くと、結果的に買い支えることもできなくなる状況になりますから。

飯田)それをトランプさんは見越しながら、譲歩を引き出そうとしているのですね。

日銀の大規模金融緩和も為替条項に含まれてしまう可能性

須田)この件については日本にとってもブーメランです。その意味で間違いなく、いまの政府は「FTAではない」と言っていますが、日米間は事実上、実質的なFTA交渉に入っている。そのなかに為替条項を盛り込めと、アメリカはどこかのタイミングで言い出すはずです。これは間違いない。

飯田)TAG交渉ですね。

須田)それに対して日本はどのように向き合うのか。その為替条項の範疇のなかに、例えば日銀の大規模な金融緩和も視野に入り、含まれるのか? 日本にとっても重要なポイントだと思います。

飯田)外圧のような形で、国内の金融政策が縛られてしまうとなると、景気対策としてはキツくなりますよね。

須田)これは表立って言っていなかったけれど、そもそも黒田バズーカに代表される大規模金融緩和は、「デフレ脱却」と言っていますが、事実上は円安誘導です。民主党政権時代にドル円が8~90円の行きすぎた円高で苦しみ抜いて来たのを安倍さんは意識していましたから、円安誘導に動いた。ピーク時はドル円で125円まで行きました。だからこそ、景気経済が回復軌道に乗ったという側面があります。それに対して縛りがかかるようになると、少しキツいと思います。

飯田)為替条項に関しては、TPPの交渉でもアメリカは入れたいと言って、日本は他国と一緒になってはねつけた部分がありますよね。

須田)だから、2国間交渉のなかで、それがどのような展開をするのか。項目のなかで明文化されないとしても、一定程度そこについて日本からも譲歩を引き出すのがアメリカの本音です。それとどう対峙していくのかがポイントだと思います。

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