1242 ニッポン放送
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みのりの日記
栗村 智
栗村 智
 
diary
3月14日
春が来れば思い出す…。
ここ数日、めっきり春めいてきましたね。
向かいのうちの植え込みでは、季節を迎えた猫たちが、
「みゃーごー・ぎゃーごーわーうおー」と恋を語り合って、
やかましいの何の…。
それにあわせるかのように、我が家の猫の額のような庭の梅の木が、
あざやかに花を咲かせています。
うちの梅の木は、背は低いのですが、
トランジスターグラマーで沢山の花を咲かせています。

梅といえば、天神様・菅原道真公のお歌
「東風吹かば、におい起こせよ 梅の花 主なしとて 春なわすれそ」ですよね。
“何を、知ったかぶりしてるのか!” って?
いやいや、落語の知識なんですよ。
この時期になると、必ずといっていいほど、ホール落語会の出し物に、
円生師匠がやってた「質屋庫」(しちやぐら)があります。
今はない「東横落語会」で聴きました。
夜な夜な質屋さんの蔵に化け物が出て、
気持ちが悪いとうわさになり、見届けようと、
番頭さんと出入りの熊五郎が、夜中に質屋の蔵の中で見張っていると、
藤原さんから預かった質物の天神様の掛け軸から、
道真公が出てきて、憂いのこもった顔で
「こちふかば におい起こせよ 梅の花 主なしとて 春なわすれそ」
こりゃ、番頭!藤原方に利上げをするよう申し伝えよ…。
あーあ、また流されそうじゃ。」と言うサゲ。

上方落語で、盛んにやるネタですが、
何といっても円生師匠の「質屋庫」がイチバンでした。
道真公の醸し出す、憂いの篭った情景…、絶品でした。
CDでは残っていますが、
このねたはやっぱり師匠の仕草を 見なくっちゃ…。
誰か、画像を持ってる方、居ないですかねぇ。
梅の季節になるといつも、あの高座を瞼に浮かべながら、
CDで偲んでいます。
3月 8日
寝台急行「銀河」
いやぁ、残念なニュースですねえ。
寝台急行「銀河」廃止…。

思い出の列車でした。
スポーツ中継に30年間携わって、何度となく往復した東京〜大阪間。
大阪、東京を深夜に出て、朝それぞれ寝ている間に
東京・大阪に着く、とても便利な寝台急行。
東西を、問わず演芸の好きな私は、
よく阪神・京都の競馬中継で出張した後、レース実況を終えて、
ほっとした気分で、演芸場のシートに腰をしずめるという楽しみを、
持ってたんですよ。
6代目の松鶴師匠、春団治・鶴光・松喬の高座を観た後、
キタに出て一杯やって、ゆっくり間に合う急行「銀河」、
懐かしいですねぇ。
確か25年前は、東京着が朝9時過ぎだったと記憶しています。
このお陰で月曜日、有楽町のニッポン放送にも余裕でしたよ。

先月、上方の若手落語家・桂吉弥さんの内幸町ホールでの落語会に、
伺った時、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の撮影があるということで、
夜9時に終演後、急行「銀河」で帰ると言っていたので、
無性に懐かしくなって、久しぶりに乗ろうと思った矢先でした。
3月14日をもって廃止…。
深夜バスや、新幹線が便利になって、
これも世の流れとは言うものの、もう一度、乗ってみたかったなぁ。
銭湯の洗い場の蛇口のような、やたら熱いお湯の出る洗面台で、
顔を洗ったなぁ…。
3月 1日
まぶしかった武蔵小山の「四畳半」
今日、元・プロ野球選手だった友人から電話があり、
「一年間、浪人生活を送っていた娘さんが志望校に合格した!」と大喜び…。
入学金の工面で、大変そうですが、
いやぁ、よかったよかった!
彼は高校卒業時にドラフトされたために、
憧れていたその大学に行けなかったんですが、
娘さんが、しかも浪人して望みをかなえたんだそうです。
受からない時は一つも受からず、受かる時は何校も合格しちゃうんですね。
どこに行ったらいいのか、羨ましい悩みですね。

ウチの長女・長男ともに、受験は合格した一校のみ。
選択するなんて悩みはなかったんです。
あっ、斯く言う私も合格したのは、たった一校のみ。
でも、親に入学金を、捨てさせるようなことをしなかったから…。
あっ、浪人して無駄な心配と、お金を使わせたっけ…。
いつの世も親と子は…。

寒かった冬から、陽の暖かさを感じる春が近づくと、
あの頃を、やっぱり思い出しますね。
35年前のこの頃、やっと大学に合格し、
東京都内を電車に乗ってうろうろして、
安くて交通の便のいい下宿を探してましたね。
そして見つけたのが、東急目蒲線・武蔵小山駅から歩いて5分。
4畳半一間、流し台付き・風呂なし・トイレ共用の「大関荘」。
決めたのもちょうど今頃でしたよ。
4畳半を、そのまま4畳半で使う生活。
(家具が何にもない…)
でも、希望には満ち溢れてたなぁ。
2月21日
たんかんで知る「春」
ここ数日、少し暖かくなって「春近し」を感じますよね。
皆さんが「春近し」を感じるのは、どういう現象からですか?
我が家では「沖縄たんかん」が届くとそうなんです。

「たんかん」…。
鹿児島県屋久島・沖縄県北部で、2月下旬から3月上旬に収穫される
甘みのツヨ〜い、柑橘系の果物です。
なんでもポンカンと、ネーブルオレンジの配合で出来たものだそうですよ。
二年前まで約30年の間、この時期、2週間以上
南九州・沖縄へプロ野球キャンプ取材で出張していましたから、
こういう珍しい果物にも、よく遭遇するんですね。

「たんかん」を知ったのは1980年、
ロッテオリオンズ・鹿児島鴨池キャンプ取材で、
当時、現役サウスポーだった小俣進投手に、
練習休みの日に連れて行ってもらった「谷山青果市場」
(小俣選手の後援者の経営する青果卸店がある)で、
お土産にもらったのがきっかけでやみつきになりました。
そのときは、鹿児島屋久島産だったのですが、
沖縄北部産も甘みが強く、且つさわやかで、
鹿児島に行かなくなった後は、沖縄の牧志市場から、
毎年、知人・自宅に送っていました。

スポーツアナウンサーを引退してからは、
長い付き合いのおかげで、いつもの沖縄の青果卸のおばちゃん
(沖縄では、オバアと呼んでも怒られません)が、
この季節になると黙っていても、
「今年は、どうしますか?」と連絡してきてくれるんです。
今年も大粒のビタミンCたっぷりのあまーい「タンカン」をほお張ると、
春の訪れを、感じますね。

今週の「栗村智あなたと朝イチバン」は、
「産地直送・アナタに春一番」と題して、
千葉・秀じい農場の採れたて新鮮野菜セットプレゼントなど
盛りだくさんで、お送りします。
あなたの「春イチバンリクエスト」、周囲の春を見つけた話題など、
どしどしお寄せください。
お待ちしています!
2月15日
根津のパン
いやぁ、このところ寒いですねェ〜。
地球温暖化に危機感を持ちながらも、こう寒いとねぇ。

思い出します、37年前、大学入試で広島から上京した頃を…。
親父が奮発して用意してくれた寝台特急「あさかぜ」号に乗って、
降り立った早朝の東京駅プラットホーム。
吹き抜ける風の冷たかったことったらありませんでしたね。
故郷・広島、瀬戸内の温暖な冬しか知りませんでしたから驚きました。
宿舎は、親父の勤め先の宿泊施設、確か根津でした。
迷ってしまうのが怖くて、地下鉄利用などできず、
上野駅から不忍池沿いに歩きましたが、
池の水面を走ってくる風は、高校の学ランと襟巻きだけの私が
初めて経験した“世間の冷たさ”でしたね。

今は地方からの受験生のために、
ビジネスホテルが「必勝弁当」などと称して、
至れり尽くせりの宿泊プランがあるんですから変わったもんです。

私の試験日の弁当は、その根津で、朝早くから開いていた
自家製パン屋さんのポテトサンドとハムサンドでした。
随分前に、そのパン屋さんの前を通ったら、
今は小洒落たカフェテラスになってました。

でも、今も通りすがりのパン屋さんのショーウインドーに、
薄切り食パンの間にポテトサラダ、たまご、ハムが挟まれた
手作りサンドイッチを見かけると、
やたら懐かしくなって、買ってしまうんですよ!
 
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