1242 ニッポン放送
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みのりの日記
栗村 智
栗村 智
 
diary
7月10日
鯉昇師匠
梅雨明けも間もなくで、いやぁ蒸し暑いこと。
汗をふきふき街を歩いていて、
デパートの入口(地下食品売場)の前を通りかかると、
何ともいい香りと涼しい空気が頬を撫でます。
この時期、用もないのに、デパートの地下に降りて、
フラフラして、ムダな買い物までしてしまうのです。
デパートの入口の涼やかな風といい香りに和んでしまうのですよ。
大好きなのです。

私の好きな落語も、こういう和みの感覚で楽しんでいるのですが、
「東京かわら版」(寄席の情報誌)を、ぼやぁ〜と眺めていて、
瀧川鯉昇の字を見ると和みたくなって、
鯉昇師匠の出演するホール、寄席の座席に身を沈めるのですよ。
さながら、暑苦しい街を、汗だくになって歩いている時に出会う
デパートの冷房の冷気のようなものなんですね。
熱演というものとは程遠い、自然体の和みの空気がたまらないのですよ。

てなわけで、きのうも、内幸町ホールの、
「第三回楽橋亭 瀧川鯉昇独演会」にいってきました。

開口一番 鯉八「牛ほめ」
     鯉昇「船徳」
     左談次「浮世床(夢)」
     
中入り
     橘右門「英国、文化庁文化交流使活動報告」
     鯉昇 「こんにゃく問答」

お弟子さんの鯉八君、いままで危なっかしい高座だったのに、
長足の進歩、与太郎の演出が個性的で、いやぁ、面白かった。
ゲストがやはり、熱演とは程遠いゆったり芸の
立川左談次さんの「浮世床(夢)」。
いつもながらの鯉昇師匠の、軽い味わいの落語2題。
大満足、少々暑さにやられていた身体に、
何となく元気がつきました。

この落語会の世話人さんは、寄席文字橘流、橘右門さん。
なんと、今年3月まで、まるまる一年間、文化庁・文化交流使として、
国からニッポンの大衆演芸を広めに、出掛けていらっしゃったのですね。
落語を聴いたことのない英国人や、ハンガリー人、ドイツ人に、
寄席文字の粋さ、美しさを広めに行っていた
その活動報告は、映像を交えて、興味深く説明していらっしゃいました。
なんと、この右門さんの声、口調。
噺家さんとして本寸法の芸ができそうな雰囲気で、
聞きやすかったです。

聞くところによると、明治大学・生田落語研究会で、
生田家楽橋という高座名で、私と同じように素人落語を、
やってらっしゃったのですね。
さぞや、噺家になろうか、どうしようか、
迷われたのでしょうね。
私が、そうでしたから…。
でも、同じ世界、寄席文字橘流家元・橘右近師匠の、
最後のお弟子さんだとか…。
墨痕鮮やかな寄席文字、これも我々を和ませてくれる
大衆演芸のひとつですよね。

参考までに「栗村智 あなたと朝イチバン」の千社札は、
右門さんの兄弟子、橘右楽師匠に書いていただいたもので、
本寸法ですよ!
7月 3日
雨降って…!?
いやぁ、鬱陶しい毎日でイヤんなりますね。
日本では、仕方のないことですが、梅雨はウンザリですね。

この時期、よく思い出すのが、雨でのゲーム中止。
スポーツアナウンサー駆け出しの頃、
ふた月に一回くらい就く全国中継。
勤務が発表される担当日を、手帳に赤マルして、
2週間前から体調調整、資料作成して、
首を長くして本番を待つのです。

勿論、その頃、長期予報だの降雨確率など、
ウェブで見られるものでもなく、
ひたすら「177番」に一喜一憂てなわけですよ。
また、たまの全国本番担当日に限って、
雨雲が沸き起こるのではと恨むほど、雨で中止になりました。
ま、天の成せる技と諦めるには、辛い哀しいものでしたよ。

ラジオのアナウンサーが、明けても暮れても、
「放送席・深澤さん…3塁側、ホエールズ情報です」てな、
ベンチ情報ばっかし…。
これはこれで、放送の実況アナウンサーのテンポ・リズムを崩さないように
入れていかなければならないから、結構難しいのですが、
アナウンサーになったからは、たまにはメインを張りたいというのが、
人情じゃありませんか?
そういう生活が10年は続きましたね。
だから梅雨時というと、イヤな思い出が、
フッと浮かんでくるんですよね。

今は東京ドーム・ナゴヤドーム・札幌ドーム・
福岡ヤフージャパンドーム・西武ドーム・京セラドーム大阪と、
全天候型のグラウンドになりましたから、
そんなこと少なくなりました。
あっ、そういえば、雨でたまの本番が飛んだ日、
先輩に連れて行ってもらったカラオケスナックのパーティーで、
今のカミさんと知り合ったのでした。
6月27日
セピア色に霞んだ一冊
先週、先々週と2週にわたってお送りした
「王・長嶋伝説」いかがでしたか?
昭和40年代を懐かしみ、リスナーの皆さんから、
たくさんのメール、ONお宝写真をつけて送って下さり、
本当にありがとうございました。

皆さんからのメールやおハガキを拝見しているうちに
無性にあの頃が懐かしくなり、我が家の本箱から、
安藤鶴夫の「巷談本牧亭」を取り出して、
久しぶりに読んでいます。
確か、上京して間もない昭和48年に初めて、
戦後の古典落語の案内人として有名だった人の
直木賞受賞作ということで読んだはずなんですが、
ほとんど記憶もなく、おそらく当時の私の感性では、
理解できなかったのでしょう。

ところが、今、開いてみると、いやぁ、涙が浮かんでくるのです。
昭和40年頃の東京上野広小路界隈が、セピア色に霞んで、
脳裏に浮かんでくるんですよ。
王・長嶋全盛の頃とダブるあの頃、
夏はもっと暑かったし、冬ももっと寒かった思いが滲み出てきます。

小説の舞台、上野本牧亭。
私が通ったのは、改装後の昭和48年から55〜6年頃まで。
宿直明けとか、たまの休みのウイークデー。
ぼ〜っと畳敷きの客席後方で、壁にもたれて聴いた、
先代・馬琴先生はうまかったなぁ。

あの頃のお客さんの数?
200人入る席に40人くらいでした。
今は寄席ブームで、どこの席もいっぱいで嬉しいことですが、
あのゆったりした空間、好きでしたねえ。
広小路で地下鉄降りて、上野方向に7〜8メートル歩いて、
根岸カメラを、左に折れると幟がみえた本牧亭。
今はパチンコ屋さんになっています。
今も変わらず、とんかつの「武蔵野」だけが、
昔の佇まいで営業しています。

小説に登場する、服部伸の十八番「大石東下り」のCDも
よい味わいですよ。
小説とあわせてどうぞ。
6月19日
心の“お宝”
今、ホール落語の売店で評判の、
白夜書房「落語ファン倶楽部VOL7・6代目円生てへっ」。
おかみさんとのなれ初めを語っているCDの付録もついて、
いやぁ、懐かしかったですねぇ。
「あなたと朝イチバン」のスタッフは、
誰一人として、円生師匠の高座に触れてないので、
みのり君なんか、何で私が興奮してるか、
ピンとこないようなんですね。
何しろ1979年、昭和54年9月、
パンダのランランと同じ日になくなってますからね。
戦後の落語界をしょって立った名人柏木(住んでたのが新宿柏木だから)
6代目・三遊亭円生師匠の思い出がたっぷり詰まってますよ。
ご一読あれ。

円生師匠というと強烈な思い出があるんですよ。
持ちネタが300以上あると言われていた師匠に、
私、大学3年の5月、噺を注文して、
やっていただいたことがあるんです。
所は日比谷の「東宝名人会」。
ちょうど、大相撲5月場所の最中ということもあり、
出囃子中の舞で、いっぱいに高座に座るトリの円生師匠に、
最前列から「イナガワッ」と声をかけたら、にっこり笑って、
「ご贔屓さまで(ゴシイキサマデ)ございまして、
それではご注文で、関取千両幟・稲川をやらせていただきます」
感激しましたね。
結びで「おなじみ関取千両幟、稲川の一席でございました」と一礼。
最前列の私に「てへっ」と笑って、
もう一度頭を下げてくださいました。

この円生師匠が名人で、全盛を誇っていた同じ頃、
日本のプロ野球界に、2人のスーパースターがいました。
今週の「栗村智 あなたと朝イチバン」は、先週に続いて
「ON誕生50年!元祖ショウアップナイター深澤弘が語る、
あの日の王・長嶋伝説」と題して、
ON秘話、聴取者の皆さんの“お宝ONグッズ”をご紹介します。

ちなみに、私にとっては、あのONと同じ時期、
落語界をしょって立った円生師匠が、
東宝名人会で見せて下さった「てへっ」は、
心の中だけにそっとしまってある“お宝”です。
6月12日
イチバン懐かしい頃
栗村智、昭和28年8月23日、広島市生まれの55歳。
いやぁ「55歳」ですからねえ、自分でも驚いてますよ。
最近、広島時代の中・高同窓会、上京してからの大学時代の同窓会と、
結構、声がかかって、時間の許す限り出席して、
楽しい時間を過ごしているのですが、
みんなで過ぎ去りし時を懐かしむ時、
「イチバン楽しく、面白かったのはいつだろう?」という話題になるのですが、
ほとんど共通しているのは、
大学2年・20歳から21歳頃だということに落ち着きます。

私の場合は、昭和49年、中央大学2年生、毎日落語に明け暮れ、
そうでないときは、ラジオのナイター中継に耳を傾けてましたので、
将来は「噺家」あるいは「ラジオのアナウンサー」になりたいなぁと
おぼろげに思っていたのですが、それに拍車をかけたのが、
昭和49年10月14日、ニッポン放送・深澤弘アナが実況した
長島茂雄現役引退試合の中継でした。
そして、なりたくて、も〜うたまらなくなったのが、
翌年・昭和50年10月14日、大ファンだった、
NHK・鈴木文弥アナが実況した広島カープの初優勝!
その夢が叶ったのですから、余計にこの頃が懐かしくなるんですよね。

運よくニッポン放送に合格したのですが、
落っこったら、志ん朝師匠か小三治、いや円弥師匠に
弟子入りしようと思っていたくらいですから…。
入社する時は、あの夕闇迫る後楽園球場の深澤さんの実況に憧れて、
まさに深澤さんに「弟子入り」したようなつもりで、
毎日を過ごしたものでした。

その頃と言えば、ONがプロ野球界で星のごとく輝いていた頃…。
今週と来週の「栗村智 あなたと朝イチバン」は、
その深澤大先輩をスタジオにお迎えして、当時の秘話など、
懐かしい実況を交えてお送りします。
お楽しみに!
 
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