飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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一言のボタンの掛け違い
4月22日
知り合いの医者が、医療ボランティアでいわき市に行ってきました。
帰ってきて話を聞いたんですが、
すごく怒っているのです。
彼女がいわきに入ったのは、4月のはじめ。
1週間滞在し、避難所を巡回医療に回ったそうです。
その活動自体も大変で、
たとえば、90歳を越えたお年寄りは
体調不良でもすぐには訴えてくれないんだそうです。
なぜなら、貴重な薬は、自分よりも若い、必要な人に回して欲しいから。
そんな姿を毎日目の当たりにすると、
日本人って、なんて誇り高い民族なんだろうと思う一方で、
おばあちゃん!ムリしないでこの薬飲んで!
と、医師として無力感に苛まれたそうです。

しかし、彼女が怒っていたのはそんなことではありませんでした。
避難所で見つけた一枚の貼り紙…。
そこに書かれていたのが…
『3月30日 福島県災害対策本部
(中略)
福島第一原発から20キロ圏内には立ち入らないでください。
汚染された方が避難所にいると、小さな子どもなど、
他の避難所の人々も広く汚染されてしまいます。
(後略)』

一見すると、放射能汚染の拡散を防ぐための貼り紙です。
しかし、彼女の訪問していた避難所は、地元の方だけでなく、
福島第一原発周辺の方々も避難していました。
この貼り紙をしてから、地元の方の見る目が変わったといいます。

すでにご存知だとは思いますが、
放射性物質は衣服などに付着し、放射線を出します。
避難地域にいたからといって、
その人の身体の中から放射線を出すわけではないのです。
汚染された服を除染し、または廃棄すれば、
まわりまで被曝させるようなことはありません。

しかし、この貼り紙を見た人は、
避難地域にいた人のそばに寄ると被曝してしまうのでは?
と思ってしまいます。
それが、地元の避難民と、原発周辺の避難民との間に、
埋めがたい溝を生んでしまうのです。
その原因となった貼り紙に、彼女は猛烈に怒り、
いわき市の担当者、県の担当者にまで詰め寄ったそうです。

私はこの話を聞いて、恐ろしくなりました。
彼女の正義感、その気持ちもよく分かる。
一方、市や県の担当者も、沢山のやるべき仕事を抱え、
一枚の通告文にそれほど長い時間をかけられなかったのでしょう。
みんな一生懸命やっているのに、
たった一言の間違いで起こる悲劇。
言葉を生業としている私たちアナウンサーにとって、
この出来事は他人事ではありません。

極限状態で、試されるもの。
普段、いかに言葉を大切にしているのか?
自問自答し、恥じ入るのみです。


 
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