飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
3月 3日
先月デザインズオンローマが香港クラシックカップを勝った時、香港の競馬サークルの中では、ダービーの最有力という注目もありましたが、それと同じくらい、かつてこの馬を管理していた調教師にも注目が集まりました。
それが、アイルランドを本拠とする、パット・フリン調教師です。
この馬とパット・フリン師との出会いは、2011年9月のゴフズオービーセールでした。
まさしく、一目惚れだったようです。
「この馬が目の前を歩いた瞬間、鳥肌が立ち総毛立つのが分かったよ。
そして、自分自身にこう言ったんだ。こいつはチャンピオンだ!間違いないってね」
しかし、そこからすぐにフリン師の手元に馬がやってくるほど簡単な話ではありませんでした。
このセリ市では1万8千ユーロの値がつけられていましたが、その額では応札がなく主取りに…。
どうやら、タイミングが悪くセリの時に良く見せられなかったようです。
しかしながら、「念ずれば花開く」「求めよ、さらば開かれん」というわけで、フリン師がよくよく調べてみますと、この馬は誰も買おうとしていないことが分かりました。
「(生産者の)モイグレアスタッドは世界でも5本の指に入る有名生産者だからね。常にここの馬についてはチェックしているんだ。で、彼らに『もう待てない!(競合がなければ)ウチに売ってくれ』って掛け合ったんだ。そしたら調べてくれて、『あぁ、あの馬なら確かに売れてないね』と。私は事態をよく呑み込めず、『あの馬って…?』とポカンとしながら聞くと、『君がご執心の、ホーリーローマンエンペラーの仔さ』と!
信じられなかったね。でも、そこでは大喜びできずにポーカーフェースを決め込んださ。まだ手に入ると決まったわけじゃなかったからね。スタッフがオーナーのエヴァ・ブッシャー・ハーフナーさんに電話してくれて、そこで正式に売るとなった。取引成立ってわけだ」
「書類にサインをして、妻に電話したよ。人生で最高の馬を手に入れたぞ!この馬はチャンピオンになる!って。たったの1万500ユーロ(約150万円)の買い物だったよ!」
さて、フリン厩舎はアイルランドの中で実績のある厩舎というわけではありませんでした。
もっとも有名な勝ち鞍は、障害レースのチェルテナムフェスティバルというイベントで、モンテラードや牝馬フレンチバレリーナで障害G1を勝ったことぐらい。
平地では、オープン特別がせいぜいという成績でした。
「今まで700の勝ち鞍を積み上げて、いい馬も何頭か持たせてもらった。その馬たちのいい面を、デザインズオンローマはすべて兼ね備えていたよ!」
「まず、美しい馬だった。2歳馬と思えないほど大人びていたね。3歳になったらもっと良くなるんだろうと思った。サイズも、ホーリーローマンエンペラーの仔としてちょうどいいサイズだったしね。だから、私はなぜこの馬が売れ残っていたのかさっぱりわからなかった。たぶん、この稼業やってるプロ100人に聞いてもみんな同じ答えだと思う。私は運がよかったね」
フリン師は妻と相談しながら慎重にレースに下していきます。
2012年の5月に2度レースに使い、その後休養を挟んで8月の1400m戦で初勝利を飾りました。
「最初は短い直線だけで手一杯という感じで、月を経るごとに徐々に距離を伸ばしていったんだ。バランスよく育つよう、様子を見ながらね。長い距離がいけるようになったら、右回り、左回りとコーナーの練習。左右バランスよく筋肉もついていったね。当時、2歳馬としてはまだもう一段階成長の余地はあったんだけど、レースでは十分やれると思った。6〜7月に6週空けて初勝利を挙げたんだけど、まだまだ弱い部分もあったんだよね」
陣営の我慢強さにこたえるように、デザインズオンローマは徐々に開花の時を迎えます。
アイルランドにおける2歳馬の登竜門、G1ビンセント・オブライエンSで、後にこの世代のチャンピオンとなるドーンアプローチの2着と好走するのです。
「乗っていたダニー・グラントが、あと1ハロン(200m)あれば勝てたって言ってたよ。なぜなら、ゴール200m手前では5番手で、そこから鬼のような末脚を見せたからだって。我々もそう思ったもんだよ」
「で、レースの次の日、馬のトレードを専門にやってるエージェントの、ピーター・ドイルから電話がかかってきて、香港にいる人が興味を示しているって言うんだよ。私はピーターに、まだ早すぎると言って、それからこの馬について自分なりの考えを言ったんだ。そこから議論になった。で、結局売ることにしたんだ。この時、相手方となるジョン・ムーア師に伝言を頼んだんだよ。きっと、あなたの調教師人生の中でベストホースになるだろうと。そして、その通りになりつつあるよね。あとは、神のご加護さえあれば実現するよ!ダービーも、この馬が本調子でありさえすれば、チャンスは一杯あると思うよ!」
フリン調教師は、ダービーでの雄姿を見に、香港まで観戦に来るそうです。
「助手の息子と一緒に行くよ!楽しみだねぇ。重賞とリステッドレース(オープン特別)は勝ってるけど、チャンピオンを持つってのはそうそうないからね。再会が楽しみだよ!何よりも、ベストの状態のこの馬を見てもらいたいね。ちなみに、全妹が今モイグレールスタッドにいるんだ。だから、お兄さんの活躍は重要だよ。もちろん、この馬のお父さんのホーリーローマンエンペラーを持ってるクールモアにとってもね。皆さんの尽力に感謝するよ。ホント、上手くいくといいね!」
かつてのトレーナーは、思ったよりも饒舌でした。


 
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