被災地の人手不足は将来の首都圏を投影

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月11日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。東日本大震災における被災各地の雇用状況などを解説した。

復興支援イベント「ゆめあかり3・11」が開かれ、優しい明かりに包まれた会場ではステージで歌や楽器の演奏が披露され、訪れた人の心を和ませた=2019年3月9日 写真提供:産経新聞社

東日本大震災、発生から8年

東日本大震災の発生からきょう(2019年3月11日)で丸8年となる。復興庁によると、避難者は1年前と比べ約2万人減少し、5万1,778人。特に福島では東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、約3万2,600人が県外で避難生活を送っている。きょうは平成最後となる追悼の集いが被災各地で開かれる。

飯田)政府は3月8日の閣議で、東日本大震災からの復興に関する新たな基本方針のなかに、平成32年度に廃止される復興庁の後継組織を置くことを初めて明記した。これが週末はニュースになっておりました。

須田)復興の本質は何かと言うと、もちろん住居や職場などが復興することもそうなのですが、果たして経済的に自立しているのかどうなのか。あるいは経済的に成長する可能性があるのかないのか、というところだと思うのですよ。カンフル剤を打ち込む…要するに補助金とか税金を投入することによって、経済的な環境を維持して行くことはできるけれど、それは必ずしも自立しているとは言えないわけですよね。そういったものがなくなったときに、果たして将来展望がどうなのかと考えると、相当厳しいのではないかなと思うのですよ。そういう状況では、なかなか故郷に戻って来る意欲も湧きづらいと思います。

津波によって浸水した宮城県仙台市宮城野区沿岸(2011年3月12日)。津波火災も発生した(東日本大震災 – Wikipediaより)

東北地方で盛んな漁業は、加工とセットでなければ成立しない

須田)東北地方、特に太平洋側で言うと、漁業が経済産業の大きな柱です。でも漁業は、ただ単純に魚を取って来て市場で売れば成立するものではなく、それだとほとんど旨みがないのですよ。やはり加工すること、加工工場とワンセットになっていなければ漁業は回って行かない。最近、立派で綺麗な加工工場はできているのですが、働き手がいないのですよ。加工業に従事する人たちの確保がなかなかままならない。
そこは誰が支えていたのかと言うと、地元の家庭の主婦など、パート・アルバイトという形で女性の手が中心になっていた。そうすると賃金も比較的安く抑えることができるので成立していたのですが、いまはうまく進んで行かない。加えて、漁船は頻繁に入港するようになったけれども、これは東北地方に限定する話ではないのですが、漁船に乗って従事している漁師の方々はほとんどが外国人なのですよ。船長も外国人というケースもあります。漁船を持っている網元はもちろん日本の企業ですが、いわゆる3K職場の最たるところですからね。

飯田)そうなってしまいますよね。

須田)こういったところも大きく人手不足になっていることが伺える。加えて、その加工場がきちんと機能していないと、浜値が安くなるのですよ。

飯田)水揚げしたときに、値段が安くなってしまう。

須田)そうすると漁船の方も所属している港に陸揚げするのではなくて、高く買ってくれる港に魚をどんどん持って行ってしまい、お金が回らない状況になってしまうのですね。

飯田)行政としては、例えば港を整備するとか加工場を整備するとか、箱モノの部分は得意だけれども、人繰りの部分は強制的に移せないところですよね。

須田)尚且つ、そういった産業を行政主導でやったところで、結果的にマーケットメカニズムでの価格は決まっています。だから継続的な漁業ということなると、行政が全面に出てもあまりうまくいかないと思います。

政治 参院法務委員会で出入国管理法改正案の採決が行われ横山信一委員長へ詰め寄る与野党議員ら=2018年12月8日未明、国会・参院第23委員会室 写真提供:産経新聞社

被災地の人手不足は将来の首都圏を投影している

飯田)突き詰めるところは人手不足、これは日本全国で問題になっていることですが。

須田)そう考えると、東北の遠い地方のことに思えるかもしれないけれど、もしかしたら5年後10年後の東京、または東京近郊の地方都市など、我々が住む地域の将来が投影されているようです。それをどうするかは、自分たちの問題を考えることにも繋がって行くのではないかなと思います。

飯田)移民の問題とも直接つながって来ますよね。日本人も雇用が苦しくはない状態であるとは思いますが、まだ全員が完全雇用というわけでもない。そこに外国人を入れるのかという問題ですが、でも実際に人手不足は顕在化しているわけですものね。

須田)その地域で自分の将来がきちんと描けないところから、なかなか入って来ないのだろうと思います。もちろん故郷に戻りたいという気持ちは強くあると思いますよ。そういった将来展望が描ける、生活提供ができるような状況を行政がどう手伝えるのか、国としてどうバックアップできるのかが1つのポイントだと思います。

飯田)避難された方は7、8年も経つと…。

須田)避難先で生活が成り立ってしまいますからね。子供も学校に行って友達ができるでしょうし、近所づきあいもできるでしょう。仕事に勤めて、そこで生活が成り立っているところで戻って来いと言われても、ということになってしまう。

飯田)鶏が先か卵が先かという話になりますよね。産業がないから人が来ないのか、まず人が来てくれないと産業が成り立たないのか。ここから先、どんどん深刻になって行くわけですよね。

須田)だからその場しのぎではなく、10年、20年というロングスパンで考えなければいけません。

飯田)復興地は新しいものができるとしたら、そういう全体の絵を描けるようなことにならないといけない。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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