中距離核戦力(INF)全廃条約とは何か~アメリカの条約破棄の意図は対中国

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月22日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中距離核戦力(INF)全廃条約についての詳細を解説した。

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調印時の写真。ミハイル・ゴルバチョフとロナルド・レーガン(中距離核戦力全廃条約 – Wikipediaより)

中距離核戦力全廃条約~原点は70年代の戦略兵器制限交渉

トランプ大統領は先週末、ロシアとの中距離核戦力全廃条約について、「破棄するつもり」と表明した。ロシアの条約違反や、中国への対抗上、アメリカも中距離ミサイルの開発・配備を進める必要があることを理由に挙げているが、そもそもこの条約はどういったものなのか。トランプ大統領の意図は何か。

飯田)今朝の朝刊各紙1面トップはこのニュースが多いですね。「INF全廃条約破棄へ」です。写真を見るとレーガン大統領とゴルバチョフさんが出てきます。懐かしいですね。

須田)「戦域核」と呼ばれている分野の小型核兵器ということですが、そもそもこうした合意の条約の原点になっているのが、70年代のSALTという戦略兵器制限交渉です。大陸間弾道ミサイルのような大型核兵器をとにかく廃棄しようとしたのが、すべてのスタート地点となっています。

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SALT-IIの条約にサインするカーターとブレジネフ(戦略兵器制限交渉 – Wikipediaより)

このままでは核開発競争再開の可能性が

須田)当時は米ソを合わせると、地球を何十回も破壊できるような核を保有していました。結果的にそれが恐怖の均衡となり、使えない状況になりました。しかし、「いつか、もし間違えて核のボタンを押したらどうするのか?」という恐怖が出てきたものだから、それについて「順次削減していきましょう」と、ここからずっと中距離、戦域という形で進んできました。それをまた逆流しかねない状況になってしまうのでは、と思うのです。
つまりこれでアメリカVSロシア・中国の核開発競争になってしまうと、また元の木阿弥です。では、これはどこのレベルでストップするのか。ある種の合意が無ければ、止めどない核開発競争になってしまう。それがいちばん怖いですね。

飯田)“サンライズやすさわ”さんからのメールです。「中国と緊張関係にあるなか、アメリカが破棄したがるのも至極当然と思うのですが、何よりこのアメリカの動きで中国が軍拡化を推し進める懸念がありますよね」といただきました。これは米露での条約ですが、やはり中国念頭が大きいのでしょうか?

須田)もちろんです。元は旧ソ連との間の交渉でしたが、核保有国としてここ近年中国の存在感が増していますから。中国を意識しての行動だと思います。

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1983年、第9回先進国首脳会議にて(右から3人目)(中曽根康弘 – Wikipediaより)

SALTの裏条約から無関係の周辺国も巻き込まれるリスクが出てくる

須田)心配な部分があります。先述したSALTですが、当時は削減以外に裏条約がありました。今日においてもほとんど表に出ませんが、実はこの交渉時にいちばん重要なポイントは「不本意に、予期せぬ形で核が使われた場合に、どう報復するか?」について裏条約が結ばれていた点です。どこかの都市を対象にミサイルが全部向いていて、そこが不本意な形で攻撃されてしまったらどうするのか。そのまま収めるわけにはいかない。そこでサクリファイス(犠牲者)リストが当時結ばれた形跡がある。そこに10~20の都市の名前が入っていました。アメリカがソ連側に提示した都市名の上位にはアジアの都市が入っていたのです。つまり、「アメリカが誤ってソ連都市を攻撃してしまった場合、ソ連はアメリカ本土ではなく、アジアを攻撃してもいい」ということです。そう考えていくとこの問題は、アメリカとロシア、中国とロシアで行われている問題ではない。日本も含めた、無関係の国も関係して来る可能性があるのです。それが、この問題の怖いところです。

飯田)INF全廃条約締結時に中曽根政権が当時すごく働きかけをしたのは、そういう背景があったのですね。「抑止力の傘の下にいるけれど、それだけではない」と。

須田)おそらく中曽根さんはその辺の事情を知っていたのだと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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