CPサッカーの監督をやる上で各々のよさをいかにつなぎ合わせながら石垣として組み上げていくか 【安永聡太郎(CPサッカー日本代表監督)インタビュー】

【ニッポンチャレンジドアスリート】
このコーナーは毎回一人の障がい者アスリート、チャレンジドアスリート、および障がい者アスリートを支える方にスポットをあて、スポーツに対する取り組み、苦労、喜びなどを語ります。

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安永聡太郎(やすなが・そうたろう)

1976年山口県生まれの40歳。清水商業高校を経て、95年、Jリーグ。横浜マリノスに入団。清水エスパルスやスペインのクラブでもプレー。2005年引退。今年4月からCPサッカー(脳性まひ7人制サッカー)の日本代表監督に就任。

―安永は引退後スペインで監督修行を目指したが、ハードルは高く、どこかで指揮を執りたいと思っていたところに舞い込んできたのが障がい者サッカーの一つ、CPサッカー日本代表監督の話だった。

安永 引退した後に脳性まひのCPサッカーの代表監督が空いていて探しているんだけど、興味はあるかい? という連絡をいただきました。すごくいいチャンスと機会をいただき、僕でよければやらせてくださいと答えてスタートしました。
ひたむきさと一生懸命さにまず、心を打たれましたし、当然体にまひがあるわけですから不自由なところもあるのですが、それをどうにか補おうとする。その中でもどうにかしてボールに対してサッカーをプレーするのだというところを見て、彼らを変えられるために、少しでも役立つところができればと思いました。

―脳性まひを持つ選手たちがプレーするCPサッカー、一般のサッカーとはルールが違うのだろうか?

安永 CPサッカーのサイズは大人のフルピッチの約半面です。そのサイズのなかを7人制でプレーをします。キーパー1人、フィールドプレーヤー6人、オフサイドはなし。まひがあるのでスローイングも上から両手では投げられないので、片手でボーリングのように転がしてもOKです。でも基本的にはサッカーと何ら変わらないというのが、僕個人としての印象です。

―Jリーガーとして在籍した横浜マリノス時代の97年、アスカル・ゴルタ監督と衝突した時安永はスペイン2部リーグのチームに期限付きで移籍することになった。

安永 もともと95年のワールドユースでスペインと戦った時から憧れはあった。そこにスペインの監督が97年の頭から来て、3カ月くらいで監督とケンカして「お前はいらない」と言われたので、「じゃあ、スペインに行かせてくれ」と言って、スペインの2部にテストを受け、1チーム目で合格。向こうでプレーすることになりました。

―まだJリーガーの海外移籍が盛んになる前に一人海を渡った安永。言葉もままならない状態で2部とはいえスペインのチームで主力の座を勝ち取った。

安永 7月はスペインの選手たちにとってはバケーション明けで体を作り始める時期なんです。そこに僕は3カ月間、Jリーグで戦って体が出来ている状態だったので、最初は僕の方がコンディションは明らかにいい。その中でのプレーで僕がキレキレでうまく見えたのですね。そこで契約したのですが、彼らのコンディションが上がって来た時に「あれ? コイツたいしたことなくない?」と一時期にはなったのですが、そこでプロになって初めてもう一度自分を奮い立たせたんです。それが2か月後くらいに出て来てポジションも取ることができました。それなりの評価をいただいき、いいシーズンを送れました。

―安永がスペインで感じた日本のサッカーとの大きな差とは?

安永 どんなサッカーでも負けたくないので、試合前のちょっとしたゲームですら本気でやります。そういう勝ち負けに対するこだわり、本気度は日本にはないところですね。

―徹底的な勝負へのこだわり。スペインでの経験は監督・安永を支えている大きなバックボーンとなっている。CPサッカー代表監督に就任した安永、最初の仕事は7月末から開催される世界選手権への切符をかけた予選大会。その代表メンバーを選ぶことだった。

安永 僕のやりたいサッカーについててきてくれるであろうなという選手たちを選びました。今、CPサッカーの日本代表は13人います。今回に関しては30人の中から13人に絞らさせていただきました。
1次選考、2次選考をやって13人を決定したのですが、その選手構成というのはCPサッカーにはまひの度合いによって8・7・6・5と分かれています。8というのが体のどこかにまひがある方、7は半身まひの方、5・6は四肢にまひのある方なんですが、その選手たちを7人制のゲームなので8の人を一人使ってもOK。5と6の人から必ず一人使わなければいけない。
そこで、7の人たちで残りを構成するのが一番強いですよね。同じ7の半身まひの人でも軽い人もいます。そういう人たちは50メートル6秒9で走ったりするのでそういう人たちがより多い国が強いですね。

―CPサッカーではまひの程度によってプレーヤーが4つのクラスに分かれる。障がいの軽い選手、重い選手を必ず入れてチームを編成しなければならならず、監督としての手腕や戦略が問われる競技だ。

安永 軽い方と重い方と両方いらっしゃるので、その中でできることを僕がポジションの中でどう役割を与えるのかというところが重要なところかなと思います。それぞれの選手の障がいの部分を監督がどうとらえてどうプラスに持っていくか。麻痺のあるのが右なのか左なか、それによってピッチの右サイドに立たせるのか左サイドに立たせるのか、僕の立たせ方次第で反転の得意な方、苦手な方とあるので、その辺の組み合わせが一番考えさせられるところですね。

―残念ながらリオパラリンピックの出場を逃した日本。さらに4年後の東京大会では競技種目から除外されることがすでに決まっている。安永は今後に向けてどんな展望を描いているのか。

安永 東京のパラリンピックからはCPサッカーは外れています。24年にもう一度パラリンピック種目として入るためにどうするべきか。CPサッカー界としてはパラリンピックという一つの夢の舞台が整っているということは大きなことだと思うのでそこを目指したいと思っています。

―安永監督の初陣は7月末からデンマークで行われる世界選手権への切符をかけた予選大会。8つの出場枠を巡り13チームが4つの組に分かれて戦う。

安永 来年のアルゼンチンで行われるCPサッカーの世界大会があるのですが、その出場枠が16あります。まず決まっている8が今回のリオパラリンピックの出場国の8か国、残りの8つの出場権をこの夏の7月にデンマークで争います。CPサッカー監督としての初舞台です。フィンランド、デンマーク、カナダの順で戦うのですが、レベルはほぼ互角なのでフィンランド、デンマーク戦で決めたいです。2位以上が上がれるので、頭二つの試合で選手には頑張ってもらって、決勝トーナメントを目指したいです。

―指導者としてさまざまな経験を重ねている安永、そんな彼にはいつも心がけている言葉がある。

安永 僕の好きな言葉で「野面積み(のずらづみ)」というものがあります。これはお城のお堀の大きく「切込接ぎ(きりこみはぎ)」というのと二つに分かれているのですが、その中の野面積みというのはある石の大きさをいいところといいところをつなぎ合わせてお堀として組み上げていく。切込接ぎというのはすべての形をきれいに整えて見た目重視で整えて並べていく。
僕は監督をやる上で各々のよさをつなぎ合わせながら石垣として組み上げていくことが重要だと思います。その中でいくとこのCPサッカー日本代表監督として携わったというのは、当然ながら出来ることと出来ないことはあるので、その部分をどのようにつなぎ合わせていくのか、どのように組み立てながら自分が目指すべき方向に積んでいけるかというところのいい勉強になると思っています。

―改めて安永にとってCPサッカーの魅力とは?

安永 出来ることと、出来ないことがはっきりしているので僕が捨てられないものは選手も捨てられないと思っています。逆に僕が積極的に捨ててあげることによって彼らは 一度捨てたところから前向きに取り組めるのではないかと思います。僕は彼らがする決断を手助けしてあげる。そして彼らは決断した思い切ったプレーで見ている者に応援してもらえる一人の選手になることができるというところが魅力なんじゃないかなと思います。

(2016年7月11日~7月15日放送分より)

ニッポンチャレンジドアスリート
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(月曜~木曜は「土屋礼央 レオなるど」内、金曜は「金曜ブラボー。」内)
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