1242 ニッポン放送
本屋は最高!
塚越孝
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6月18日
「うさぎのミミリー」(庄野潤三著/新潮文庫)
今週は文庫本をご紹介。
既に単行本でお読みの方もいるでしょう。
庄野潤三という人は、もう私が生まれる前に
芥川賞を取ってまして、学校の先生を経て、
大阪のABC・朝日放送にいたこともあるんです。
その時に小説家になっているんですね。

なんてことない老夫婦の日常が描かれている
だけなのですが、不思議と引き込まれます。
これが、作家の筆力というものなのでしょう。
孫がミミリーといううさぎを飼っていて、
川崎・生田の丘の上に住んでいる
祖父母のところにたまに預ける。
食べ物の話、酒の話など、実に飾らない普通の話。

巻末に江国香織さんとの対談が載っているんですが、
江国さんが絶賛してます。
「世の中の手あかのついた言葉を、手あかがつく以前の
本来の佇いで使われる」
こっれて、実はたいへんなことです。
なんてこと無い話の連続なんですが、スーッと入ってきて、
ドンドン読み進んじゃう。
ぜひ、いい天気の日に、早起きして、
朝陽の中で読みたい一冊!

<著者について>
庄野潤三(しょうの・じゅんぞう)
1921(大正10)年、大阪府生まれ。
九州帝大を2年で終え、海軍に入る。
戦後、教職を経て、朝日放送に勤め、小説を書き始める。
54(昭和29)年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。
平穏な日常の危うさを描き、「第三の新人」の1人として
活躍する。
60年の「静物」で新潮社文学賞受賞、
65年の「夕べの雲」で読売文学賞、
72年の「明夫と良二」で赤い鳥文学賞、毎日出版文化賞受賞。
現在、芸術院会員。




 
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