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みのりの日記
栗村 智
栗村 智
 
diary
2月21日
たんかんで知る「春」
ここ数日、少し暖かくなって「春近し」を感じますよね。
皆さんが「春近し」を感じるのは、どういう現象からですか?
我が家では「沖縄たんかん」が届くとそうなんです。

「たんかん」…。
鹿児島県屋久島・沖縄県北部で、2月下旬から3月上旬に収穫される
甘みのツヨ〜い、柑橘系の果物です。
なんでもポンカンと、ネーブルオレンジの配合で出来たものだそうですよ。
二年前まで約30年の間、この時期、2週間以上
南九州・沖縄へプロ野球キャンプ取材で出張していましたから、
こういう珍しい果物にも、よく遭遇するんですね。

「たんかん」を知ったのは1980年、
ロッテオリオンズ・鹿児島鴨池キャンプ取材で、
当時、現役サウスポーだった小俣進投手に、
練習休みの日に連れて行ってもらった「谷山青果市場」
(小俣選手の後援者の経営する青果卸店がある)で、
お土産にもらったのがきっかけでやみつきになりました。
そのときは、鹿児島屋久島産だったのですが、
沖縄北部産も甘みが強く、且つさわやかで、
鹿児島に行かなくなった後は、沖縄の牧志市場から、
毎年、知人・自宅に送っていました。

スポーツアナウンサーを引退してからは、
長い付き合いのおかげで、いつもの沖縄の青果卸のおばちゃん
(沖縄では、オバアと呼んでも怒られません)が、
この季節になると黙っていても、
「今年は、どうしますか?」と連絡してきてくれるんです。
今年も大粒のビタミンCたっぷりのあまーい「タンカン」をほお張ると、
春の訪れを、感じますね。

今週の「栗村智あなたと朝イチバン」は、
「産地直送・アナタに春一番」と題して、
千葉・秀じい農場の採れたて新鮮野菜セットプレゼントなど
盛りだくさんで、お送りします。
あなたの「春イチバンリクエスト」、周囲の春を見つけた話題など、
どしどしお寄せください。
お待ちしています!
2月15日
根津のパン
いやぁ、このところ寒いですねェ〜。
地球温暖化に危機感を持ちながらも、こう寒いとねぇ。

思い出します、37年前、大学入試で広島から上京した頃を…。
親父が奮発して用意してくれた寝台特急「あさかぜ」号に乗って、
降り立った早朝の東京駅プラットホーム。
吹き抜ける風の冷たかったことったらありませんでしたね。
故郷・広島、瀬戸内の温暖な冬しか知りませんでしたから驚きました。
宿舎は、親父の勤め先の宿泊施設、確か根津でした。
迷ってしまうのが怖くて、地下鉄利用などできず、
上野駅から不忍池沿いに歩きましたが、
池の水面を走ってくる風は、高校の学ランと襟巻きだけの私が
初めて経験した“世間の冷たさ”でしたね。

今は地方からの受験生のために、
ビジネスホテルが「必勝弁当」などと称して、
至れり尽くせりの宿泊プランがあるんですから変わったもんです。

私の試験日の弁当は、その根津で、朝早くから開いていた
自家製パン屋さんのポテトサンドとハムサンドでした。
随分前に、そのパン屋さんの前を通ったら、
今は小洒落たカフェテラスになってました。

でも、今も通りすがりのパン屋さんのショーウインドーに、
薄切り食パンの間にポテトサラダ、たまご、ハムが挟まれた
手作りサンドイッチを見かけると、
やたら懐かしくなって、買ってしまうんですよ!
2月 9日
師弟関係とは
ついにというか、ようやくというのか、
前・時津風親方が逮捕されましたね。
一人の大切な若い命を摘み取ったこの行為、
師弟関係って何なのか、考えさせられました。
一日も早い真相の究明が、待たれますね。

一方で温かい師弟関係で毎朝ほろりと来てしまうのが、
NHK連続テレビドラマ「ちりとてちん」。
佳境に入ってきましたよ。
ほれてほれて師匠に入門した若手落語家たちの
噺家修行の様子が気になって、毎日ビデオにとって観てるんです。
大相撲と落語界では、かなり違うとは思いますが、
それぞれの持ち味を、切磋琢磨することに違いはありません。

昨日、その師弟関係で、ほほえましい師弟関係を目の当たりにしました。
お江戸広小路亭で開かれた「第十回瀧川鯉昇一門会〜鯉の放し飼い」。
大好きな鯉昇師匠の一門会、七人のお弟子さん総出演、
呑ん兵衛集団のご一門ですから、純米原酒をかかえて楽屋に伺いましたが、
7人のお弟子さん総がかりで、入場者に配るチラシをせっせと揃えながら、
いやまあ、そのにぎやかなこと…。
ちなみに広小路亭の楽屋は、4畳半と3畳の二間だけという狭さでした。

開演の30分前に鯉昇師匠到着。
普通ならここで、楽屋全体にピーンと緊張感が走るのが、ほかのご一門。
ところが、鯉昇師匠を中心に取り囲む7人のお弟子さんは、
まるで、おやじが仕事から帰ってきたのを迎えるような和やかさ!
狭い広小路亭にぎっしりと詰め掛けたお客さんを前に、
ぞくぞくと鯉昇一門がお目通り。
古典落語と正面から格闘してる鯉之助・鯉橋、
北海道なまり丸出しの、へんてこりんな創作落語を操る鯉枝、
名門・明治大学出身ながら、十二支をまともに言えない鯉太その高座は、
助け舟を出したくなるような危うさ…。
元・暴走族の総長鯉斗・つっかえないで、下げまでいけた高座を、
見たことがない入門2年目の鯉八。
そして、唯一の真打・鯉朝。
(この人だけ、なくなった柳昇さんのお弟子さんで預かり弟子)
ほんわか軽〜い芸風の師匠のお弟子さん、
いやぁ、ひとりひとり個性の強いこと。

長屋の花見で高座を締めた鯉昇師匠は、優しそうな目で、
ほほえみさえ浮かべて、弟子たちの芸を、袖で見てらっしゃいました。
師匠いわく「NHKのドラマの師弟関係は、一昔前の修行風景ですね。
うちは一門会の副題通り放し飼いですよ。
のびのび泳いでくれてるうちに、何かつかむでしょう、たぶん…」と。
終演後の打ち上げも除いてみたくなるような、ほんわかとした環境で、
先々、どんな噺家さんに育っていくか、帰りの電車の中でも、
思わず微笑が、浮かんできてしまうくらい心地の良い夜でした。
1月31日
久しぶりの春団治師匠
久しぶりに春団治師匠を聴きに、読売ホールに行ってきました。
「東西落語研鑽会」。
東西で一流の噺家が集まる、小朝さんの声かけで始まった
この落語会も、今年で5周年を迎えるそうです。

上方落語界を建て直した四天王、
(故・松鶴、故・文枝、米朝、春団治)のお一人、3代目・桂春団治師匠。
この四天王も、今や一席務めるのは高齢で難しい米朝さんと、
二人になってしまい、私も東京に来られる度に追いかけているんです。
様子の綺麗な、かつ本格的な上方落語の語り手で、
ライブでは、野崎参り・代書屋・お玉が牛・子ほめ・高尾・皿屋敷・
親子茶屋・祝いのし・平林・寄合酒を、聞いたことがあるのですが、
この日は「いかけや」。
これを聴いて、ほぼ3代目の得意ネタは全部ナマで聴いたことになるのです。
今年3月で77歳になられますが、いつもの、目にも鮮やかな色紋付、
高座に登場して、途中で、羽織を、スパッとぬぐ早業…。
なにからなにまで、ほっとさせる至芸でしたよ。

後から上がった小三治師匠が、先日、NHK衛星第2で放送した、
2006年秋に公開された映画「そうかもしれない」での、
春団治師匠の自然な演技(雪村いずみさんの夫役)を絶賛していました。
これまでも、いろんな映画に、いろんな噺家さんが出演してきましたが、
誰もがスクリーンに映し出されると、どうしても無駄な演技が多く感じられたもの。
でも、春団治師匠の場合は、芸人の年輪がそうさせるのでしょうか。
「自然な演技というものを見せてくれた」と小三治師匠が仰る通り、
客席で「うんうん」とうなずいていた私でした。
何事も「自然に…」というのが難しいのです。

私たちアナウンサーもそうですね。
自然に聞きやすい放送が出来るようになるのは、いつの日のことやら…。
それが出来ないうちは「毎日毎日機嫌よく!」を、
モットーにしていきたいと思います。
1月25日
忘れられない笑顔
かつて阪神・横浜大洋で活躍した「唄って踊れる解説者」、
加藤博一さんの肺がんでの死。
ショックでした。
2年におよぶ闘病生活、最後まで明るく振舞って亡くなられました。

23日、氷雨の中で行われた通夜に伺ってきました。
現役最後のゲーム、「横浜大洋×広島」戦は、私が実況しました。
解説者になられてから、スカパー野球中継でご一緒させていただきましたし、
何より思い出されるのは1994年、
「落合博満野球記念館」のゴルフコンペの司会を一緒にしたこと…。

かつて、毎年シーズンオフの1月、落合記念館のある和歌山県太地町の近く、
那智勝浦カントリークラブに落合博満さんと親しい仲間で開いていたコンペ。
地元に近い人はいいけれど、遠い関東地方からは…。
でも「関東の野球関係者も来ないと淋しいから…」といって、
自費で加藤さんは来てくれました。
その表彰式とパーティーが笑顔で満ちたのは言うまでもありません。
ひょうきんものという反面、野球への熱い情熱と心配りの人でした。
それにしても、56歳の若さで…。

通夜の帰途、東京駅のプラットホームに大阪行のブルートレイン、
寝台急行「銀河」が停車していました。
この「銀河」も3月14日でなくなるのです。
乗換えの電車を待ってるうちに、
昔懐かしいブルートレインあさかぜ号と同じ仕様の車両が、
薄ぼんやりとかすんでしまいました。
「そうだ、大学受験で上京した時、親父が無理して、
広島から東京まで寝台券を取ってくれたんだよなぁ…。
俺の青春の1ページなんだなぁ、ブルートレインって」

月日の流れは早いですね。
あれから36年かぁ…。
うかうかしてはいられません。
一日一日機嫌よく過ごしていこうと、改めて強く思いましたよ。
 
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