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みのりの日記
栗村 智
栗村 智
 
diary
5月18日
圓生を知らない子供たち
”圓生が終わって、僕らは、生まれた
 圓生を知らずに 僕らは育った”

こんな替え歌知ってますか?
昭和45〜6年に流行ったジローズの「戦争を知らない子供たち」をかつて、
亡くなった古今亭右朝師匠が、高座の枕でしゃべっていたのを憶えてます。
今から20年くらい前、落語界の若返りを皮肉って苦笑いしていましたね。

昭和の名人6代目三遊亭圓生が亡くなったのは1979年(昭和54年)9月3日。
千葉は習志野で老いさらばえたところなく、現役噺家のまま、口調の衰えさえ見せず、私たちの前から消えていきました。
実に持ちネタ300と幾つ・・・客席で聴く話は、家に帰って広げてみて比べた青蛙房の圓生全集の中身と一字一句違わなかった・・・。
その時々の枕の後は、その一つ一つのネタの完成度の凄さに唖然としたものです。
神田祭が終わり、週末には三社様、折しも大相撲5月場所は真っ盛り・・・。
爽やかな陽気に心も軽く、この時期になると懐かしく思い出す6代目三遊亭圓生師匠の思い出に、ちょっとだけお時間を!!!

今、東京の寄席の定席では、落語協会も落語芸術協会も、共に真打昇進披露が行われているのです。
落語芸術協会は、桃太郎門下・昔昔亭桃乃助、鶴光門下・笑福亭和光。
落語協会は、木久扇門下・林家ひろ木、一朝門下・春風亭三朝、小三治門下・柳家小八、金馬門下・三遊亭ときん、馬風門下・馬るこ。 
両協会で新真打7名全員、名人圓生の生の高座を目にした人はもういないのですよね。
彼らの入門は2002年なんですからねえ・・・。
そうまさに、圓生を知らない子供たちなんですよ。

ちょうどこの時期、日比谷は東宝名人会5月中席の圓生師匠の高座が脳裏によみがえってくるんです。
日比谷の東宝ビルの確か5階、かまぼこ型の前にせり出したへんてこりんな高座、中席のトリは三遊亭圓生。
中央大学落語研究会の4年生だった私はこの中席に、ほぼ毎日中入り前くらいから、通っていたのでした。
当時、平日のお客様の入りは、あまりよくありませんでしたよ。
最前列は、ほぼ全席空いているくらい。
そこへ、中入り前に飛び込んでいました。
確かあれは、中席の最終日いわゆる楽の日・・・。
ちょうど大相撲5月場所の真っただ中、2日くらい前に「阿武の松」がかかっていたので、圓生師匠の持ちネタの中でもあまり頻繁には高座にかけない噺「稲川」をナマで聴きたいなあ・・・と。
ふと、客席で生意気この上ない欲求にいてもたってもいられなくなったのですよ。
まさに若気の至り!
いつものようにトリの時にあがる出囃子(ふだんは正札付)中の舞が聞こえてきて、その中の舞いっぱいで、お辞儀を終える呼吸で、高座へ姿を現した圓生師匠。
お辞儀から顔を揚げる瞬間、

「待ってましたっ!稲川!!!」

思い切って圓生師匠に大きな声で注文したのです。
人懐っこい笑顔をみせた後、

「ご贔屓様で有難く御礼を申し上げます。折しもお相撲の5月場所の最中でございまして”、関取千両幟(稲川)”のご注文でございまして、(上手を向いて前座の朝助さんにむかって)おい、相撲は出てるかい?」

「でておりません!」

「それでは、ご贔屓様のご注文で、関取千両幟でございます。」

と、何の動揺も無く、なめらかに稲川へと入っていきました。
それは、もう夢見心地のひと時でした。

「おなじみの関取千両幟、稲川でございます。」
「ありがと〜ございました〜、ありがと〜ございました」

元気な楽屋の裏方さんの追い出しの声。
あの圓生師匠が、深々と客席にお辞儀をしながら、最前列でかじりつきで聞いていた私のほうにチラッと向いて、「テヘッ!」てな感じでニコッと微笑んでくれたのが忘れられません。
ビロードのどん帳が上手から下手にずずずず〜っと滑っていくのを激しく拍手しながら、見送っていました。

持ちネタの多い、そりゃあタイヘンな噺家さんでした。
出来・不出来の差のほとんどない、いつ行っても満足させてくれる人。
でも、トリでない新宿末広亭や浅草では「四宿の屁」「おかふい」ってバカバカしい噺で肩透かしを食らったことも、今ではいい思い出です。
備忘録というか、ちょっと記憶が薄れないうちに書き留めておこうと、思い立ったもんですから・・・。
4月 5日
うまいもん寄席
横浜タカシマヤ・ニッポン放送がお届けする味覚の祭典「第7回ニッポン放送うまいもん祭り」。
今年もたくさんのお運び、ありがとうございました。

”お買い物に疲れた時に一休みしていただこう”と思って、始めた「うまいもん寄席」。
去年に続いて、横浜タカシマヤ8階催物会場の一角に俄かづくりながら、しっかりした、高座を設えました。
そして土曜日お昼のひと時、柳家わさびさんの落語、
かつてはニッポン放送でレポーターとして活躍した林家あずみさんの三味線漫談、
それに不肖わたくし栗村の素人落語で、お楽しみいただけたでしょうか???
100席ご用意した仮設のお客席に立ち見まで出る賑わいで、演じるほうも大感激でありました。
何しろ、高校中退しても噺家にと憧れた高座ですからね。

私自身は道楽以外の何物でもないのですが、せっかくお越しいただいたんだから素人芸だけをご披露しては申し訳ないと思い、バリバリの本職・プロの芸人さんに助っ人で、今年も来てもらいました。
修業歴14年目に入り、真打間近のわさびさん。
レポーターから一念発起、林家たい平さんに弟子入りして7年、今や寄席の色取りでトリを取る噺家さんの膝替わりを務めるようになった林家あずみさんの三味の音色も軽やかに三味線漫談。
そのあと生意気にトリをとって、一年間お稽古した落語「がまの油」を披露させていただきました。
いやぁ、着物は万馬券とった時に作った噺家さん顔負けの絹物ですが、私のやった落語は、いや〜ぁお恥ずかしい・・・。
がまの口上が聞かせどころですが、63歳の口の回りはイマイチで・・・でも!本人は、結構気分良かったですよ。

鶴光師匠にお許しを得て使った出囃子「春はうれしや」にのって高座に上がると同時に、「待ってましたっ」との声をかけていただいたお客様に大感激、気分のいいこと!!!
クセになりそうです。
とたんに、血圧上がって、しっかりお稽古した「がまの油」の口上の冒頭忘れっちまって、どうしようと実際冷や汗をかきました。
が、何とかごまかして、絶句しないで最後まで一席努められました。
ホント「待ってましたっ!」と声をかけていただいたお客さま、そしておしまいまで、居眠りしないで辛抱して聞いてくださいました方々、本当にありがとうございました。

さあ!「うまいもん祭り」が終わると、ニッポン放送「ショウアップナイター」中継の開始です。
今年もよろしくお願いいたします。
2月28日
スプリング、ハズ、カム
まだまだ寒さのきつい毎日が続きますが、皆様お元気ですか?
わたしゃ、のんびりマイペースでやっとります。

代休を取った月曜日、ふと思い立って、喬太郎師匠初主演映画「スプリング、ハズ、カム」を観ようと、スマホで検索してみました。
現在地の松戸から至近距離の映画館は・・・ありゃ、2月18日から全国ロードショーの予定とは聞いていましたが、武蔵野館が午前10時30分からの毎日一回だけ・・・。
あとは渋谷のユーロスペースが、夜6時30分からの一回。
『ありゃりゃ、こりゃだめだ』と半分あきらめかけた昼下がり、千葉をクリックしたら、な、なんと!千葉ニュータウン「USシネマ千葉ニュータウン」の午後3時40分一日一回の上映を見つけました。

『今なら間に合う!』

慌てて、新京成線の松戸から、新鎌ヶ谷で北総線に乗り換えて、印西牧の原に到着。
ここでスマホが下した決断は、USシネマまで「歩いて40分」!?
今の時刻は「3時10分」!
えーっ、間に合わない!
あっ、タクシーが一台いた、助かった・・・ところが!

『あれ〜ぇ、運転席に誰もいな〜い???』

ここで出した決断は、諦めず運転手さんが帰ってくるのを辛抱強く待つ!
この一手に絞りました。
寒さに震えて待つこと5分、駅前のATMから運転手さんがジャンパーのポケットに手を突っ込みながら、タクシーへと走ってくるではありませんか・・・。
わたしゃ、そのおじさんが天使にみえましたよ。

印西牧の原から、大き過ぎるジョイフルホンダの建物に不安を憶えましたが、無事、上映開始10分前にUSシネマに到着、平日の閑散とした劇場へ・・・。
「スプリング、ハズ、カム」はスクリーン10。
息せき切って座ったスクリーン10・・・先客はおばさん二人連れだけ、私で3人。
30年前の池袋演芸場を思い出すほどの寂しさ。
まっ、月曜の昼下がりだもの・・・仕方ないか。
ふかふかのシートにドッカリと腰を落ち着けて鑑賞できました。

ストーリーは、男一人で育てた一人娘が東京の大学に進学。
郷里の広島から二人で上京して、娘の部屋探しをするっていう、淡々としていて、のんびりとした和む映画でした。
今をさかのぼる45年前、かくいう私も東京の中央大学に進学が決まり、郷里の広島から親父と上京しました。
映画の肇と璃子の父娘と同じように、父と息子で慣れない東京を部屋探しで歩き回った思い出があるのですよ。
武骨な面白味のない鉄道員だった我が父と一緒に部屋探しをしたり、家財道具を買い集めました。
父が子の成長を喜びつつ、子は親の有難さを感じながら、初めての東京を歩き回る・・・映画とダブって、懐かしいのなんのって!
また、喬太郎師匠の淡々とした親父の演技に魅かれました。
璃子ちゃん役の石井杏奈ちゃんの可愛らしさと相まって、ほのぼのとした作品に仕上がっています。
上映館と上映時間を、スマホでご確認の上、ぜひご覧あれ!

そうこうしてるうちに、また、春がやってくるのですよ。
2月 2日
正楽師匠の「紙切り」注文ランキング!
「ついこないだ、マッカーサーが日本にやってきたと思っていたら、もう今日は2月2日なんですからねえ・・・うかうかしてられないですね。」
これは平成17(2005)年に急逝された桂文朝師匠の懐かしい「まくら」ですが、
ついこないだ、トランプが大統領になったと思ったら、もう今日は2月2日ですよねえ・・・ホント、うかうかしてられませんよ。

正月にいただいた年賀状を整理していて、正楽師匠からのはがきに手が止まりました。
我が家は昔から寄席演芸の正楽師匠の大ファンで、うちの至る所に師匠の紙切りが額に納められて飾ってあるんですよ。
毎年寄席のお客様からの注文ランキングが書いてあります。

【平成28年の注文数】
第一位:五郎丸 42 
第二位:宝船 36 
第三位:藤娘 34 
第四位:ひな祭り 30
第五位:鯉のぼり 26
第六位:竜 26  
第七位:正楽 25 
第八位:お花見 24
第九位:酉の市 24 
第十位:ゴジラ 23
 
去年終盤急激に伸びたのが・・・

13位:トランプ 17 
25位:ピコ太郎 5

だそうですよ。

全て正楽師匠ご自身で、ちゃんと毎年統計を取られているんです。
そうですか、去年のトップは五郎丸なんですねえ。
一昨年もトップは五郎丸で、52だったんですって。
紙切りは物のシルエットを切る芸ですから、なるほど、五郎丸のあのルーティンの動作はよいシルエットですよね。
トランプ大統領で騒々しい毎日ですが、今年の注文トップは、まず間違いなくトランプになることでしょう。
いやホント、これまでの大統領という観念を変えてしまうような強烈な人の登場ですねえ。
それでも世の中、平和でありますように。
年賀はがき整理しながら、ふとそう思う今日この頃であります。
1月10日
今年の寄席はじめ
あけましておめでとうございます。
大好きな寄席定席も、早いもので今日が初席楽日。
明日からはニの席がはじまります。
どの席も満員立ち見のお客様、いちじ閑古鳥が鳴いてたなんて嘘みたいですね。

今年の寄席はじめは、去年のうちに前売りで買っておいた国立演芸場6日目。
さん喬・一朝・喬太郎の三師匠を指定席でゆったりと鑑賞できる上に、トリが落語界最年長米丸師匠と同い年、今年なんと92歳になる、三笑亭笑三師匠。
初席らしい好メンバーひかれてはせ参じました。
ほかの定席は、もっぱらたくさんの芸人さんを新年顔見世興行てなもんでめまぐるしく高座に上げて、お客さんも立ち見で凄いにぎわい。
これもまたいいのですが、でれ〜ぇと席にゆったり座って、正月気分に浸るのもなかなか結構なもので・・・。

そういえば年末に、満員の千代田線の車中で私、見るからに感じの良い青年に席を譲られました。
63歳なんて今では若造だと思ってましたから、内心ショックでしたけど、無下に好意をむにするのも大人げなしと、瞬時に判断して、ありがたく座らせていただいたのですよ。
昔唄った童謡を思い出しました。

む〜らの渡しの船頭さんは〜今年60のおじいさん
年は取ってもおふねをこぐときは、元気いっぱい櫓がしなる〜
ソレ、ギッチラ、ギッチラ、ギーチラコー

60は昔、おじいさんなのですよ。
身の程をわきまえて、しっかりと生きていかなければ・・・。

でも、この人はすごいと思って見た笑三師匠のしばらくぶりに拝見したお姿にびっくり・・・。
くの字に曲がった腰をかばいながら、やっとのことで高座に登場。
師匠お得意の口慣れた消費税の漫談がまとまりがつかず、聴いていて気をもみました。
まえかたに上がられた夢太朗師匠の助け舟で、何とか幕をしめたのですが・・・。
3年くらい前は「悋気の火の玉」「火事息子」を軽妙な語り口で聞かせてくれ、達者なところ見せていただきうれしかったもの。
この年末年始、ちょっと世の無常を痛感させられてしまいました。
ですから「みなさん体だけは、大事にしてください!」
これは三平師匠でした。

今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
 
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