飯田コージ
1981年12月5日、神奈川県出身。2004年ニッポン放送入社。年齢当てクイズでは必ずプラス20歳上で答えられる。不自然な笑顔が魅力のニッポン放送アナウンサー。
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香港競馬通信
7月15日
最終日までもつれにもつれた今シーズンの調教師最多勝の行方は、ジョン・サイズ師がジョン・ムーア師に2勝リードしてスタートしました。この日の沙田開催の11レースが終わり、最後の馬が決勝線を越えたとき、サイズ師のリードは3に広がり、11度目の最多勝のタイトルをサイズ師が手にしました。
今シーズンの通算勝ち鞍はジョン・サイズ師が78勝で、ジョン・ムーア師75勝となりました。この日、ムーア師1勝に対してサイズ師は2勝を挙げ、リードを広げたわけです。2勝の内訳は、第4レース、モンキージュエリーと、第7レースのエアロハピネスでした。
「勝ててホッとしたよ」と、サイズ師は言いました。今回のタイトル獲得は、ムーア師の父ジョージ・ムーア調教師のタイトル11回獲得の記録に並んだのです。
「この記録は難しく、それほど簡単ではないので、常に頭を下げて一歩一歩前進し続けなければね。厩舎のすべてのスタッフが最善を尽くして初めて、チャンピオンになれるものなんだ」
水曜日に65歳になったばかりのサイズ師は、スタッフの努力と献身に感謝しました。
「金を払えば士気が上がるというものではないので、勝利こそが士気を上げるのに最高の報酬なんだ。それで厩舎全体が安定してくる。私のチームは長年私と一緒にいるので、彼らは何が重要なのかを知っていて、勝ち続ければ全体が上手く回ることを熟知しているからね」とスタッフの働きを称えました。
一方、ムーア師は、今日に向けてのタイトル争いが「最後までもつれる」と予測していました。サイズ師も、今日の各レースの顔ぶれを見ると、早い段階でいくつかムーア勢が勝利すると「(タイトル獲得は)厳しくなる」と指摘していました。
サイズ師の予想は半分現実になりました。ムーア師は第1レースでいきなり勝ち星を挙げたのです。クラス5のメディックキングダムハンディキャップ(1800m)をアバブで勝ち、サイズ師のリードはわずかに1勝となりました。本当の戦いがここから始まったのです。
「さあ、ジョン!」アバブに騎乗したザック・パートン騎手は、グータッチとともに叫んで調教師を鼓舞しました。
「まさに我々が望んだスタートだよ!」とムーア師。続けて、「ザック(・パートン)は研ぎ澄まされた騎乗ぶりだったね。自信を持って乗ってくれた。馬はちょっとうるさいところを見せていたけど、上手く乗りこなしてくれたよ」
ムーア師は、調教師最多勝レースで踏みとどまるために何としてもこの勝利が必要でした。一方のパートン騎手にとっても、ホアオ・モレイラ騎手が持つ170勝のシーズン最多勝記録を破るために、こちらも勝利を必要としていました。
ただ、結果から言えばパートン騎手の記録更新の試みは失敗に終わりました。モレイラ騎手の記録にはこの日だけで4勝が必要でしたが、その後は第6レースでディヴァインモーメントで勝ったのみ。シーズン最多勝記録まであと勝利2つ足りませんでした。
それでも、パートン騎手のシーズン168勝が色あせることはありません。むしろ大きな成功でした。何しろ、この168勝は香港競馬の歴史で2番目の大記録。その上、沙田競馬場での7つのG1勝利がその中に含まれています。これは前例のないことで、ただ勝利を重ねただけでなく、ハイレベルなレースでも勝利を挙げたことを特徴としています。さらに、香港で通算1000勝も達成し、シーズンで稼いだ賞金額は23億4900万香港ドルに達しました。自身3度目のチャンピオンジョッキーのタイトルを手中に収めました。
「今シーズン、ボクが達成できた記録を見ると、本当に自分がやったのか驚くよ。それだけ勝てるとは、誰も予想できなかったと思うね」とパートン騎手は今シーズンを振り返ります。
「これまでに達成した記録や、大きな勝ち鞍を振り返ってみると、信じられないシーズンになったよ。自分自身でも非常に驚くべきものだし、もう一度これを達成してみろと言われても非常に難しいし、ましてこれを超えたシーズンを送れというのは至難の業だろうね。様々なサポートをしてくれたオーナーとトレーナーの方々のおかげだよ。いろいろな理由でこのシーズンは一生忘れられないシーズンになるだろうね。こんなシーズンがずっと続いていたら、すぐに忘れちゃうんだろうけどね」
チャンピオンジョッキーは最後はおどけてインタビューを締めくくりました。

この日、ムーア師は気分の浮き沈みが激しかったかもしれません。11あるこの日のレースのちょうど折り返し点に達する前のクラス4ビクトリーマーベルハンディキャップ(1200m)でホアオ・モレイラ騎手騎乗のモンキージュエリーが直線末脚を伸ばして勝利。調教師最多勝レースはサイズ師がムーア師に対して再び2勝のリードと押し返したのです。
「この馬は非常に若く未熟な馬で、今日は決して完璧なレースじゃなかったんだ」とモレイラ騎手。具体的には、「この馬はもう少し切れる脚があると思っていたんだけど、残念ながらそうじゃなかったんだ。それでも、何とか末脚を伸ばしてくれたね。」

続いて、第7レースのクラス3、エントラップメントハンディキャップ(1200m)ではエアロハピネス(126ポンド)が、ムーア厩舎・パートン騎乗のハロービューティ(133ポンド)を下し、調教師最多勝のトロフィーはほぼサイズ師が手中に収めました。
「エアロハピネスはどの位置からでも競馬が出来る器用な馬なんだけど、いつもは内外を出入りして消耗してしまうんだ。今日は比較的スンナリと競馬ができたね」とモレイラ騎手。
エアロハピネスについては「今日はお行儀よく競馬が出来たんだけど、昔はそうじゃなかったんだ。能力はあるんだけど、気性面でそれを上手く活かすことができなかった。今日は力通りの競馬ができたね」
モレイラ騎手は去年12月にジョン・サイズ厩舎所属騎手として香港に戻って以来、サイズ師のチームの重要な歯車となりました。その後、所属騎手からフリーランスへとライセンスは変わりましたが、シーズンの終わりまでその役割を果たすことを選びました。
「自分だけのことを考えればやる必要はないんだけど」とモレイラ騎手。「サイズ師への恩を考えると、できる限り最善を尽くす必要があるし、今は報われているよ。どんな勝利も、関わった人たちの献身がなくては成し遂げられない。ラッキーもあったかもしれないけど、サイズ師はやってくれると信じていたよ。」

ダニー・シャム厩舎のハーモニービクトリーが第8レースのクラス1沙田マイルトロフィー・ハンディキャップ(1600m)を勝利し、事実上最多勝のタイトルが完全に手の届かないところに行ってしまった時、ムーア師は放心したようでした。しかし、過去7度チャンピオンに輝いた名伯楽は、まだプラスの面に目を向けていました。
「個人記録としては今までのシーズンで最も多くの勝ち鞍だし、ジョン・サイズ師と本気で戦うことは本当に何か特別なものだったね。相当お金を注ぎ込んだけど、なかなか勝つのは難しかった」とムーア師は明かしました。
「ジョン(・サイズ師)と戦うのにあたって、我々は勝率に取りに行ったんだ。少ない頭数、少ない出走数でいかに勝利を稼ぐのかを重点に置いたんだけど、やっぱり厳しかったね。今は、ジョン(・サイズ師)にお祝いの言葉を贈るよ」
「今シーズンがうまくいったことに本当に満足しているんだ」とムーア師は付け加えました。「ビューティジェネレーションは素晴らしかったし、(3歳馬の)アセロとサンクスフォーエバーも順調に勝ち星を重ねているんで嬉しい。素晴らしいチームワークが生んだ、素晴らしいシーズンだったよ」
こちらも、スタッフの尽力に感謝してインタビューを締めくくりました。
香港はこれから暑い夏を迎えます。シーズンの再開は秋になってからです。


 
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