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2020年2月9日
日本財団パラリンピックサポートセンター 山脇康会長 (1)

2020年最初の放送には、パラリンピックイヤーの幕開けにふさわしいゲスト、日本財団パラリンピックサポートセンター・山脇康会長をお迎えしました。

 

今年8月25日に開幕する東京2020パラリンピック。

本番の年を迎え、今の心境を語っていただきました。

「いよいよ2020年になったかということで、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから7年間くらいの準備だったのですが、それがいよいよ8カ月弱。まだやることがいっぱいあるのに短いな、全部やるんだという緊張感と、もうすぐで楽しいぞというワクワク感と両方あります。でも、楽しいなという方が強いですね」

 

山脇さんは、2013年に国際パラリンピック委員会の理事に就任。2014年には日本パラリンピック委員会の委員長に就任され、2015年5月、山脇さんが会長を務める日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)が活動を開始しました。

2013年に東京2020大会の開催が決まり、「TOKYO!」と聞いた時は無邪気に「やったー!」と思ったという山脇さん。

しかし、東京開催が決まった頃、障がい者スポーツ(パラスポーツ)はまだ厚生労働省が管轄していて、福祉からのスポーツという位置付けでした。

一方のオリンピックは文部科学省の管轄。

“東京オリンピック・パラリンピック”というのに、2つに分かれているのはよくないということで、スポーツ庁が文部科学省の外局として2015年2月に作られ、やっとパラスポーツが”スポーツ”として国で一元化されました。

 

2015年5月には「日本財団パラリンピックサポートセンター」(パラサポ)が設立されました。

パラサポは東京2020大会、とくにパラリンピックを成功させるということ、パラスポーツをスポーツとしてもっと普及させ、共生社会・インクルーシブな社会へとつなげていこうという目的を掲げています。

全くのゼロからのスタートだったそうですが、やり出してみたら、いろいろな人を巻き込んですごく面白い、と手応えを感じたといいます。

パラサポのオフィスは完全にバリアフリーのユニバーサルデザイン。

そこに、パラリンピックスポーツ、29の国内競技団体が一緒に活動しています。

「世界でもここしかないんじゃないかという、楽しい場所です」と山脇さんも誇らしそうにお話されていました。

 

パラサポのスローガンは「SOCIAL CHANGE with SPORTS(スポーツで社会を変える)」。

ビジョンとして掲げるのは、「一人ひとりの違いを認め、誰もが活躍できるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)社会の実現」です。

東京2020大会の成功とスポーツを通じて社会を変えていこうという目的のもと、いろいろなプログラムを行っていますが、その先に「インクルーシブな社会」「共生社会」の実現を目指しています。

ただ、この「共生社会」の中身や定義というのは、仲良く一緒にやればいいのね、助け合いましょう、等と思われていますが、インクルーシブという意味をより具体的にするには、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョンというものが一体であることが大切だといいます。

多様性があっても一人ひとりが何も発言できないのは良い状態ではなく、多様性があり一人ひとりが活躍できたり役割を果たす、そういう社会をダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と言い、これが「共生社会」だと定義しています。

 

また、パラサポは「教育」にも力を注いでいますが、教育は人々の意識を変え、D&Iの考え方を身につけるために大事なことだと話します。

意識が変わり社会を変えるのは、一世代かかるかもしれない大きなことですが、偏見がなく、吸収しやすい子どもたちが教育を受け、体験することで、やがてその子どもたちが大人になって、社会のリーダーになれば、世の中が変わっていく。

それに、子どもはそういう体験があると家に帰って親に伝える。

教育はふつう大人から子どもというのが一般的ですが、このパラリンピックを子どもたちに教えることによって、子どもから親に教えることができる。

これは、”リバースエデュケーション(逆の教育)”と言われているそうですが、そういうことができるのも、パラスポーツの魅力だと山脇会長は語りました。

 

山脇康会長のリクエスト曲:雨上がりのステップ / 新しい地図

パラスポーツの応援歌として作られ、チャリティーソングとしてパラスポーツの普及や発展に大きく貢献した一曲です。

2020年2月8日
日本障がい者サッカー連盟会長・北澤 豪さん (2)

12月28日(29日)、2019年最後の放送は、日本障がい者サッカー連盟会長の北澤 豪 (きたざわ・つよし) さんをゲストにお迎えしてお送りしました。

 

東京2020パラリンピックの正式競技であるブラインドサッカー(5人制サッカー)。

先日、日本代表とアルゼンチン代表の親善試合が行われ、日本は世界一位のアルゼンチンに惜しくも0-1で敗れました。

世界のスーパープレーヤー・メッシと同じユニフォームを着たアルゼンチンの選手たちは体格も大きく、どの選手もうまかったと感想を述べた北澤さん。

ただ、試合に敗れはしたものの、これまで強豪国との対戦を通じ経験を積み重ねて来た日本代表は、フィジカル的にも負けておらず、チャンスも作り出していて、(パラリンピックでは)いいところまでいける準備はできてきていると感じたそうです。

2019年、日本代表は守備的なサッカーから攻撃的なサッカーに移行し、それが少しずつ成功してきているといい、観客にとっても面白い、アグレッシブなサッカーになってきていると話します。

 

初めて試合を観る方は、プレーの激しさに驚くのでは?というくらい迫力満点なブラインドサッカー。

ただ、その激しさに驚いて、プレー中に観客は声を出してはいけないのが観戦をするうえでのルールです。

選手たちは、ボールに入っている鈴の音を聞いてボールの位置を把握したり、コーラーと呼ばれるスタッフやコーチの声でゴールの位置を確認するため、試合中、観客は「すごい!」と思いながらも喋ったり音を出すことはできません…

そんな「もどかしさを抱えながら試合を観戦してもらえば」と北澤さんは言います。

ただし、唯一、ゴールした瞬間だけは、大きな声で歓声をあげることが許されています。

選手たちはその歓声でゴールが決まってことを知ることができるため、得点が入った瞬間は大きな声で喜びを表現しましょう!

 

世界を見渡すと、アジアでは中国やイランが強く、アジアの大会で日本はその2国に次ぐ3位。

南米は、アルゼンチンとブラジルが強く、ヨーロッパ勢もフランスを筆頭に強さを見せています。

サッカー強豪国にはブラインドサッカーも行える環境があるため、サッカーが強い国はブラインドサッカーも強い国が多いのです。

 

パラリンピックで行われるのは男子のみですが、実は、ブラインドサッカー女子日本代表もかなりアツくなっています!

中でも注目は、現役女子高校生の菊島宙(きくしま・そら)選手。

北澤さんに”世界の宝”と言わしめた菊島選手は、ブラインドサッカーの常識を超えるスキルの持ち主です。

例えば、クロスボールをダイレクトで打つのです。

ブラインドサッカーでは、自分からボールが離れると、ボールの位置が確認できなくなるので、足元近くにボールをキープしながらシュートを打ったりドリブルしたりします。

そのため、あまり力一杯蹴れないことが多いのですが、菊島選手は感覚がとても優れていて、転がって来たボールでも点で合わせることができます。

飛んで来たボールをボレーシュートしてゴール!という男子選手でもできないようなスーパープレーをいとも簡単にやってるのです。

女子日本代表は現在、世界一位。

2020年2月には、国際親善試合「さいたま市ノーマライゼイションカップ2020」で、女子アルゼンチン選抜と対戦するので、ぜひ会場に足を運んで、静かで熱い応援をしましょう!

 

年々盛り上がりを見せるブラインドサッカーですが、今後の障がい者サッカーにおけるビジョンについて伺いました。

「障がいのある方が日常的にスポーツをやれる環境というのを整えなければいけないと思っています。今はまだ、やれる場所、やれる相手が限られているので、子どもの頃から障がいのあるなしに関係なく、一緒にスポーツをやれる環境が必要かなと思います。ブラインドサッカーでは、ゴールキーパーが健常者(晴眼者)なんですよ。そして、自分たちが攻めるゴール裏にいるガイド(声や音でゴールの位置を知らせる)も目が見えている人。そういった意味では共生社会だと思うんです。障がいがあるなし関係なく、スポーツの世界を越えて、社会の中でも共生した社会が実現できるような競技になればなと思っています」

 

北澤さんは、東京2020パラリンピックにも大きな期待を寄せています。

「お客さんにたくさん入ってもらいたいですね。私もお客さんが入っていない時代からサッカーをやっていましたが、拍手のないスポーツはパフォーマンスが上がらないんです。お客さんが入って拍手を送ってくれることによって、すごくモチベーションが上がるんですよね。そういった作用で劇的なプレーも生まれると思うので、ぜひ、パラリンピックでは、日本だけではなくどの国の試合も会場を満員にしていただければなと思います。そうすると、行ってよかったなと思えるものに出会えると思います。ぜひ、みなさん協力してください!」

 

最後に、上をめざして進もうとする方に伝えたい“Going Upな一言”を伺いました。

『出会いに感謝』

(特に2020年は)いろいろなものに出会い、いろいろなものを見ていくと思うが、それをポジティブに受け止めていくことが、次のステップにつながると思う。もしかしたら負けることもあるし、うまくいかないこともあるかもしれない。だけど、ポジティブに「感謝」という気持ちで受け止めると、次の自分につながっていくと思うので、感謝の気持ちを持って前向きにいこうという思いが込められています。

 

北澤豪さんのリクエスト曲:ラフィン・メディスン / AI

この曲のCDを購入したり、ダウンロードやストリーミングすることで、病気と闘う親子の支援活動に参加できるチャリティーソング。AIさんは音楽を通して、難病支援に協力しているので、ぜひ聴いてくださいと北澤さんからメッセージをいただきました。

2020年2月7日
日本障がい者サッカー連盟会長・北澤豪さん (1)

2019年12月21日(22日)の放送では、日本障がい者サッカー連盟会長の北澤 豪さんをゲストにお迎えしました。

 

北澤さんといえば、日本サッカー界を語る上で欠かせない存在。

国際大会などで海外に行くことも多かった北澤さんは、貧困により生活環境が整っていない状況を目にして、何か協力ができないかと、選手時代から途上国支援に取り組まれました。

そこには「生活が整っていかないと、スポーツ文化も発展しない」という考えがあったといいます。

また、練習場グラウンドに、当時のチームメイトだったラモス瑠偉さんが、視覚に障がいがあるサッカー選手をよく連れてきていて、サッカー仲間というようなフレンドリーな感じでボールを蹴り合い交流する機会も多かったそうです。

海外では、障がいがある人たちも健常者と一緒のフィールドでプレーしているのに、なぜ日本では分けるのだろう、一緒になってやれたらいいのに…そんな思いから、障がい者支援にも積極的に取り組んでいらっしゃいました。

 

現役選手時代の2001〜2002年頃、ブラインドサッカーの選手から「国内リーグを作るためにチーム数を増やしたい、そして日本代表チームを作りたいので協力してもらえないか」という相談を受けたそうです。

その時、北澤さんは初めてブラインドサッカーを体験しました。

「まあ、できないですよ。ボールに当たらない。いくらボールに鈴が入っていて音が鳴るといっても、人間が情報を得るのに7〜8割を占める視覚を失ってしまったら難しいし、グラウンドのどこに自分が立っているかわからない。(ブラインドサッカーのピッチは)周りを壁に囲まれているのですが、壁に激突しているだけで何もできなかったですね」

そんな北澤さんが、ブラインドサッカーの選手から言われたのは、”耳で見ろ”ということ。

右と左の耳で焦点を合わせると見えるようになるというのです。

当時、一緒に練習していた選手たちも初めはそんなに上手なわけではありませんでしたが、今では日本代表として活躍しているのを見て、「我々がひとつのものを達成するまでの練習量と比べたら彼らは100倍くらいやらなければいけない。だから、彼らの努力はすごい」と力を込めて話しました。

 

現在、日本障がい者サッカー協会の会長を務めていらっしゃる北澤さんですが、”障がい者サッカー”は、視覚に障がいがある選手が行う「ブラインドサッカー」だけではありません。

聴覚に障がいがある方の「デフサッカー(デフフットサル)」。日本は男女とも強くて、アジアトップクラス。世界でもトップにいけるだけの力があるそうです。

そして、足切断者が杖で体を支えながらプレーする「アンプティサッカー」、脳性まひの「CPサッカー」、重度障がいの「電動車椅子サッカー」、「知的障がい者サッカー」と「ソーシャルフットボール」(精神障がい)があります。

その7つのサッカー団体を統括して、2016年4月に『日本障がい者サッカー連盟』を設立しました。

 

そこには、(7つの団体をまとめて)日本サッカー協会の加盟団体にすることで、サッカーファミリーの一員として統括いきたいという意向があったからだといいます。

仕事に就くにも難しい状況があるなか、例えば、国際大会に出場するためには、長期間、仕事を休まなければならず、海外遠征にも自費で行っているため、経済的な負担も大きくなります。

そんな時、競技団体の活動を積極的にPRしてパートナーシップを得ることにより、資金援助が可能になったり、あとは、大会を開催するためのグラウンドの確保や、レフリーをサッカー協会から派遣してもらうなどの支援も受けやすくなります。

現在は、自治体の協力もあり、日本代表の合宿やリーグ戦の試合会場の確保もしやすくなったそうです。

 

競技環境向上のため尽力されている北澤さんは、積極的に現場に足を運んでいらっしゃいます。

次回は、パラリンピック競技でもあるブラインドサッカーの日本代表について伺います。

 

北澤豪さんのリクエスト曲:クリスマスイブ / 山下達郎