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2020年2月24日
テコンドー・田中光哉選手 (1)

2月15日(16日)は、テコンドーの田中光哉(たなか・みつや)選手をお迎えしてお送りしました。

 

テコンドーは上肢(手や腕)に障がいのある選手が対象の競技で、東京2020パラリンピックで初めて正式競技として行われます。

キョルギ(組手)と、プムセ (型) の2種目があり、東京2020大会では、手や腕に障害がある選手が行うキョルギのみの実施となります。

男子と女子、体重別にそれぞれ3階級ずつ、6階級が行われます。

(男子:-61kg、-75kg、+75kg  女子:-49kg、-58kg、+58kg)

また、障がいの程度により、K41からK44まで、4つのクラスに分かれていますが(※数字が大きいほど障がいが軽い)、東京大会では、片腕の肘から先に障がいのある(片腕は健常)K44というクラスと、両腕の肘から先に障がいがあるK43というクラスの合同階級として実施されます。

 

試合は1R(ラウンド)2分、インターバルを挟んで3Rを戦い、(3R終了時点で)獲得したポイントの多い方が勝ちとなります。

選手は全員、電子ソックスと呼ばれる靴下を履き、胴に巻きつけたプロテクターに蹴りがヒットするとセンサーが反応して、自動的にポイントが加算されます(※階級によって圧力が設定されていて、重さ以上の蹴りが加わるとポイントとなります)。

ポイントは、蹴りの技(回転の度数)によって変わり、回転がかかっていない蹴りは2点、180度の回転(半回転)がかかる蹴りが3点、360度くるっと一回転して目線を外し、また振り向いて蹴るのが4点です。

パラテコンドーでは、手でガードができなかったり、障がいによって危険もあるため、頭部への攻撃は禁止されています。

試合では、2点の蹴りによる得点が中心となりますが、残り時間が少なかったり相手にスキがあると大技が飛び出すこともあり、迫力満点です。

 

先月、1月26日、東京2020パラリンピックの日本代表選考会が東京で開催されました。

選考会では、男子-61kg級、男子-75kg級、女子+58kg級の3つの階級で試合が行われ、男子-61kg級には伊藤力(いとう・ちから)選手、阿渡健太(あわたり・けんた)選手、そして、田中選手の3名が出場し、総当たり戦を行いました。

アグレッシブなプレーが光った田中選手は、見事2勝を挙げ、優勝! 東京パラリンピックへの切符を掴みました。

大会を終え、現在の率直な心境を伺いました。

「一番はやっぱり嬉しい気持ちが大きいです。応援に来てくれた方々が喜んでいる姿を見て、よかったとホッとしている気持ちもあります。でも、本番はこれからなので、また気合いを入れて、切り替えてやっていかなければという気持ちも当然あります」

 

選考会で対戦した伊藤選手と阿渡選手は、世界ランキングで見ると、いずれも田中選手より上位。ただ、田中選手は長い間-75kg級で戦っていたので、公式戦で二人と対戦したことがなく、そのため苦手意識はなかったといいます。

むしろ、昨年の10月末に足首の靭帯を怪我して1ヶ月くらい競技ができなかったという経緯があり、そちらの不安の方が大きかったそうです。

選考会に向けて12月、1月と練習をする一方で、しっかり相手を分析し、自分の強みに磨きをかけていきました。

田中選手は、ご自身のストロングポイントについてこう語ります。

「テコンドーは前足と後ろ足のスタンスがありますが、僕は-61kg級の中では身長が比較的大きいので、前足の部分をうまく使って相手をふところに入れさせないというのが僕の戦い方です」

そのストロングポイントを生かせれば「勝てるという自信はあった」と言い、うまく練習した成果を出せたのが勝因だったと振り返りました。

 

選考会が行われた会場には、田中選手が所属する道場の選手やその親御さん、会社の同僚など、おそろいのはっぴを着た大応援団が駆けつけ、「光哉!光哉!」と大きな声援を送っていました。

その応援が後押しとなったという田中選手。

「自慢の応援団です!」と誇らしそうに話しました。

 

ちなみに、昔、格闘技のゲームをよくやっていたという鈴木亮平さん。

そのゲームでは「テコンドー使いを選んでいた」そうで、田中選手とテコンドーの技や動きについて熱く語り合っていました(笑)。

 

最後に、テコンドーの魅力について伺いました。

「パラリンピック競技の中で、フルコンタクトが唯一許されている競技なので、その力強さや激しさ、スピード感というのを見てもらいたいです。試合では電子掲示板にポイントが表示され、どちらが勝っているのかわかりやすいので、観客としても見やすい競技だと思います」

東京2020大会では、千葉県の幕張メッセがテコンドーの会場となります。

鮮やかで力強い足技の数々、ぜひ間近でご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

田中光哉選手のリクエスト曲:深夜高速 / フラワーカンパニーズ

サビの歌詞が好きだというこの曲。ご自身の競技での目標と照らし合わせ、上を目指して行こう、がんばろう、という気持ちにさせてくれる一曲だということです。

2020年2月15日
射撃・山内裕貴選手 (2)

2月8日(9日)の放送では、前回に引き続き、射撃の山内裕貴(やまうち・ゆうき)選手をゲストにお迎えしてお送りしました。

 

現在、34歳の山内選手。

17歳の時、バイク事故により、右肩から下の機能を失いました。その後、専門学校時代にはダーツに夢中になり、社会人になってからはプロを目指していました。

その頃、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されるかもしれないというニュースを目にすることが多く、次第に自分もそういう世界に挑戦してみたいという思いが湧いてきたといいます。

それまで、陸上や卓球、ハンドボールなどいろいろなスポーツを経験したそうですが、山内選手のおじいちゃんが昔から猟銃をやっていて、そこへの憧れもあったことから、射撃について調べたそうです。

それで、射撃がパラリンピック競技でもあることを知り、地元・山口市で開催された体験会に参加。射撃を本格的に始めることになりました。

 

競技を始めてわずか3年で日本代表に選ばれ、2017年には自身初となる国際大会(タイで開催されたワールドカップ)に出場しました。

はじめのうちは、普段の練習場所にはいないような海外のうまい選手がたくさんいて、他の選手にばかり目が行って集中できず、なかなかうまくいかなったそうです。

結果は、17位。ただ、世界のトップランカーたちと戦う中で、その選手たちも自分と同じ人間だし、同じ銃を使うのだから、いつかは自分もあの舞台に立てるという思いを抱いたといいます。

 

その翌年、2018年に行われた世界選手権では、東京パラリンピックの出場資格を獲得するための標準点を突破し、パラリンピックという大舞台への出場が現実味を帯びてきました。

この世界選手権を山内選手はこう振り返ります。

「基準点をクリアできたという部分では少し自信につながりましたが、自分はもっと良い結果が出せると思って大会に臨んでいたので、正直、悔しさの方が大きかったです」

 

東京パラリンピックへの切符をかけた戦いは、春頃まで続きます。とくに、5月にペルーで行われるワールドカップはとても重要な大会となります。

山内選手はこの大会に向けて「(自分が)楽しんで撃っているイメージを鮮明に描きながら」日々、練習に取り組んでいます。

その先にある、東京パラリンピックにかける思いを伺いました。

「ずっと東京パラリンピックの舞台に立つということを夢見てやってきました。ここまでやって来れたのも、いろいろな方々の支えがあったからです。なので、自分を支えてくれた皆様に少しでも恩返しできるよう、絶対、東京パラリンピックに出場して、表彰台に立ちたいと思います!」

 

最後に、山内選手にとっての“Going Upな一言”とは?

『人は考えたとおりの人になる』

試合や練習中、10点を撃つとしっかりイメージして臨むと、その通りに撃てたことが今まで多くあったそうです。その経験から、いつもこの言葉を胸に、いいイメージを作りながら一試合一試合臨んでいるということです。

 

山内裕貴選手のリクエスト曲:銀河鉄道999 / EXILE

この曲を朝に聴いて、さぁ行くんだ!と気持ちを上げているそうです。

2020年2月13日
射撃・山内裕貴選手 (1)

2月1日(2日)の放送では、射撃の山内裕貴(やまうち・ゆうき)選手をゲストにお迎えしてお送りしました。

 

射撃は、1976年のパラリンピックから正式競技として行われている歴史ある競技で、銃の種類によって大きくピストル種目とライフル種目に分けられます。

障がいによって2つのクラスがあり、ピストル種目の場合、下肢または上肢に障がいのある選手はSH1というクラスとなります。

そのため、手や腕に障がいにある選手、車いすの選手、義足の選手が一緒に試合を行います。

(※ライフル種目では、下肢障害→SH1 上肢障害→SH2 と、クラス分けされます)

 

山内選手は、片手で撃つピストル種目のひとつ「10mエアピストル」が専門。

いわゆる拳銃のような形をしたピストルで、火薬ではなく空気の力で弾を飛ばします。

10m先にある的は、外円から中心向かって1点から10点まで分かれていますが、一番外側の1点圏の外径(直径)の大きさが約15.5cm。

そこから中心に向かって得点が高くなり、7点圏以上は黒丸で表示されていて、それが約6cmくらい。

一番高得点の10点圏は直径がわずか1.1cm程です。

そのため、10点を見て狙うというよりは、約6cmの黒丸との位置関係で撃つというイメージなんだそうです。

 

「10mエアピストル」種目では、75分間で60発を撃ちその合計点を競います。

ピストルは1kgくらいの重さがあり、それを60回構えては撃ち…ということを繰り返します。

山内選手の場合は、(その75分間のうち)入りが大事で、最初は時間をかけて前半でしっかり自分のリズムを作りながら、中盤でリズムに乗ってくると、その流れに任せて撃つという時間の使い方をしているそうです。

撃つ時には、点数を意識してしまうとどうしても点数ばかり気になって外れてしまうので、例えば、手首をしっかり固定するといった(技術的な)基本を常に意識するようにしているといいます。

 

素人的なイメージでは、10点を狙ってパーンと引き金を引いていると思いがちですが、実際のところは、そういうふうに撃ってしまうと、どうしても力が入りビクッと動いてしまうのだそうです。

山内選手の場合は、流れに身を任せ、銃が標的に向かって上から下に降りる間に、トリガーもじわっと引きながら引きながら、ここらへんが10点だなと思ったら、いつの間にかパーンと弾が出ているという感じで撃っているそうです。とても奥深い競技ですね。

 

そんな山内選手には、あるノートの存在があります。

練習や試合で良かったこと、ポジティブな意見を記しているノートです。

反省点やダメだったことを書いたりもしますが、こうカバーしたらうまくいった、というふうに、良かったことで終わるようにしているそうです。

そうすることで、練習や試合中に悩んだ時に、(このノートを見返して)こういういいイメージで撃てていたんだなというのが思い返されるので、自分をいい方向に持っていくのにすごく役立っているそうです。

 

最後に、射撃の魅力について伺いました。

「射撃は、若い人からご年配まで幅広い世代の方がやっていますし、自分のように片手に障がいがあっても健常者の大会に参加できます。そうやって、いろいろな方が一緒に競い合えるのが、射撃の一番の魅力だと思います」

 

山内裕貴選手のリクエスト曲:Pretender / Official 髭男 dism

試合前、リラックスするために聴いている一曲。射撃は、テンションが上がると心拍数も上がり、それが微妙な動きにつながってしまうのだそうです。緊張するタイプだという山内選手は、試合前にリラックスするため、好きな曲を聴いて気持ちを落ち着かせているそうです。