二つ星シェフの技+駅弁屋さんのハイブリッドフレンチ!~えちごトキめきリゾート・雪月花「上越妙高駅発・雪コース」(14,800円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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「なんだ、この赤は!!!」
思わず叫びたくなるくらい、見た者の魂を揺さぶる「赤い列車」の登場です。
週末の朝10時過ぎ、新潟県上越市のえちごトキめき鉄道・上越妙高駅に入ってきた2両編成の列車。
その名は「えちごトキめきリゾート・雪月花(せつげっか)」。
北陸新幹線開業と共に誕生した第3セクターの鉄道「えちごトキめき鉄道」が、今年(2016年)4月にデビューさせた観光列車です。
雑誌「自遊人」や南魚沼市にある人気の宿「里山十帖」を手がけるクリエイティブディレクターの岩佐十良さんが企画・プロデュース。
えちごトキめき鉄道の気動車・ET122形をベースに、建築家の川西康之さんが設計・デザインした新型車両です。

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「えちごトキめきリゾート・雪月花」は、北陸新幹線とえちごトキめき鉄道の接続駅・上越妙高と糸魚川の間を土・日祝日に1往復運行。
全席が「ツアー商品」扱いで、乗車には「雪月花予約センター」(電話025-543-8988、平日10:00~17:00)への事前予約が必要です。
乗車プランは「食事付」(14,800円)と「食事なし」(6,000円)の2種類、2人以上で「食事付」の場合は2号車、それ以外は1号車の利用。
今回は上越妙高10:19発の糸魚川(いといがわ)行に乗って、新幹線では13分で走破するところを、およそ3時間かけてのんびり走ります。

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もう「窓」しかない!
「雪月花」最大の魅力は、この「大きな窓」です。
この窓の大きさ・・・車両を上から見るとよく分かります。

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上から見ても「窓」が見える!
今まで窓がすごい列車というとJRの「スーパービュー踊り子」のイメージがあったんですが、たぶん超えたと思います。
窓が大きいと「温室のように暑いんじゃないの?」と穿った見方をする人もいるかもしれません。
心配ご無用、窓ガラスは紫外線透過率0.01%以下、遮熱性も備えたものが使われており、明るいのに暑くないんです。
さあ、今回は奇跡的に取れた「魅惑のシート」へ・・・。

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それは「雪月花」2号車に「4席だけ」設けられた「展望ハイデッキ個室」!
他の座席から2段高い位置にあり、列車が走り始めるとロープが張られて区切られ、プライベート感あるスペースになります。
乗務員室と隣接していることもあって、車掌さんの業務を見ることが出来て「鉄分補給」にもバッチリです。
もちろん最後尾になったり、先頭になったりするので素晴らしい展望も楽しめます。
原則として3~4名での利用限定となっており、1グループごとに15,000円(税込)の追加料金がかかります。

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乗車早々、2号車の「さくらラウンジ」では、既にウェルカムドリンクの準備が始まっていました。
新潟のワイナリー「フェルミエ」の雪月花オリジナル・スパークリングワイン。
2011年の新潟産シャルドネを使用。
利用プランに関らず味わうことが出来る「雪月花」だけの味です。

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「雪月花」は、上越妙高を定刻通り10:19に発車・・・でも真っすぐに糸魚川には向かいません。
「えちごトキめき鉄道」は2つの路線からなる鉄道です。
1つは妙高高原~直江津間の「妙高はねうまライン(旧・信越本線)」、もう1つが直江津~市振間の「日本海ひすいライン(旧・北陸本線)」。
上越妙高を出るとまずは「妙高はねうまライン」を長野方面へ向かい妙高高原で折り返します。(妙高高原からの乗車も可)
妙高高原からは来た線路を引き返して直江津へ、そこからさらに「日本海ひすいライン」に乗り入れて終点の糸魚川には13:30着となります。

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上越妙高を出て15分あまり「雪月花」は早くも本線をそれて、引き込み線のような線路に入って停車・・・。
程なくやってきたえちごトキめき鉄道の主力・ET127系電車を追いかけるように「雪月花」はバックを始めました。
実はコレ「二本木駅」(新潟県上越市)に今も残る「スイッチバック」。
「妙高はねうまライン」の関山~直江津間は、明治19(1886)年に開通した「新潟県で最も古い」鉄道で、
SLの時代は25パーミル(1,000m進むと25m登る)の勾配の途中に駅を設けることが出来ず「スイッチバック式」の駅になったといいます。
昔は各地にあった「スイッチバック式」の駅ですが、新潟県内で残っているのは「二本木駅」のみなんです。

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二本木駅で15分あまり小休止の後、再び妙高高原に向けて走り出した「雪月花」。
やがて、進行右手には、田植えが終わったばかりの田んぼと妙高の山並みが広がりました。
もちろん「雪月花」は景色の美しい区間では、車掌さんの案内と共にゆっくりと走ります。

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上越妙高からおよそ50分、「雪月花」は「えちごトキめき鉄道」最南の駅・妙高高原に到着。
妙高高原以南は「しなの鉄道・北しなの線」となる境界駅です。
「雪月花」も、しなの鉄道の115系電車と並びました。
しなの鉄道にも人気の「ろくもん」という観光列車があります。
いつか妙高高原で「雪月花」&「ろくもん」のジョイントが見られたり、乗り継ぎ旅が出来たら面白いなぁ・・・なんて気持ちにも。

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「雪月花」は妙高高原で11:10~11:27まで17分間停車します。
この停車時間に、車掌さんが駅前の土産物屋さんへ案内してくれます。
かつてスキーシーズンには、上野から多くの列車が乗り入れた妙高高原ですが、クルマなどへの移行が進んで今も残るお店は1軒だけ。
妙高高原で昔、「笹ずし」などの駅弁を販売していた石田屋さんは5年ほど前に廃業。
「石田屋」さんがあった所も更地になっていて、ちょっぴり残念な気持ち・・・。

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妙高高原駅を発車したところで、全てのお客さんが揃い、いよいよ「雪月花」最大のウリ「ランチ」のスタート!
テーマは「ミシュラン二つ星が手がける・越後上越フルコース」。
新潟県十日町市出身、東京・六本木の二つ星レストラン「Ryuzu」を開いたシェフ・飯塚隆太さんが「日本一の“駅弁”をつくろう!」とオリジナルレシピを考案したといいます。
「駅弁」と名乗る以上、気になるのは実際に調理を担当する人なんですが・・・名前を伺って安心しました。
なんと!直江津駅前にある「ホテルセンチュリーイカヤ」の料理長・石塚強さんなのです。
「ホテルセンチュリーイカヤ」は平成20(2008)年まで「ホテルハイマート」と共に直江津駅の駅弁を手がけていた駅弁屋さん!
8年の歳月を経て「駅弁」から「レストラン列車」に形態は変わりましたが、再び鉄道で「イカヤ」の食事が味わえる日がやって来たのです!!

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【スープ】
新たまねぎのスープ

スプーンにも「雪月花」のロゴやマークが!

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【一段目・・・前菜】
越後上越短角牛のコールビーフ コンソメジュレ
バイ貝とタコのバジル風
鯛のエスカベッシュ
海老のフラン ズワイガニのハーブ風味

「越後上越短角牛」は夏は妙高市の笹ヶ峰牧場、冬は上越市内で飼育する「夏山冬里方式」で作られる新潟・上越地方のブランド牛。
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【二段目・・・メインディッシュ】
帆立と八色しいたけのおかき揚げ
カラフル野菜巻き
茄子のオムレツ
地鶏のスモーク ポテトを添えて

新潟野菜をフレンチに仕立てたメインディッシュ。おかき揚げの食感がとてもイイ!

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【三段目・・・サンドイッチ】
妻有ポークのかんずりサンド
夏野菜のディップ バケット添え

「Ryuzu」のロゴの入った包装を開けた中から現れるのが「かんずりサンド」。
「かんずり」とは新潟・妙高に古くから伝わる、唐辛子を雪の上にさらして麹で発酵させる香辛調味料のことです。
この「かんずりソース」が面白くて唐辛子を少しマイルドにした感じのピリ辛感が、同じく新潟ブランド「妻有(つまり)ポーク」の自家製ハムとよく合う!
普通、サンドイッチというと辛子マヨネーズを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、あれとは全く異次元の辛み。
まさに「新潟でないと食べられない」絶品サンドイッチ、コレは乗って一度味わうべき味です!

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【デザート】
煮イチゴとココナッツのブラマンジェ
カラメルソース クレームシャンティ
ガナッシュチョコレート

雪室珈琲 雪月花オリジナルブレンド

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二つ星フレンチシェフと老舗駅弁屋さんのエッセンスが詰まった「雪月花(上越妙高発・雪コース)」のランチ。
「駅弁の域をはるかに超えた」と謳っていますが、「駅弁」のノウハウがあってこその”冷めても美味い”味わいではないかと思います。
駅弁好きとしては長年、直江津駅弁を手掛けた「ホテルセンチュリーイカヤ」さんが再び「鉄道の食」に関わるようになってくれたことが嬉しい限り!
さらに「雪月花」の旅では、途中駅で駅弁を愛する者にはたまらない風景も見られるのです。
次回、感涙の「雪月花」後編です。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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