誤飲で12歳の愛犬が正月に緊急入院!  手術ハイリスクの老犬の運命は!?

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【ペットと一緒に vol.67】

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筆者は2018年1月2日、誤飲の可能性のある12歳半の愛犬リンリンを連れて動物病院に駆け込みました。実はこれまでも異物誤飲で何回か胃を切開しているため、前回の手術後は獣医さんから「今度は胃を切開してもうまく縫合できない可能性や、臓器が癒着する可能性があるから、胃切開手術はこれで最後にしたほうが良いでしょう」と言われていたのですが……。

今回は、心配で胸がつぶれそうになり、猛省の正月休みを過ごした筆者の体験談をお話しします。


初めての誤飲は5歳で、腸閉塞に

筆者は12歳のノーリッチ・テリアのリンリンと、その娘犬である8歳のミィミィと暮らしています。

筆者が同じように育てた親子(https://www.1242.com/lf/articles/75602/?cat=life&feat=pet)なのに、リンリンとミィミィの性格や癖はそれぞれかなり違うのが不思議なところ。

ミィミィはこれまで誤飲をしたことがありません。けれども、リンリンは5歳の時から、これまで3回ほど誤飲が原因で手術をしています。一度は、腸閉塞になって命の危険もありました。

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リンリンは活発で好奇心旺盛なテリア

5歳の時に誤飲したのは、キッチンのタオルフックの吸盤。トカゲの四つ足の先が吸盤になっているデザインのフックが自然にはずれたようで、筆者が拾う際に4個のうち1個の吸盤がないと気づいたものの、「引越しの際に1個紛失したかな?」としか思いませんでした。それまでリンリンが未経験の誤飲という発想は、もちろんゼロ。

吸盤紛失から1カ月後、リンリンがある日突然、嘔吐下痢をしてぐったりしてしまいました。動物病院へ急いで向かい、レントゲンを撮っても異常なし。血液検査では炎症反応が出ていましたが、ほかは異常なし。念のためと獣医師からすすめられてレントゲンのバリウム造影検査をしたところ、腸に吸盤が写っていたのです。まるで、腸の内部に蓋ができているかのようでした。

「これは、腸閉塞を起こしていますよ。ここままでは命の危険があるので、緊急手術をします」と、かかりつけの先生から聞いた時は本当に驚いて足が震えました。

幸いにも、手術も成功してリンリンは1週間ほどで無事に戻ってきましたが、「誤飲には気を付けないと!」と、筆者が身を引き締めたのは言うまでもありません。

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誤飲はまったくしない、ミィミィ


恐怖の“毛玉ボール”が胃で作られて……

2度目の胃切開手術は、7歳の頃。その時も、実は歯間ブラシの誤飲にしばらく気がつきませんでした。

夜中に胃液を吐く日が続いていたのですが、空腹になると吐きやすい犬もいると聞いていたので、寝る前に少量のフードを与え始めたところ、症状が改善。ところがある朝、食いしん坊のリンリンがフードに見向きもせず、ゆるめの便をしたまま部屋の隅でブルブルと小刻みに体を震わせながらうずくまってしまったのです。

背中を丸めて苦しそうなリンリンを抱えて、動物病院へ。レントゲンでは、細い金属が胃に刺さっているような様子が確認できました。「プラスチックやゴムなどは、レントゲンでは写りません。でも、金属は真っ白な画像で確認できるんですよ」と、先生。

「ひとまず、口から内視鏡を入れて、それで取れるか試しましょう」と、そのまま入院して手術に。結局、歯間ブラシの針金の部分に毛などが絡まった、ピンポン玉大の異物が胃内にあり、内視鏡を使って経口で引っ張り出すのは不可能ということで、胃切開手術に移行。「“毛玉ボール”のような異物が胃の出口である幽門を塞いでしまっていて、腸に何も流れていかない状態でした。放置するとリンリンちゃんの命も危ぶまれましたよ」とのこと。

「調子が悪くなってすぐ病院に連れてきてよかった」と、筆者は間一髪でリンリンを救えたことに胸をなでおろしました。

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「お腹すいたよー」byリンリン

リンリンが6歳の時に娘を出産した筆者は、プラスチック製のおもちゃで娘が遊んでいるときは、リンリンの動きを注視するようになりました。娘をベビーサークルに入れて、その中で娘におもちゃ遊びをさせることも多々。

さらに、「オフ」という合図で、リンリンがくわえたものを放せるようにもしておきました。

リンリンに誤飲をさせない環境整備とトレーニングのおかげか、しばらくは無事に暮らしていたのですが……。

実家に2頭の愛犬を預けている間、リンリンが再び誤飲をしてしまったのです。床面に近いコンセントから伸びていた、筆者の父の携帯電話の充電コードを。

それまで電気コード類にリンリンは無関心だったので、筆者も油断をしていました。プラスチックの小物好きのリンリンが、充電コードの先端のプラスチック部品に興味を示したのが、誤飲のきっかけかもしれません。

最終的には胃切開手術になってしまったのですが、リンリンにはもちろん、この一件では父にも申し訳ない気持ちになりました。今後ほかの人にリンリンを預かってもらうのは、むずかしいとも感じました。

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金属はレントゲンで白く写ります。リンリンの胃から取り出した“毛玉ボール”と異物


まさかまた誤飲!?

今後の胃切開手術は、縫合不全などのリスクが高まったのが明らかな、リンリン。そのため、娘のおもちゃを齧ったりしやすい料理中や入浴中などは、リンリンをクレートに入れておいたりと、かなり気をつけていたのですが……。

昨年12月、自室の扉を閉め忘れていた娘の部屋に入っていたリンリンが、電子ピアノの電子ペダルのコードをバラバラに破壊。その後、うんちで細切れのコードが数日かけて大量に出てきていたので、様子を見ることに。誤飲から1カ月後の1月2日、リンリンは複数回の嘔吐と軟便を起こしました。便ですべてのコードが排出されていなかったのです。

幸いなことに、かかりつけの動物病院は年中無休なので、誤飲の可能性があると伝えてレントゲン撮影をしていただきました。すると、細切れのコードが丸いネットのような状態で写っていたのです。「これは、“毛玉ボール”ができている可能性があります!」と獣医師の先生に説明。「では、本日中に内視鏡手術をしましょう。胃切開に移行した場合、過去の手術歴から考えて合併症のリスクが高いので覚悟しておいてください」と、先生。

入院前にぎゅっとリンリンを抱きしめてから、祈るような気持ちでリンリンを預け、手術が終わるのを待ちました。途中、心配のあまり動物病院に電話をしてしまいました。

「内視鏡では除去できなかったので、胃切開手術に切り替えて、今は慎重に慎重に異物を取り除いているところです」とのこと。

21時ごろ、「無事に手術も終わり、今は麻酔からも覚めて寝ています」と連絡があったときは、安堵のあまり全身の力が抜けました。「でも、術後3日ほどは安心できません。合併症が起こった場合は再手術になります」とも。

手術翌日に面会に行ったところ、リンリンは強い目力で迎えてくれました。その表情を見てひと安心しましたが、「心配したよ~。頼むからもう誤飲しないで~」と語りかけると同時に、「ごめんね、もっときちんと飼い主が管理しないとね」とも猛省。

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強い目力で、面会の飼い主をお出迎えするリンリン


問題を起こす愛犬がやってきたのは必然?

合併症も起こらずに手術から4日後に退院したリンリンは、1月16日の抜糸を控えて、今もこの原稿を執筆している筆者の足元で眠っています。糸で縫われたそのお腹を見ながら、愛犬たちからの学びの意味を考えずにはいられません。犬のトレーニングの仕事にも携わる筆者は、飼い主さんから相談されたとき、一飼い主として共感できることが多いのです。

いくら誤飲を予防しようとしても、ふと油断してしまう時も、長い犬との生活の中ではあるでしょう。リンリンにも、チキンフレーバーの齧るおもちゃや知育玩具など、それはたくさんの犬用おもちゃを与えていますが、人間のものもたまに誤飲してしまうのです。

ミィミィのように、子犬の社会化やトレーニングをある程度行っても、散歩中に他の犬に吠えやすい犬もいるでしょう。

筆者自身の経験からも明らかなとおり、「社会化が足りないからです」とか「経験不足です」とか「トレーニングで悪癖は直ります」などと、犬の問題を簡単には扱えません。もちろん、原因を探るのは大切です。そのうえで、現実の環境を見つめて、ありのままの犬を受け入れて、飼い主さんや愛犬と寄り添いながら改善できるような方法を見つけていくことが大切なのだと、今回の一件でもあらためて感じました。

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これからも元気で過ごそうね!

「トレーナーのところには、なぜか問題がある犬がやってくることが多いよね」と、トレーナーの友人同士でよく語り合います。

まさに、そのとおり! と、新年早々、筆者自身もリンリンの誤飲騒動から“ペットと一緒に”安心安全で豊かな暮らしを送ることの大切さを噛み締めつつ、筆者ができる範囲で、全国の“ペットと一緒に”生活する方々のお力になりたいという思いを強くしたのでした。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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