高速道路速度制限引き上げの狙いと可能性

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高速道路速度制限引き上げの狙いと可能性

【新東名開通】走り初め(提供:産経新聞)

11月1日にスタートした新東名高速道路の速度制限引き上げから、12月1日で1ヶ月が経ちました。おさらいしますと、新東名高速の「新静岡インターチェンジ」から「森掛川(もりかけがわ)インターチェンジ」間の上下線およそ50kmの区間で、最高速度が従来の時速100キロから10キロ上がって、110キロになっています。1963年に高速道路が開業して以来、最高速度100キロを超える区間ができるのは初めての事です。なお、121日からは東北道の花巻南から盛岡南の間も110キロになります。

今回規制速度の引き上げ対象となったのは、普通乗用車や大型バス、中型貨物車の一部と、バイク。トラックなどの大型貨物車は現行の時80キロのまま据え置き。また、全ての高速道路で速度を引き上げる訳ではありません。条件はカーブが緩やかな片側3車線の事故発生が少ない区間で、少なくとも片側3車線の割合が5割近く存在する道路である事。標準的な2車線の高速道路に比べて、死傷事故率が3割程度低いと評価されているそうです。

110キロの試行は最短でも1年間は続けるようで、事故の発生状況や走行速度などを分析する方針。結果を踏まえて、時速120キロへの引き上げや対象区間の拡大などを検討すると見られています。

 

海外の速度制限はどうなっているのか?
ドイツの高速道路アウトバーンは130キロ制限と無制限区間があります。速度無制限というと、非常に怖いイメージがありますが、1億台あたりの死亡事故発生率はドイツは1.9で、日本の1.7とあまり変わらず、世界的に見ると、低い部類に入るそうです。

なぜか?モータージャーナリスト清水草一(しみず・そういち)さんがお書きになられた記事によりますと、

「ドイツのアウトバーンは完全な弱肉強食だから」

つまり、スピードが遅い車は時速300キロなどの猛スピードで走る速い車に進路を譲らなくてはならないんです。日本ですと、後ろのクルマから煽られると、揉めるケースがありますが、アウトバーンだと、速い車が来たら譲るという運転マナーが徹底されているようです。

ポーランドは140キロ。
ヨーロッパの多くは130キロ。
中国や韓国は120キロ。どちらも当初は100キロだったようですが、数年前に引き上げられているという事です。
アメリカのフリーウェイは州によって違うようですが、105キロが中心。
ロシアやオーストラリアは110キロ。

そして南アフリカは80キロ。
日本の高速道路の速度制限引き上げの狙いは何なのか?
自動車や道路事情に詳しいモビリティジャーナリスト 森口将之(もりぐち・まさゆき)さんに素朴な疑問をぶつけてみました。

《新東名の一部区間での上制限速度を110キロに緩和した狙い》

制限速度の引き上げは、乗用車については実勢速度と呼ばれる現状の流れが110キロ程度のため、制限速度をそれに近づけることで乗用車間の速度差をなくすことと、80キロ制限の大型トラックなどと100キロ制限の乗用車などとの速度差を広げることで、大型トラックの追い越しによる重大事故発生を防ぐことが目的とされています。

オランダやデンマークなど欧州の一部の国では同じ理由で近年、乗用車の制限速度引き上げを行なっており、実施前よりも事故が減った国もあります。

《速度制限に関して、日本が見本とすべき国》

制限速度を徹底している国のひとつとしてスイスを挙げます。スイスは日本同様、国土が狭く山がちですが、高速道路網は完備しています。制限速度は大型トラックなどが80キロ、乗用車などが120キロとなっています。
特筆すべきは3車線以上の道路の追い越し車線(もっとも中央寄り)は最低速度100キロとなっていることで、大型トラックなどは追い越し車線に出てはいけないルールになっています。
重大事故や渋滞の発生を防止するためです。乗用車を含めて取り締まりは日本より厳格で、数キロでも交通違反になります。参考すべき例であると考えています。

《自動運転と速度制限》

運転の自動化については、現在一部車種に搭載している運転支援システムはこの速度域にも対応していますが、人間ではなく自動車が運転主体になる、いわゆる自動運転は、現在の制限速度で安全に走れる技術には至っておらず、低い速度域での導入が予想されています。

 

高速道路速度制限引き上げの狙いと可能性

森口将之著書「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」

12月1日(金)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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