表紙を飾るのは長嶋茂雄に力道山… 「まぼろしの創刊号」ブームが到来!【ひでたけのやじうま好奇心】

By -  公開:  更新:

昭和を代表するジャーナリスト、大宅壮一さんは、こんな言葉をものしたそうです。

「雑誌とは、時代を映す鏡である。」
「本とは読むものではなく、引くものだ。」
(資料として参照するものだ… の意。)

雑誌を心から愛した大宅さんならではの至言と申せましょうが…出版不況が叫ばれる中、いま雑誌の世界でちょいとユニークなブームが巻き起こっているんです。
それはズバリ… 「創刊号の復刻版ブーム」!

ブームに先鞭を付けたのは、去年、創刊60周年を期に発売された『週刊新潮別冊 創刊号復刻』。
雑誌が還暦を迎えたってことで、ちょいとしたシャレのつもりだったのでしょう。
1956年(昭和31年)2月6日に創刊された古の『週刊新潮』が、ほぼほぼ「そのまま」の体裁で売り出されたのですが… コレが、ノスタルジーに加え物珍しさも手伝ってのことか、売れに売れたんです!

週刊新潮 創刊号

週刊新潮 「創刊号」 完全復刻版 2016年 2/22 号 (Amazonより)

実際の創刊号の記事はもちろん掲載されているのですが、それだけでは飽きられると踏んでのことか、さまざまな時代の「出来のいい記事」「スクープ」が載ってます。
いわば「週刊新潮 傑作選」といった趣きですね。

たとえば…義展ちゃん事件の犯人を自供に追い込んだ「昭和の名刑事」、平塚八兵衛による「三億円事件敗退記」(1972年)。
あるいは…太平洋の絶海の孤島「アナタハン島」で32人の男性とひとりの女性が共同生活を送っていたという「アナタハン事件」の謎に迫る「アナタハンの女王『比嘉和子さん』の真相」(1969年)。
美空ひばりさん、小林旭さんなどスターの記事も目白押しです。

さらに!
つい先ごろ、7月15日には集英社が「復刻版 週刊少年ジャンプ」を発売しました。
こちらは1968年発売の記念すべき「創刊号」にくわえまして、653万部を記録した1994年発売の「最大発行部数号」の2冊セット!

復刻版 週刊少年ジャンプ

復刻版 週刊少年ジャンプ パック 1 (集英社ムック) (Amazonより)

「創刊号」の復刻版は、当時掲載された作品が全てそのままに復刻されています!
少年マンガに「エッチな要素」を初めて盛り込んだ永井豪さんの『ハレンチ学園』が目玉作品のひとつ。

今でこそ少年雑誌の帝王と呼ばれるジャンプですが、当初はサンデーやマガジンの後塵を拝する弱小雑誌。
表紙をよくみると「毎月2回発行!」とあります。
つまり… ジャンプは最初、“週刊”ジャンプじゃなかったんです!(隔週雑誌だった!)

さすがは“天下のジャンプ”。
果たせるかな『復刻版 少年ジャンプ』は凄まじい売れ行きを示しました。
すでに「第二弾」「第三弾」の復刻版の発売も決定しているということなんです。

さてこの創刊号ブ-ム、復刻版ブームがネットの配信サービスにも波及してきました。
現在、雑誌の配信サービス「dマガジン」でも、様々な雑誌の「創刊号」が配信されているんです。(8月31日まで。)
これをいろいろとナナメ読みするだけで、昭和の大ジャーナリスト大宅壮一氏の「雑誌は時代の映し鏡である」という言葉が実に腑に落ちてくる…。
たとえば…

週刊ベースボール 創刊号

週刊ベースボール_1958年 【創刊号】(dマガジンより)

■1958年(昭和33年)創刊『週刊ベースボール

表紙は、巨人軍の黄金ルーキー長嶋茂雄三塁手と、広岡達郎遊撃手(!)

巻頭特集は「まき起こる長嶋ブームの横顔」。
「“二千万円で名門巨人へ入った男”。それだけで世間の野球ファンはワァッと沸いた…」という、長嶋ブームの過熱ぶりを伝える一文から特集記事が始まります。
『週刊ベースボール』の創刊は長嶋さん「ありき」だった… というワケなんです。

週刊プロレス 創刊号

週刊プロレス_1957年 【創刊号】(dマガジンより)

■1957年(昭和32年)創刊『プロレス&ボクシング』(現『週刊プロレス』)

表紙はもちろん空手チョップの力道山。
1月号ですから、着物に身を包んで書初めをしています。

巻頭特集は「力道山 新春放談」。
力道山の“大物ぶり”を示す、こんなセリフから始まります。
「いやあ、どうも遅くなりました。友人の結婚式に行っとったもんですから。(中略)きょうはずいぶんえらい人が来とったなぁ。政治家で三木武夫とか池田勇人とか。」

週刊文春 創刊号

週刊文春_1959年 【創刊号】(dマガジンより)

■1959年(昭和34年)創刊『週刊文春

文春の創刊号、表紙は誰だと思いますか?
なんと、ご成婚を間近に控えた“ミッチーブーム”の主役、美智子さま!

巻頭特集は「ご成婚をめぐる天皇家と民衆」という見出し。
美智子さまの出身地、館林での「大ミッチーブーム」に焦点を当てています。

中でも、いちばん時代を感じさせるのが…

週刊朝日 創刊号

週刊朝日_1922年 【創刊号】(dマガジンより)

■1922年(大正11年)創刊『旬刊(じゅんかん)朝日』(現在の『週刊朝日』)

表紙には「旬刊 朝日」のタイトルが…。
「旬刊」とは、なんとも懐かしい響き…。
これは「10日に一度ごとの刊行」を意味します。
昔は「旬刊」の雑誌も多かったんです。

表紙を飾るのは、外国の偉い軍人さん。
キャプションにいわく「ジョッフル元帥の朝日新聞社来訪」。
この方は、第一次大戦のフランス軍の総司令官、ジョゼフ・ジョ(ッ)フル氏なんです。

巻頭特集は「華盛頓會議の成果」(原文ママ。これで「ワシントン会議の成果」と読みます。)
この年開催された「ワシントン会議」で採択された「ワシントン海軍軍縮条約」について、エース記者と思われる書き手が、怒髪天を突く勢いで激しく憤っています。

「比率協定を見ると、主力艦に於て英米は各5、日本は3、佛は1・75となって居る。」
「不平の聲の起つたのは、佛国と日本である。」
「日本の名聲を失墜した事は遺憾である。」

この関東記事は、こんな怒りの一文で締めくくられます。

「之に對しては吾々、到底賛意を表する事は出来ないのは無論である。」

スマホでも気楽に見られるというのがオドロキ!
出版界に巻き起こっている、時ならぬ「創刊号の復刻ブーム」。注目です!

8月2日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

Page top