えちごトキめきリゾート雪月花(冬季運行Aコース・14,800円)~行って・乗って・食べて応援、糸魚川!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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えちごトキめきリゾート「雪月花」

北陸新幹線の開業に伴って、新潟県内の信越本線と北陸本線が第3セクターに転換されて誕生した「えちごトキめき鉄道」。
その目玉として人気を集めているのが、観光列車「えちごトキめきリゾート 雪月花」です。
鮮烈な赤が印象的な気動車の2両編成で、車内では「越後にこだわった」食事が楽しめます。

当サイトでは去年6月、上越妙高発の「午前便」の模様をお届けしました。
今回は、今年2月に糸魚川(いといがわ)発で運行された「冬季運行Aコース」の列車に乗車。
糸魚川発の列車ならではの食事を堪能することが出来ました。

*こちらの記事でご紹介しました。↓↓
二つ星シェフの技+駅弁屋さんのハイブリッドフレンチ!~えちごトキめきリゾート・雪月花「上越妙高駅発・雪コース」(14,800円)【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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アテンダントさんによる受付

糸魚川駅は、北陸新幹線・えちごトキめき鉄道(トキてつ)・JR大糸線が乗り入れる駅。
発車時刻30分ほど前から、トキてつ・大糸線が共用する在来線改札前で、「雪月花」のアテンダントさんによる受付が始まりました。
代表者の名前を告げると、号車・席番が案内されます。
アテンダントさんの隣には、「がんばろう糸魚川!!」の文字が・・・。

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日本海展望台から糸魚川市街を望む

糸魚川駅の北側に広がる糸魚川市の中心部は、去年(2016年)12月、大火に見舞われました。
折からの強風によって飛び火が起こり、駅の北側を中心に150軒近くが焼けてしまいました。
現在、がれきの撤去はだいぶ進み、いよいよこれから復興へという状況に差し掛かっています。
被災した1軒には、糸魚川の老舗料亭「鶴来家(つるぎや)」もありました。
そう、「えちごトキめきリゾート 雪月花」の糸魚川発の列車向けに弁当を作っていた店です。

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「雪月花」発車前の搬入作業

「雪月花」の車掌・樋浦さんによると、12月の「雪月花」は、既に「冬季特別運行」に入っており、「鶴来家」による年内の弁当の調製はすでに終了していました。
大火の日、まだ鎮火の報道も無い中、1本の電話が、鶴来家のご主人からトキてつに入りました。
「新年最初の運行には間に合わせるから!」
年末年始で各機関が閉まる中、新たな調理場を建て、保健所の許可を取り、今年(2017年)1/9の「雪月花」では、キチンと去年までと変わらぬ「鶴来家」の味が提供されたのです。

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食事が配膳された「雪月花」車内

「雪月花」の冬季特別運行では、1号車も「食事付き」のコースで販売されました。
黄色を基調とした1号車の車内にも、「鶴来家」の味が詰まった重箱が並びます。
さァ、その気になる中味は?

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一の重

ベニズワイガニのちらし寿し

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二の重

こくしょ (糸魚川における「のっぺ」の呼び名)
うどとわらびの旨煮
えご練り(日本海で獲れた「えご草」を水だけで固めたもの)と紅白なますの蜜柑釜
ごぼうと人参の牛肉巻き
サツマイモのレモン煮

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三の重

鯛の山椒焼き
鰤の幽庵焼き
いくら茶碗蒸し
帆立貝柱の二色焼き
幻魚 栗麩の田楽和え

bl170327-6(鶴来家の弁当)(w680)

鶴来家の弁当

ふたを開けると、彩り鮮やかなちらし寿しが現れ、一気に料理に引き寄せられます。
ちらしずしの食が進むのは、カニの美味しさに加え、錦糸玉子に地元の高校生が作った魚醤「最後の一滴」がプラスされているからかも。

見た目は煌びやかな車両なのに、落ち着いて食事をいただくことが出来るのは、奇をてらわず、鶴来家200年の伝統で培われた丁寧な「和食」があるからなのでしょう。
全て焼け落ちたゼロの状態から、1つの芸術作品と言ってもいいようなこの食事を再び作り上げたことを思うと、嬉しくて、有難くて、米1粒たりとも残すのが勿体ない!

bl170327-10(いわしのつみれ汁)

いわしのつみれ汁

勿論、いわしのつみれ汁は後出し、温かい状態で提供されます。
観光列車の食事は、著名な方の名前が先行したりすることも多いのですが、この料理は、考案・調理まで全て「鶴来家」伝統の味がたっぷり詰まっていることも、汁の温もりと共に心に沁みます。
「鶴来家」の食事は、3月以降の「雪月花」通常運行でも、糸魚川発の午後便「月コース(和食)」で提供されています。

bl170327-11(鶴来家の弁当と日本海)

車窓に広がる日本海を眺めて食事

今回、糸魚川発の「雪月花」に乗って気が付いたのは、発車に合わせ、料理が提供されるので、日本海を眺めながらの食事が楽しめること。
やはり、海が見える鉄道って、本当に気分がイイんですよね。
しかも、ベニズワイガニや鰤といった日本海らしい食材を使っているのも素晴らしい!
これまでは鉛色の冬の日本海でしたが、これからは青が美しい夏の日本海になっていきます。

bl170327-12(頸城トンネルと鶴来家の弁当)

頸城トンネルでは夜行列車気分で食事

加えて、糸魚川発の面白いところは、トンネルの区間が長いこと。
特にトンネル内に「筒石駅」があることで有名な「頸城トンネル」は、延長10キロ以上!
このお陰で、夜行列車のプチ食堂車気分も味わえるのです。
私もかつて大阪から北海道に向けて乗った「トワイライトエクスプレス」の記憶が甦りました。
最近、食堂車気分が枯渇気味の貴方、糸魚川発の「雪月花」がお薦めです。

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えちごトキめきリゾート「雪月花」

3/31まで「えちごトキめき鉄道」では「がんばろう糸魚川!復興応援フリーきっぷ」を発売中。
1枚1,000円で、トキてつ全線フリー乗車可能となり、一部が義援金になります。
「雪月花」に乗るチャンスは無いけど、糸魚川を応援したいという方には、「鶴来家」をはじめとした被災した店が「クラウドファンディング」をやっているので、協力するのも一つの方法です。
行って応援、乗って応援、食べて応援、糸魚川!!

*クラウドファンディングはこちら↓↓
糸魚川大火からの復興。がんばってます糸魚川。「200年の歴史を受け継いで」supported by 糸魚川信用組合

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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