仏に自分をゆだねるということ【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】第176回

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ただ小説を書きたい、それが唯一の望みだったわたしがあるとき、あるところまで来ると、耐え難いむなしさに襲われたのです。
死ぬほど苦しみ、迷い需(もと)め、わたしは祈ることを自然に教わりました。
自分の力に対して自信を一度捨てきり、仏に自分をゆだねました。自分をおまかせしてしまったのです。
そのときから、すうっと心が軽くなりました。あれもこれもみんな一人で片づけようと力みかえっていた肩の力を抜いたら、嘘のように心が楽になったのです。
帰依するとは、まかせきることだったのです。

瀬戸内寂聴

撮影:斉藤ユーリ

出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫

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